表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第3章 『呪い』は全力で回避します。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/320

5話 いきなりお坊ちゃん扱いされても……

「話は終わりだ」


 源蔵に言われて、圭介が「失礼します」と部屋を出ると、そこには雪乃が待っていた。


「お部屋にご案内します」


 圭介は再び雪乃に連れられて、同じ2階の別の部屋に通された。


 そこは、圭介の住むアパートがすっぽり収まるほどの広い部屋だった。

 天蓋(てんがい)付きのベッドに応接セット。大きなテレビはあるし、暖炉の上には高そうなアンティークの置時計や飾り物が並んでいる。


(なんか、高級ホテルの部屋って感じなんだけど……)


 圭介が唖然(あぜん)としてる中、雪乃がテキパキと部屋の説明を始めた。


「こちらが圭介様のお部屋になります。シャワーとトイレはそちらで。お風呂の方がよろしければ、ご案内いたします。

 御用の際はそちらの内線電話でお呼びください。番号のリストはこちらです。お食事はどうされます?」


 言われて初めて、圭介は夕食を食べていないことに気づいた。

 今頃になって空腹を感じる。


「ええと、何か食べるものありますか?」

「何がよろしいですか?」


「何がと言われても……腹が減ってるから、何でもいいんですけど」

「好き嫌いやアレルギーはございますか?」

「特にないですけど……」

「では、用意してお持ちいたします」


 雪乃は頭を下げて部屋を出ていく。


 圭介は広い部屋にポツンと残され、突然、何をどうしていいのかわからなくなってしまった。


(な、なんなんだ、この『いきなりお坊ちゃん体験』は!? おれ、『圭介様』とか呼ばれてんだぞ!)


 あまりに慣れない環境に思考停止。しばらく呆然とそこに立ち尽くしていた。


 ややあって、ドアがノックされ、圭介はビクンと飛び上がって、慌ててドアを開きに行った。

 食事がもう来たのかと思ったが、そこに立っていたのはスーツを着た初老の男だった。


「お返事をいただければ、ドアは開けていただかなくても結構です。

 初めまして。執事の藤原(ふじわら)と申します」


 そう言った彼の表情があまりに変わらないので、圭介は一瞬、ロボットかと思ってしまった。


(ひええ……マジもんの『執事』とか出てきちまったぞ)


「……こ、こちらこそ。圭介です」と、一拍遅れてあいさつを返す。


「大旦那様より申し付かってきたことをお伝えに来ました」

「ええと、何でしょう?」


 圭介が突っ立ったままでいると、藤原にソファに座るように手で合図された。


(坊ちゃんは、立ち話をしちゃいかんのか?)


 無表情のわりには、藤原からイラっとした空気を感じる。

 圭介が慌てて腰を下ろすと、彼は話を始めた。


「では、まず外界との連絡を断つとのことなので、携帯電話などをお持ちでしたら、お預かりします」


「僕のスマホ、契約が切れていてかけられないんですけど、それでも?」

「念のため、お預かりします」


 藤原が手を差し出してくるので、圭介はポケットからスマホを出して、その手に乗せた。


「あの……後で返してもらえるんですか?」

「もちろんです」


「そこの電話で、どこかにかけたりは?」と、暖炉の上にある電話を指さして聞いてみた。


「内線専用ですので、外線はかけられません」

「どうしてもかけなくちゃいけない時は?」

「内容にもよりますが、私にお声かけください。お電話をお持ちします」

「了解です……」


 さらに藤原の説明は続いた。


 当座、外出だけでなく、この部屋から出ることも禁止。

 食事は特に申し出がなければ、7時、12時半と19時に運ばれてくる。


 必要なものがあれば、家から取ってきてくれると言われたが、明日には服や靴が届くとのことで、特に持ってきてもらうものもない。


 とりあえず、今夜のパジャマは客用のものを貸してもらえた。


「どんな些細(ささい)なことでも、遠慮なくお申し付けください」


 藤原はそう締めくくったが、圭介としては遠慮したくなる気分だった。


(これって、いわゆる軟禁(なんきん)ってやつじゃないのか……?)


 母親が無事に帰るまでとはいえ、接触するのはこの執事やメイドだけなのだろう。

 食事は運ばれてくるし、シャワーもトイレもあるから、部屋の外に出る必要はない。

 部屋も広いので長くいたところで圧迫感があるわけでもない。


 しかし、藤原が出ていった後、外から鍵をかけられ、中から開くことができないと気づいた時、イヤな気分だった。


(母ちゃんも今頃、留置場に閉じ込められてんのかな……。それとも、取り調べの真っ最中か?)

次話もこの場面が続きます。

長い一日の終わり、やはり思い出すのは桜子のことですかね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