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速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜  作者: LLX
7、殺られる前に殺るしかないだろ!
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第41話 1000フィートの戦い

アタッカーたちが恐れるそのポイントは、恐らくは元々岩棚が続きとなっていただろう場所だ。

ロンド側から見ると、左に一段高く岩棚が広がり、崩れたような崖があって100フィート(30m)ほどの道幅が広がり、そして岩棚と同じくらいの高さの岩山がある。

岩山の裏には小さな森が扇状に広がって、その先の木を伐採して300フィートほどの広い道が作ってあった。

ここの道幅の広さは、難所だけあって逃げ場を作る為だ。

森を迂回する道は、目の前の最短ルートを通り過ぎるだけにストレスになる。


まったく、彼らにとっては苦々しい遠回りでしか無かった。



岩棚の上のRV車の中で、ジンが助手席をリクライニングさせて両手を腹の上で組む。

退屈そうに足をダッシュボードの上に載せて、大きなあくびをした。


「めんどくせえ事やってねえでよぉ〜」


「うるさい」


エンプティがパソコンを操作して至る所に仕込んだカメラを繋ぐ。


「お前が皆に逃亡者の首を晒したせいで、みんな恐怖で硬くなってしまった。

これで成功率がガクンと落ちる。お前は一体何をしにきた。」


「何言ってやがる、逃げた奴が悪い。俺は悪くねえ。」


「どうしてお前は遺体の首を切って晒すんだ。

アレでみんな自然体で向かうことが出来なくなってしまった。

あれほどサトミが余計な敵を生むから遺体を汚すなと怒り狂ったのに、お前はまったく進歩がない野蛮人だ。」


顔色1つ変えず、キーボードに打ち込みながら静かに怒りを表すエンプに、ジンが邪悪な顔で笑う。


「バーカ、人間って奴は恐怖で支配するのが一番なんだ、お前も知ってるだろ?キヒヒヒ」


「貴様など、どこへなりとも消えろ。邪魔でしか無い。」


「へえ!そんな事言っていいのかよ。サトミを殺せるのは俺くらいだぜ?

手を貸してやろうって言うんだ。ありがたく思え、クソ野郎。」


チラリとエンプがジンを見る。

無言で、無表情の鉄仮面が一瞬鼻で笑った。




「山です、準備できました。」


岩山に登り、据わりのいい所にライフルを準備して通信機に話す。

エンプの抑揚の無い声が返答した。


『指示を待て』


「了解」


岩山のてっぺんに寝そべり、スコープを森の先に見える荒野に調節する。

銃にはバイポットと言う、2点支持の足が付いているので、ブレが無く狙いやすい。

直線距離で約1000から1300フィート(約300-400m)と言うところか。

MK20ってアサルトライフルらしいが、練習でも扱いやすくて、スコープは高性能の光学式だ。

素人に毛が生えた程度でも、このくらいなら狙える。


こんな物使うのは初めてで、見え方が段違いで狙いやすいので驚いた。

ちょうど2頭立ての乗合馬車が通って行く。

照準を合わせると、中の乗客が見える。

まるで、軍のスナイパーになった気分だ。山での狩りとはまったく違う。


森では、仲間が他に3人準備している。

軍人らしい男に成功報酬は一人1万ドルと札束を見せて言われ、みな何も不満は無い。

無かったはずなのに、もう1人男の仲間が増えた。

そいつがヤバかった。

思い出してもゾッとする。


そいつは、次第に逃げ腰になって夜中逃げた奴の首をぶら下げてきたのだ。

それで札束を目当ての、ただ一発当てるつもりで来ていた奴らの空気が変わった。

だらりとぶら下がった死んだ奴の顔が忘れられない。

あんなもの戦時中に見てきたはずなのに、あのヤバい男はひどく嬉しそうでゾッとした。

こんな仕事、さっさと終わらせて1万ドルだ。


『森、準備オッケーです』


『指示を待て』


イヤホンから下で連絡を取っている声が聞こえる。

軍の装備は便利だ。

普通の住民は電話も使えず難儀してるのに、軍ばかり贅沢して反吐が出る。


この国は共和国で大統領はいるが、軍が主導しているだけに軍に優先的に金が流れていく。

軍事費は派手だが、いつまでも人々は貧乏で、インフラは犠牲になる。


『来たぞ、準備しろ』




岩山を左手に見ながら小さな森の方角を目指す。

山を越えると道の左右に緑が増えて、そして木が増えて行く。

ここは荒野の小さなオアシスで一番大きい難所だ。

安全に大きい作戦をやろうというなら、ここしか無い。


リッターが速度を落とし、ゆっくりと森の手前で走る。

やがて右手を挙げて、ガイドにサッと手を振り、一気に森越えのポイントに突入した。




「なに??!!」



スナイパーポジションの男が焦る。

どちらに照準を合わせれば良いのかわからない。

リッターとガイドは、その距離を大きく離してその場に現れた。


『森!手前の白人に投げろ!山、後ろを撃て!』


「わかった!」


タタタンッ!タタタンッ!


2頭の馬が道幅いっぱいに放れて駆け、遠くに軽い銃声が響き始める。


『右と左は白人を狙え、森を援護しろ。先に白人を落とす』


『わかった』

『了解した』


他の指示を聞きながら、男が慌てて照準をガイドに向ける。

スコープに映るガイドは、しかしすでにこちらへ銃を向けている。


「え?!なに?!」


『相手は馬に揺られている、当たらんよ、撃て!』


「そうか!」


タタタンッ  タタタンッ!


複数の銃声が激しく聞こえるが、2人はまだ無傷だ。

早く俺も仕事をしなきゃよぅ!


馬に乗って、高速で走らせながらこちらを狙うガイドに再度狙いを向ける。

相手は動く、追うのは難しい。

狙いを定めて引き金を引くと、もうそこにはいない。

だが、ガイドから見れば、自分は動くが目標は動かない。

二人が互いに狙い合う。

男が何度も引き金を引いた。当たらない。

舌打ちして照準をガイドの前にずらし、引き金を引く次の瞬間、


バシッ!


バシッ!バシッ!


「え」


男の頭に衝撃が走り、その場に突っ伏した。

エンプの見るパソコンのカメラ映像が、一つブラックアウトする。

それは山にセットしたカメラだ。

ガイドは男の横で光を見つけ、とりあえず撃った。


「 ……は ? 」


バンッ!

ドアを開け放し、横向きに座っていたエンプが腹立たしそうに背もたれを殴る。


「早すぎる。コマにもならない。」


「ヒャハハハハハハ!!もう1人やられてやんの!」


「うるさい!」


なんで準備されていたんだ?!

いや、読まれたんだ。この白人は情報屋と通じていると聞いた。


エンプティは苦々しい顔で駆け抜ける白人、リッターに目を移した。

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