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速達配達人 ポストアタッカー 新1 〜ポストアタッカー狩り〜  作者: LLX
4、早出だ!荒野渡りだ!さっさと来やがれ強盗!
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第23話 キャーキャーうるせえっ!

サトミが捕らえた少年を後ろに乗せて、ベンを地雷の現場へ走らせる。

岩場の間の道に出ると、真ん中で軍用車が爆風で横向きになって止まっていた。

軍用車のドアには、見慣れた師団のマークと2の数字が見える。


「あれ?これ第2師団の車じゃね?

お前ら今度は軍に手ぇ出すつもりだったわけ?命知らずだなー。

もしかして運転手殺して、車、手に入れようとしたのか。


なあ、なんで強盗から殺しに目的がすり替わったわけ?

強盗で反撃されて殺された復讐なら、お前ら覚悟が足りねえよ。

復讐するほど惜しい命なら、強盗なんかせず働け。

クソ野郎どもにはわからねえだろうが、強盗は仕事じゃねえ、犯罪だ。

それで飯を食うな。」


ダンクたちは車の様子をうかがっている。

こちらに気がついたエジソンが、手を振っているので手を上げて返した。


「すげえ奴らだよなあ。

地雷があるかもしれないのに、奴らは走るのをやめねえんだ。

お前ら虫の沸いた頭には考えもつかねえんだろうさ。

仲間がミンチにされて帰ってきたのを見ても、その彼女がショックで自殺したのを聞いても、奴らは復讐を考えてないんだ。


甘い腰抜けだと思うだろ?俺も思うさ、でも、だからってあいつら弱いわけじゃねえ。

これがあいつらの、ポストマンのくせにアタッカーなんて名前の付いた奴らのプライドさ。

あの腕章、お前だろ?あそこにくくりつけたの。あの行為は最悪だ。

布きれ一枚、だが、あの布切れはアタッカーとしての誇りだ。」


「ううう、ううっ、うっ、ひっく、うっ…………」


「泣くくらいなら、馬鹿な母ちゃん死んでも止めろ。バーカ。

あんな機関銃持ち出されたら、止めるには殺すしかねえじゃないか。」


エジソンとダンクが、車から少し離れた場所で馬から下りて立ち尽くしている。


「ダ、ダンク……サトミ、生きてるよ。生きてる!」


震えた声で、エジソンが叫ぶ。


「1人確保した、車はどうだ?」


後ろ向きのダンクに、エジソンが弱々しい声で返してきた。


「ごめん……女の人が興奮してて、近づけないんだ……」


「わかった。」


震えているエジソンに、手を上げて馬を下り、車に行く。

サトミの足音に、運転席の女が悲鳴を上げた。


「キャーーーーーーー!!キャアーーーキャアアーーーー!!」


「キャアアアアーーーーキャーーーー!!!」


「あーうるせー!」


見ると女性が2人、運転席は頭押さえて叫び、助手席の女は銃を握ったまま叫んでいる。


「ちわーっ、ポストアタッカー見習いだけど、無事?」


腰からサバイバルナイフを抜き、後ろ手に助手席のガラスが無くなった窓から少し離れて声をかける。


パンパンパンパンッ!


キキキンッ!


撃ってきたので、避けてナイフで弾いた。


「キャアッ!キャアッ!キャアッ!キャアッ!キャアアーーーーー!!」


あー、パニック起こしてやがる。


ニッコリ笑ってナイフをしまい、両手を挙げた。


「お姉ちゃん、お姉ちゃん、しっかりしてよ、大丈夫?」


声のトーンを上げて、可愛く首を傾げてみた。

どうだ?!俺はこれ以上の可愛い系スキルはねえぞ。


「あ、あ、あ、ああああああああーーーー」

「わーーーーーん、えっ、えっ、ひいいいい!!」


お、泣き出した。

ちょっとヒステリー越えたようだ。


「僕たち、郵便局なんだけど、どっか連絡した?」


「うっ、うっ、まだ、わ、忘れてた。えと、えと、無線どうするんだっけ?

わかんないよう〜〜ねえわかる?」


「わかんない、頭回らないよ〜」


「はあ?クソ野郎、軍人が何言ってやがる。」


こいつら、お話にならねえ。

ガッカリ、どうも新兵のようだ。何かのお使いってとこか。


「え??」


「んーん、何でも無いよ。僕が知ってるから連絡したげる。所属は?」


「ひっく、ひっく、第8旅団所属、第2救援分隊〜」


「違うわよケイト、今第3じゃない」「え?そうだっけ?」


「第2か第3かどっちだっ!」あーーームカつくっ! 


