3.転移
異世界転移?というものをしたのだろうか
夏穂が昔ハマっていた小説やら漫画で見た事ある気がする。
でも、こういうのって普通呼ばれたりこっちから行ったりするもんじゃないのか?
「うーむ……我々は召喚の儀をしていないんだが……
失礼だが、君たちはどこから来たのかね?」
おそらくこの中では一番偉い王らしき男が話しかけてきた。
「……日本からだけど。ここはどこだよ。」
私が地球と答えた瞬間、周りのざわめきが一層強くなった。その顔色は一同真っ青で、私達から少し距離を取るためか後退りをしている。
「日本!?!地球から来たのか!?どうやって!?魔力が無いはずだろう!!魔法陣だって知らないはずだ!!」
「うっせーな!!私達だって何が何だか分かんねーよ!ただ寝て起きたらここに居たんだから!!」
一気に訳分からん質問をされムカついて大声で言い返してしまった。
魔法陣?魔力?なんだそれ。アニメや漫画の中の話だろ。
「ち、やちゃん、」
胸元の声の主を見ると、抱きしめていた夏穂が先程より強く震え、泣きはしないものの今にも倒れそうなくらい顔が真っ青になっていた。
「大丈夫か?怖いなら説明とかいいからそのままでいいぞ」
話しかけると、とても怖いのか、はたまたこの現状を信じたくないのか顔を私の胸に埋め自身の顔を周りに見えないようにした。
こんな状態で話を続けるのか、という異議を申し立てるのも兼ねて威嚇するように男を睨む。
「ああ……何も知らないのにこんな異世界に来て混乱しているのに……大きい声を出してすまない。
とりあえず、君達は意図的にここに来たんじゃないんだね?」
「そうだけど……」
夏穂の状態を見て冷静になったのか、男は前のめりの姿勢を直し座り直す。眉間に寄ったシワを伸ばすように軽く手で揉むと、深くため息をついた。
「分かった…いや何も分かっていないが。
少し場所を移して詳しく話を聞こうか。
…おっと、申し遅れたね。私は今君達が召喚された国、クルーラビリの国王をしている、ジェード・クラークという。君達は?」
「私は古川千夜で……こっちの黄緑のが夏川夏穂」
私の胸元で震えている夏穂を指さす。
「ふるかわちや、に…なつかわなほ、だな。分かった。
おい、ここじゃ何だ。客間へ案内してくれ。」
「かしこまりました。」
周りの騎士達は警戒をしながらも私達を優しく立たせ「その子は大丈夫か?」と夏穂を心配した。
だが、国王の右隣に居たメイドが何かに気がついたのか急いで国王に耳打ちをする。眉間を揉みながら少し悩んでいたが、徐々に国王の顔が神妙な面持ちになり、「……なるほど。」と呟くと、すくっと立ち上がった。
「千夜、並びに夏穂。すまないが2人それぞれ別室へと通す事になった。
夏穂には申し訳ないが……こちらとしては少し厄介な事になりそうでな。乱暴を働いたり、拷問をするということは誓ってしない。受け入れてくれ。」
「連れて行ってくれ。各々の部屋はエイティが指示する。」というと、ふわっと体が浮き夏穂と引き離されてしまう
「千夜ちゃん!!」
「夏穂っ……!」
急いで手を伸ばすも、近くに居た騎士がなにかしたようで、夏穂はシャボン玉のようなものに包まれてしまいそのまま連れていかれてしまった。
「話が違うだろ……っ!」
「すまない、ただ丁重に扱う事だけは保証する。」
そちらが抵抗しなければな。と付け加え騎士は私の腕を掴み夏穂とは別方向の道へと案内された。
難しいですね。