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死ねない神に終わりはない  作者: 天和 希
第一章 古旧黄金帝国 オーストリア
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第20話 時の運

 天凪あまなぎ てんという少年は人から見たら幸せな少年だった。

 高貴な血筋で生を受け赤子の頃を不遇な状況を送るも自分で才能を開花させ今や皇国の一番槍という称号をほしいままにしている。


 優秀な双子の弟は自分の元で働き、容姿に恵まれた二人のいずれできるであろう結婚相手については噂が尽きない。

 幸せを傲慢なほど持つ少年は果たして本当に幸せなのか。


 哲学者にすら分からないであろう答えを天が持っている訳ではない。

 ただ膨大な量の幸せについてこの勘の良い少年は違和感を覚えていた。

 無駄な思考に時間をかけるのは彼の癖かもしれない。




 げんとサディストことライによる戦闘が行われている反対側にある廊下では戦闘の白黒が付きかかっていた。


 天凪 天は目の前の生成魔術を操り天を追い込んだ男――テルテストを殺す算段を立てた。

 ただそれには生成魔術によって生み出される無数のテルテストから本体を炙り出さなければならない。

 

 種は簡単だ。

 ついさっき彼は生成魔術で7体自分の複製を出した。 

 そして本体と合わせて8体の彼は同じ挙動で銃を持ち発射した。位置関係から生まれる距離で弾は同時では無く僅かながら離れた時間で着弾する。最初の7発は何事もなかったように天の体を通り抜け、最後の一発だけ天の第6感と言うべきものが反応し斬り伏せた。実際に天が斬った弾は本物の弾だった。


 ここから分かるのは最初の7発は複製体が発射した実態のない弾で最後の一発だけは本物の弾ということだ。

 つまり最後に来る弾は天から一番遠い所にいるテルテストが発射した弾。要はそれを撃ったテルテストが本物のテルテストということになる。


 種が分かれば簡単な話によってテルテストは今までの微笑を硬直に変えさせられた。

 そもそも最初の7発は体力を消費したことで刀を構えられてすらなく天の体を通り過ぎたのに、最後の一発だけ天の体が反応したまたま斬られたのはなんの因果だろう。


 果たしてもし本物のテルテストが別の複製体の位置にいたら天を殺せたのだろうか。


 「クッソ」


 テルテストが醜く叫ぶ音が廊下全体に木霊する。

 正攻法とはかけ離れた戦い方を極めて一級戦皇士になった男にも一定の矜持があるのだろう。


 文字通り勝負は運で決まった。

 それも8分の1の運である。

 確かに天の洞察力や推理力もあるだろうが殆ど運である。

 

 天はそんな自分自身の運を思いながら神の寵愛とでも言う薄気味悪い微笑みを感じ悪寒を覚えた。









第17話先をに読んだほうが分かりやすいかもしれません。

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