イライラして、サトミがつい声を上げた。

女2人、ビクッと飛び上がり、声を合わせる。


「「 第3です! 」」


「よし!てめえら邪魔だ、降りろ!」


「「足が動きませ〜ん!」」


「クソ、平和ってのはこんな奴ら生み出しやがる!」


ドアを開け、助手席の女引きずり下ろして無線で連絡する。

ガラスが吹き飛び、中で結構ベアリングが跳んでいる。

ドアには鉄板一枚あったらしく、外見は穴が空いてるが中は無事だ。


対人地雷っつっても距離が近いと、なかなかこいつも(あなど)れねえ。


「あんたら運がいいな、ドアに鉄板無ければ今ごろ穴だらけだぜ?」


タイヤは強化タイヤなので、多少弾が入っても走行出来る。

軍の返事は、走行可能ならポリスに事実伝えて仕事しろだった。


「冷たいーー!!怖かったのに、冷たすぎるよ相変わらず〜」


「へえ、第8近くに来てるんだ。」


「地雷を使った強盗が出たとかで小隊がですね。

あー、えー、言っちゃ駄目なんだった。」


「撤退するんだろ?」


車中でサトミが運転席の彼女に小さくささやく。


「あれ?何で知ってるの?」


ニッコリ笑ってうなずいた。

車を降りて、馬上の捕まえた少年を車に放り込む。


「こいつの聴取は任せるよ、軍かポリスかしらねえけど。

吐いた情報提供、ロンドの郵便局にもよろしく。」


「はい、伝えます。あの……助かりました。」


「まあ、あんたらもよ。このくらいで腰抜かすなよ、訓練足りねえよ。

教官誰だ?」


「すいません、戦後入隊でこんな目に遭うの初めてで……

教官の名前言ったら殺されます〜」


「ヒヨコか〜

まあいいや、興奮状態じゃ気がついてないケガもあるから、ちゃんと身体見ろよ。」


「は、はい!ありがとうございます!

あの、お名前は?」


「あー、アタッカー見習いで。俺のこと上に詳しく言うな。もう遅いけど。」


「ハイ!失礼しました!」


サッと敬礼で返し、あれ?なんで一般人の年下に命令されてるんだろうと、ふと思い出す。

トラックを追っていったときにチラリと遠目で見た、彼の長い剣が印象に残った。


「よう先輩、とりあえず処理完了。あと任せて先行こうぜ。」


無言で後ろにいるダンクは、うなだれて立ち尽くしている。

通常は机に張り付いているエジソンは、2人の間でおろおろしていた。

ダンクは目を真っ赤にして、拳を震わせている。

ズカズカ歩き出すと、エジソンがビクッとサトミの顔を見た。


ビュンッ!


無言でダンクがサトミに向かって拳を振るった。

ヒョイとサトミは避ける。

右から、右から、避けられて左から、また右。


「避けんな!」


「やだよ、痛いもん」


「このクソ、馬鹿野郎!なんでっ!なんで向かっていくんだ!

サトミ!俺は!言ったはずだ!行くなって!!」


ブンブン拳振り回しながら、息を切らせて涙を浮かべダンクがサトミを追って行く。

やがてサトミがその拳を手で受けた。


「ダンクよ、わかってるだろう?あいつらもう何振り構ってない、一線を越えた奴らだ。

あのままだと、あの2人は死んでた、死んでたんだ。

ダンクよ、お前が言ったじゃないか、もう死ぬのは見たくないってさ。」


「わかっってるよっ!そんなことはよっ!!

でも、俺はお前が死ぬのはもっと見たくないんだ!!

なあ、もっとよう、命大事にしてくれよ、サトミ。

俺たち、もっと違う生き方見つける入り口に立ってんだ!」


「ダンク……」


シュッと拳がいきなり来た。

しかし、それでもサトミは避ける。


「クソッ!なんで当たんないんだよ!腹立つ!!お前はぁっ!!」


「だって、当たると痛いもん。」


「僕……、僕も……なんか、もっと考えるから。」


「ごめんな、二人ともごめん。」


ダンクとエジソンの肩を叩き、空を見上げる。

岩山の上に、黒いシミだらけの赤いポストアタッカーの腕章が3つ、棒に結ばれ風に揺れている。

彼らの怒りと恐怖は、あれを見るたびに燃え上がるのだと思った。


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