第27話 小康状態
場を変えた天と玄がいる部屋は激戦にさらされた都市庁舎の中で唯一崩壊の憂き目に合っていない中央執務室である。一人用の部屋とは思えないほど広く、戦場には場違いすぎる豪華荘厳な宝石はアンカラのかつての繁栄を証明する。
僅か一日の激闘でその繁栄は崩れ去り面影を消したが、この街はいずれ国家の存亡を横目に発展するのだろう。
そこに虚しさを感じざる得ないのは玄だけではない。
深く脳の奥深くまで思考していた玄は天の声で覚醒する。
相変わらず広い部屋に輝く貴金属が見える。
変わった事と言えば人が一人入ってきた事だ。
「大丈夫っすか?」
17,8歳程度だとは思うがその年にしては威厳のなさを感じさせるのはこの男の悪いところだろう。
左側の髪を右より伸ばし、両端にある赤色の髪は中央の顔と混合し美しさを作り上げる。
せっかくの容姿があまり活かされ無さそうなのは宝の持ち腐れだが考えるのも無駄だろう。
「そういやお前と話すのは久しぶりだな。 マジでお前が来てることも知らなかったぞ」
「本当っすか。 俺も戦争があるからって会わせても貰えなくて嫌われたと思いましたよ」
この男はれっきとした幹部であり玄、旭、宙などと肩を並べ一級戦皇士だが、最高司令官の天を含める他の4人と違うのは自分の軍を持っていないことである。
本当は第5軍総司令官として軍を持つはずだったが彼自身が責任を理由に拒否し皇国欧州支部5軍計画は実現しなかったのだ。
結局用事も相まって欧州行きが遅れギリギリまで天や玄などの仲間たちと会えなかったのだ。
それも今叶ったわけだが、
「で、俺は空澄を天が第一軍の副司令官に任命したって知らないぞ」
「僕も副司令官って言われて驚いたけど」
「いやぁ それには理由があるんですよ」
なぜか任命した覚えもないのに勝手に第一軍副司令官に様変わりした空澄に苦い問いかけをする玄に空澄は苦笑いしながら話し出す。
「どんなだよ?」
「もともと俺はアンカラにさっき着いたんっすけどなんか皆戦っててそれを見てたら誰かにバレちゃってこうなったんですよ」
「あれでも第一軍副司令官は関係なく無い?」
温厚な天が温厚さを保ったまま純粋すぎる疑問を投げかける。
思わぬ伏兵にたじろぐ空澄の額からは大量の汗が流れている。
「それはまあぁ 色々あったんすっよ」
深呼吸して言葉を濁す空澄を白い目で見る玄と状況をよく分かっていない天、こんなことは慣れたことなので結局話は終わる。空澄は見に見える形で静かに歓喜しガクついていた筈の膝は生気を取り戻している。
「まあ、お前のことはどうでも良いとして俺たちが考えるべきなのはどう脱出するかだ」
「えっ それちょっと酷すぎじゃないっすか?」
玄の言い方に反抗する空澄、それを慣れた温かい目で見る天の気持ちを考えたことなど無いのだろう。
ただ状況はこんな事を出来るほど甘くは無い。
誰の目に見てもこの小康状態が打破されることが明らかだった。




