第5話 情報量の多い少年
勢いで小休憩に入り、ラムネを全員が飲み終わった後また会議が再開する。
「お前らは分かってない。 今回は統一戦争のときとは違って敵も銃を持ってるし対策もされてる」
「でも」
口をもごもごする旭や宙だが口をもごもごするだけで結局何もしない。
「それに奴らは俺らに滅ぼされるぐらいなら同じ西洋世界の国に滅ぼされる方がましだ。 しかも実質的に俺らと一緒に戦ってくれるのはアフリカ支部と中東支部の2つぐらいだ」
皇国がこの世の半分を占めているとしても政争やらなんやらで事実上動けるのは九つある支部の内せいぜい3支部ぐらいなのだ。つまり西洋世界がうまく潰し合わない限り皇国が西洋世界を征服するのは夢のまた夢、下手をしたら欧州支部が滅びる可能性もある。
深く考えてみると決して西洋世界征服は簡単ではないのだ。
「まあ もう俺の貯蓄も尽きたし」
何で最初に銃という最強の兵器を使ってしまったのか、と玄は後悔する。
もうすでに自分が昔覚えてきた兵器や技術はほぼ全て実用化されて敵の手にも渡ってしまったのだ。
後はまだ実用化前の戦車や小型戦闘機それに潜水艦、と指を折って数えていると独り言が漏れていたのか、今までずっと無言で微笑んでいた天が反応する。
「でも流石に玄のそういう兵器を使えば何カ国はいけるんじゃない。なにせ玄は皇国の科学技術総監なんだから」
他人の技術を丸パクリして自分の物にし、それで皇国の科学技術総監という閣僚級の高い地位まで与えられるというような、昔なら考えられないような悪業に罪悪感を覚える玄。
それでも自分の事を考えるとしょうがないと自分の行いを正当化する。
そんな事情を知らない三人はまた欧州攻略の方法でも考えているのだろうと勝手に勘違いして誰も喋り始めない。
そしてその後、20分ぐらいして自然な流れで会議は解散する。
――不老不死で何千年も生きて一回死んだ男。という情報量の多い少年、天凪 玄。
――そんな彼はもうすぐ目標の地、ヨーロッパに着く。