第12話 計画失敗
一つの戦闘航空機からそれぞれ7、8人がロープをつたって地面めがけて降り立つ。
数が12なのを考えると100人程度だろう。
市街地に消えていった兵を見つめた玄は自分の勘が嫌な形で当たってしまった事を悟る。
そして玄は最悪の考えに至る。
恐らく旧都市庁舎への襲撃は命令を発する中央と今まさに戦っている現地との遮断を狙ったものだろう。
つまり旧都市庁舎から応援を要請することは不可能に近く、ここにいる約数百人の衛兵で戦わなければならないのだ。
実際数の上では勝っているがここに強襲させるのは十中八九精鋭だ。
そしてすでに全員を降ろしたはずの航空機が近くを旋回している事を考えると、旧都市庁舎をある程度撹乱したらすぐに上空の戦闘航空機が人員を回収して帰る手はずなのだろう。
惚れ惚れするような完璧な計画に風穴をぶち開けたい玄は衛兵の持っている小銃を掴み取る。
もちろん目の前の衛兵は困惑するが有無を言わせぬ表情の玄に恐れをなして一言も発さない。
その後衛兵から取った小銃を持った玄は窓ガラスを銃の先に付いている短剣で割る。
ガラスの破片が飛び散り玄の端正な顔には傷がつく。
そんなことも気にせず玄は小銃の照準を旋回している一つの戦闘航空機に合わせる。
直後、銃身が七色に光り前面に透明な盾と思わしきものが展開される。
光に気付いた戦闘航空機の戦闘員は機関銃を乱射し窓ガラスが割れるも玄の前の透明な壁に阻まれ意味を為さない。
そして玄はトリガーを引く。
放たれた弾は通常の何倍にも強化されており鋼鉄を貫くことも可能だ。
弾は航空機のエンジンがあるであろう場所めがけて向かっていき、玄の狙った場所に一寸の狂いもなく命中する。
結局破壊された戦闘航空機はけたたましい音と火の手を上げ建物に突っ込む。
そしてやっとの思いで死に際の隊員が、備え付けの信煙弾と狼煙を上げるのを確認する。
救助要請かなにかだろう。
これで降り立った敵は足を引っ張られるだろう。
一瞬の隙で小さくない被害を被った敵に「ご愁傷様」、といつもならば言うだろうが今はそこまで油断できない。
ただ体力を少なからず消費した玄は小さくない戦果に安堵する。
途端に、そんな玄を無視するかのように場違いな破壊音が響く。
音は天井からだ。
音の主は今、目の前にいる。
ちなみに物語の核心部分が関係してくるので、クレタ島に行った旭と天夢たちについては書きません。




