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速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜  作者: LLX
7、殺られる前に殺るしかないだろ!
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第55話 ガキだけど隊長してました!え、なんでって?知らねえよ!

ああ、本当にイヤになる。本当に、ガッカリだ。

今の俺を一番ガッカリさせるのは、俺を理解しない、しようとしない


「エンプティ、いや、カラン・グレイル。

お前には失望した。俺はもう、お前をコードネームで呼ぶことは無い。」


馬上から吐き捨てる俺に、エンプの顔が歪む。


「……ぃちょう、……ぉれは……ごふっ」


小さくかすれた声で、身じろぎして必死で手を差しのべる。

こいつはもう駄目だ、命の光がどんどん小さくなる。


エンプよ、


エンプよ、お前は俺のなにを見ていたんだ。

俺はお前をちゃんと見ていたんだぞ。

お前は俺を1つの戦力ではなく、俺として見てくれていたじゃないか。

なのに、何で道を間違えた!


馬鹿野郎。 馬鹿野郎。 ボスの口車に乗りやがって。


俺は、ベンを降りて奴の傍らに立った。

こいつが愛した雪雷を抜いて、眼前に突きつける。

見えているのか見えていないのか、きっと見えていないだろう。


「こんな……くだらないことで、俺の大事な部下が1人死ぬなんて。

俺への最大の屈辱だ。」


吐き捨てると、エンプが大きく目を見開いた。



まだ、 まだ、部下だと、言ってくれるのか。


“ エンプティ! ”


俺をそう呼んだあんたに、俺は きっと


犬みたいに、 好きで、 好きで、 付いていった。


笑えばいいさ。

大人が、こんなガキに、焦がれてた。 なんて。


ああ、光が見える。

澄んだような輝きが……


魅入られたんだ、

あの森で切られたときから。


澄んだように輝き、艶めかしく、俺の血をまとうその、刀に。

それを、操る、ああ…… 隊長。 あんたの姿に。

ずっと、見ていたかったんだ。  ずっと


あんたの、 横に いたかった。

た  隊長、  あ  ……


かすかに笑って、ガクリと手が落ちた。

穏やかな顔に、少しホッとする。

ジンが横でハッと息を吐いた。


「あーあ、死んじまった。馬鹿な野郎だぜ。

笑ってやがるじゃん、なんで手向けなんかするんだよ。」


「さあな」


雪雷を戻すと、大きくため息付く。

確かに俺は、殺しに来たこいつになんであんな事言ったのかはわからない。

それでも、こいつはずっと俺の右に立っていたんだ。

嫌な顔1つせず、 いや、元来鉄仮面だけど、新聞読んでくれた。

お前の声は、落ち着いてて心地よかったぜ。エンプよ。


「きっとさ、雪が言えって仕向けたんだろうよ。」


ジンがヒョイと肩を上げ、ヘッと笑う。


「じゃあ仕方ねえな。」


「だな」


小さくエンジン音が響き、それがどんどん近くなる。

軍のトラックが走ってきて、目出し帽で顔を隠した一軍が降りてきた。

負傷者と遺体と武器類を手早く回収しはじめる。

やがて軍用車が間を縫ってきて2人の前に停まり、デッドとその部下が降りて来て敬礼した。


「お手数おかけしました、元隊長。イエロー、ジンを連行しろ。」


「イエス、隊長。」


「は?」


イエローがエンプの遺体にシートをかけ、ポカンと口を開けるジンの腕を後ろに回し手錠をかけた。


「は??!!なんでお前が隊長??俺は?!」


「キヒッ!バーカ、お前は今、容疑者だ。

名目上は士官のクセして、同僚2人殺して無事に済むと思うな、バーカ。」


「えーーーー、マジかよ。」


「クソ汚え物ぶら下げやがって、潰すぞ。おい!」


言われて1人が防水シートをジンの腰に巻く。

そして、車に引いていった。


「サトミー!またな!また遊ぼうぜ!」


「普通に来い、普通に!人を殺すな、バーカ。」


「けっ!面白くねーの!」


「普通に来たら、またパフェおごってやるよ。」


パッと、明るい顔で、車に乗り込んだ。

トラックは、移動して1人残らず回収していく。

やがて、すべて回収したのかこちらへ走って来る。

サトミは視線を落とし、エンプを見ながらデッドに話しかけた。


「今回は金と武器がそろいすぎている。恐らくボスが絡んでるだろう。

ボスはこいつのストレスを利用しただけだ。

ボスはその場にいなくても、敏感に誰が不満を持っているかを感じとる天才だ。

部下が利用されないように注意しなくてはならない。

こんなくだらない事で、いちいち減っていたらやってらんねえだろ。

まあ今回は強盗で処理されて大事にはならないだろう。負傷者は治療を頼む。」


「イエス、恐らく回収した奴らは治療後は逮捕されると思います。

今回は申しわけありませんでした。まさかこんな行動を後押ししやがるとは。

自分たちでエンプの行動は止めるべきだったと思います。

で、あのー」


スッと、デッドが衛星電話を差し出した。


「何だよ。」


「持ってて欲しいです。熱望。いつでも相談出来るし〜」


デヘッとデッドが満面に笑顔を浮かべる。

サトミが顔をヒクヒクさせて、差し出す電話にガッとナイフを突き立てた。


「あーーー!!!」


「残念だったな、壊れてるようだぜ?」


苦々しい顔で、デッドがナイフの刺さった電話をいそいそと直し込む。

恐らく自分のコレクションにしやがるんだ。


「壊さないで下さいよ、また持ってきますからね!今度は受け取って下さいよ?」


「また壊れるだけだろ、俺は辞めたって事に慣れろ!」


「サトミ〜、俺のジンセー相談して下さいよ〜」


「ウソつけ、ボスの指示だろ。あーーー、もう!俺は退役したんだ!!

俺は郵便局のメールマンなの!」


「キシシシシ、似合わねー」


ブロオオオオオ、キキーッ!


喋ってるうち、トラックが来てみんなが降りてきた。


「元隊長に、敬礼!」ザッ!


ずらりと並んで敬礼する。

サトミも敬礼して返すと、何か語りたい奴を引っ張り、サッとトラックに乗り込む。

デッドが車に乗りながら手を上げた。


「じゃ!また来ます!そのパフェっての、俺らにも食わせて下さいよ。」


「あれ高いんだぞ?あー、まあ、来たら食わせてやるよ!」


「イエス!では失礼します!」


敬礼して、車に乗り込み走り出す。

気がつくと、背後にガイド達が歩み寄って、は〜とため息付いていた。


「マジ?お前隊長やってたの?」


リッターが呆れたように聞く。

まあ、そうだよな。

俺は少年兵って奴だろうが、下っ端の経験は無い。

あのガラの悪い部隊に放り込まれて、班長になって、隊長になって。

戦時中、聞き分けの無い奴らは自分勝手にさっさと死んじまって、気がつけば規律はいいがリーダーやりたいって目が血走った奴らが消えちまって、俺はダラダラ隊長を続けるハメになった。


まったく最初はひでえ部隊だった。

ほとんどが犯罪者で、凶悪犯なんてザラ。

ガキの俺は舐められて、かなり嫌がらせや襲われたりして、変な寝癖が出来てしまった。

規律はバラバラで自分勝手な殺し屋集団、辛うじてデッドがまとめていたA班はまとまっていて軍人然としていた。


俺は隊長になると能力別に班を分け、ファーストからサードまで3つの班に分けてファーストをコードネームで呼び始め、特別感を出して競わせることにした。

何でそんな事考えたって?

俺はオヤジに、人を育てるなら競わせろって聞いていたんだ。

人間ってのは、便所掃除するより、してもらう方になりたいもんだってな。

何よりコードネームはいい、特別感がメッチャ出るのに金がかからない。


「「たいちょーう!!また来まーーーす!!」」


トラックの幌上げて、デカい声で手を振ってくる。


「馬鹿野郎!全員で来るなよ?俺が破産するだろうが!」


「「「  ワハハハハハ!  」」」

「おごってくれるってよ!」「まったく可愛いガキだぜ!」


ガキの俺は、いい大人の部下達の慕ってくれる気持ちが嬉しくて、思わず手を振った。

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