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死ねない神に終わりはない  作者: 天和 希
第一章 古旧黄金帝国 オーストリア
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第23話 傲慢なる者へ

 天凪あまなぎ てんは洞察力が優れた方である。


 そしてその洞察力はどこでも発揮される。

 例えそれが自分の危ないところだっったとしてもだ。

 冷静に洞察できるという特技はいつも天を救ってきた。


 今回も相手の油断があるかもしれないが天が勝てた主な理由は自分の洞察力を冷静に使えたことだろう。

 そして今勝利は目の前に来ている。


 天に自分の魔法の種がバレたことによってテルテストは一級戦皇士と思えないほど感情を吐露し苛立っている。       

 やるには絶好の機会だ。

 

 人間をやるのに最も簡単なのは頸動脈を切る事だが戦闘において確実なのは首を斬る事だ。

 

 勢いに任せ柔らかい首を鮮やかに斬る。

 

 「速殺そくさつ


 最も速く確実に殺すことを目的とした技である「速殺」によって。

 

 実行され、首から上の部位は数瞬の間を持って落ちる。

 芸術品を思わせる断面は鮮やかで美しい。

 恐らく本人も自分の死を気づいてすらいない。


 斬った本人は鞘に刀身を収め悲しい顔をしている。

 その美しい顔にも貴族にしては簡素な服にも黒茶色の髪にも何一つ傷すら血すら付いていない。

 テルテストはそれを怨嗟をもって激しく憎んだ。


 ――一級戦皇士 テルテスト ラリオスの人生は儚く散った。




 テルテストは数年前に起こった兵器の革命によってその地位が変化し人生が大きく変わった一人である。

 元々下級戦皇士に甘んじていた彼は他の貴族から無下にされる存在だったが銃火器が発明されたのを見て長距離対策をした結果成り上がったのである。

 

 では彼が卑屈な性格になったのは何故であろう。

 銃火器への対処法をひねくれた方法で編み出した時に性格までが変わってしまったのだろうか。

 

 ――否、逆だ。


 テルテストは意識を失った混沌の中で自分を見ている。


 かつて馬鹿にされた自分。

 この時は良かった。

 

 弱いなりに努力をして戦皇士の中でも中の下ぐらいの実力にはした。能力を上げたくて先見の明で銃火器の台頭を予感し徹底的に訓練をした。

 その間にも自分を馬鹿にしていた者は近接戦にロマンを求め死んでいき、仲間は家族の叱責を苦に無謀な戦いを挑み死んでいった。

 その内に自分は階級を上げていき一族で初めての一級戦皇士になった時、自分の名誉や利権に縋る何人もの人間が愚かに見えた。

 

 ただ会った事すらない遠すぎる親戚ら総勢何百人もの人間の命を握っている事を考えると快感に支配された。


 むごすぎたのだ。

 ただ今や全て無駄だ。

 死んだのだから。

 

 そういえば自分を慕ってくれた人間がいた。

 なぜ自分を、こんな自分を気にかけてくれたのだろう。


 ――語る価値すらない一人の人間を。







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