第43話 どこかでの一時
天凪天は「守護天者」を発動して無敵状態になった後、帥らに救助され安全が保証され「守護天者」を解除した。と言うより自動的に解除された。
そうして意識を取り戻した天に眼前は密閉空間があった。別に閉じ込められていると言う訳ではなく、側に置いてある毛布からも丁重に扱われている事が分かる。やはり帥が救助してくれたのだろう。
そして取り付けてある窓を見ると雄大な景色が見える。 一人で馬車に乗ったのが初めてなので、意外に馬車から見る景色はきれいなんだ、と思っているといきなり馬車が止まる。目的地に着いたのだろう。すると気配が近づいてきて馬車の扉をノックする。
どうぞ、と天は言う。別に気配に敵意はないし大丈夫だろう。
「天様! ご無事だったんですね!」
来たのは帥、ひとりだ。人形のような整った顔とその性格は、いまクレタ島にいるはずの宙と似ている。
「うん それと助けてくれてありがとう」
「いえいえそれは家臣として当たり前ですから 心配してたんですよ 玄様によると守護天者が長すぎて瀕死になったことがあると言われていたので」
「ああ それは僕が子供だった時だよ たぶん今なら一年ぐらいは発動できるよ」
「そうですか とにかく良かったです!」
帥は目をパチパチさせ天が無事なことの喜びを伝える。それにはやっと重責から開放される喜びもあるのだろう。
「それでなんで止まったの? まさか僕の安否確認って言うわけじゃないでしょ?」
「お察しの通りです。我々は玄様の兵と合流しました」
帥に引き連れられて天が連れて行かれたのは臨時の幕営だ。と言っても屋根がないだけで巨大ではある。
「よっ 無事でよかった 死んだかと思ってヒヤヒヤしてたぞ」
そう話しかけてくるのは玄だ。横には空澄も待機して旭と宙を除いたヨーロッパ支部の大幹部が勢揃いしている。
「ありがとう それで状況は?」
「脱出の経緯は帥から聞いただろ?」
「ある程度は来る途中で」
「ならいい で端的に言って状況は終わってる」
これから真面目な話をしようとする時に、軽快な調子で空澄が話に割り込んでくる。
「なんでですか? 別に危機ってほどでは」
同じ言葉でも話し手と口調でこれほど捉え方が変わるのかと、クレタ島にいる旭を思いながら空澄を睨む。
「お前は黙っとけ」
「っ そんなぃ やめてく...... 」
空澄の言い方だとやばい意味になってしまうが、言い方を変えろということを自ら実践して言っているのだろう。殺意で場が静まる。なお空澄はれっきとした男で裏声が女性みたいなのは性別さえ分からなくさせる。
場を白けさせる天才、空澄がゴホン、と他人事のようにそうしたところで話が再度はじまる。なお空澄は退場させられた。
「話を戻すと俺たちの現有戦力はせいぜい10万だ 途中で占領した都市に兵を細々と置いたせいで、かき集められたのはたったの10万 もしこれでオーストリアが途中の都市の奪還をしないで一直線にここに決戦しにきたら俺達は負ける」
「それはもし都市を攻めたとしてもある程度の備えはあって、逆に攻められることで兵と時間を割いてくれるから?」
「ああ それで兵数が減ってくれたらこっちとしても楽だからな まあ向こうも馬鹿じゃない 絶対にここに直接来る」
実際あの場を指揮していたのは普通どころか相当有能な策士だ。さらに部下の話しによると大量の火砲を使って城壁を物理的に破壊したらしい。 有能で策士で旧来の価値観に囚われない人間となると厄介だ。
「じゃあどうするの?」
「殺すしかねぇ」
そう楽しそうに玄が笑った時、天は驚かなかった。
面白い話
学校で劇をやったけど、他のクラスがかぐや姫をやって無事にかぐや姫が月の使者に迎えられたあと、ナレーターが真顔で「こうしてかぐやは月に帰り、おじいさんとおばあさんはかぐやの残した百薬の薬を使い動物や植物たちを助け、おじいさんはSDGさん、おばあさんはSDばあさんと呼ばれ尊敬されました(笑)、に吹いた。




