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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第2章-2 『友達』返上、まずは告白してみます。~赤い宝石編~

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6話 決意新たに、夏休み突入

 期末試験が終わって、残すところ1学期終業式のみ。

 学校中がすでに夏休みモードに入っていた。


 圭介のクラスでも、休み時間は夏休みの予定で盛り上がっている。

 たいていのクラスメートはアメリカだのフランスだの、海外のリゾート地、もしくは別荘で過ごすらしい。


 夏休み、ほとんど毎日バイトの予定を入れている圭介からすると、『夏休み』の価値そのものが違う。


 片や消費、片や生産。


(まあ、学費を稼ぐって決めた時点で、あきらめてたけどさあ……)


「で、おまえは夏休みどうするんだ?」


 終業式が終わって教室に戻りながら、圭介は桜子に聞いた。


「夏休みはイベントがいっぱいあるからねー。海に山に花火大会。楽しみだなー」


 目をキラキラさせて話す桜子も、やはり夏休みを待ち遠しく思う高校生の一人だった。


「……なんか、普通の内容だな。海外旅行とかしないのか?」


「うちにそんな余裕、あると思う?」と、桜子に真顔で返されて、圭介は笑った。


「確かに。あのお母さんなら、違うことに旅費を使いそうだよな」


「その通りー」と、桜子もニッと笑った。


「圭介の方は? バイトで稼いだお金で、どこか旅行でもするの?」


「遠くまで行く予定はないけど、海くらい行けたらいいなと」


 薫子に忠告された通り、圭介はバイト代の使い道をあらかじめ作っておいたので、あわてることなく答えられる。


「友達と一緒に?」


「はっきり予定は立ててないけど、来週、中学の同窓会があるし、その時に誰か誘ってみるつもり」

「そっか」


 これ以上、桜子に突っ込まれないように、圭介はさっさと話題を変えることにした。


「そういや、親父さんに仲野(なかの)風太(ふうた)の件は頼んでみたのか?」


「うん。試験が終わった後に聞いてみたんだけど、やっぱり系列の会社じゃないから難しいって」


「そういうもんなのか?」


「ほら、うちも銀行があるから、四ツ井グループ系列の四つ葉銀行とは競合するんだよ。

 お父さんが変に動くと産業スパイになっちゃうし、相手も社内の人事情報を競合相手に簡単に流さないでしょ。

 裏で手を回すこともできるけど、そんなリスクを負ってまでお父さんに動いてもらうことでもないから断ったよ」


「なら、これからどうするつもり?」


「仲野先輩の方はとりあえず置いておいて、圭介が言っていたみたいに祐希(ゆうき)くんを探してみようかなって思ってるんだけど」


「あてはあるのか?」


「あてはないんだけど……。酒屋のおばさんがドラッグストアの名前を聞いてないかと思って、昨日の帰り道に寄ってみたんだけど、聞いてないって言うし」


「都内に3軒あるって言ってたっけ。場所の見当がつけば、すぐにわかりそうなもんだけどなあ」


「夏休みに入って時間もあるから、ネットで調べてみるよ」

「なんかわかったら連絡して」

「うん、もちろん。でも、そうじゃなかったら、圭介と会うのは夏休み明けになっちゃうのかな」


 思いがけない桜子の言葉に、圭介は正直驚いていた。


 男同士の友達なら、夏休みとなれば「あれしよう、これしよう」などという話になって、都合が合えばいくらでも一緒に出かける。

 しかし、同じことが桜子にできるかというと、何人かで出かけるのならともかく、休みに連絡して二人で遊びに行こうなどと気軽には誘えない。


 それが『カノジョ』と『友達』の違いで、『男友達』と『女友達』の違い。


 しかも、桜子に監視の目があることを思うと、余計に二人というわけにはいかない。


 学校にいる間、せっかく桜子の1番近くのポジションを維持してきたというのに、誰もが出会いを求め、解放的になる夏の1か月を1度も会うことなく過ごしていいものなのだろうか。


(1か月後、桜子が知らない女になってたら、おれはショックで立ち直れねえ……)


 いまだ呪いが解けていないのがせめてもの救いと、どう考えても他力本願な自分に腹が立つ。


(これじゃ、ダメだっ。おれの存在もがっつりアピールしておかねば!)


「そうじゃなくても、なんかイベントがあったら誘って。バイトっていっても、毎日朝から晩までってわけじゃないし。前もってわかっていれば、シフトも調整できるし」


「ほんと? じゃあ、そういう時は早めに声かけるね」

「なるべく金のかからないことで、よろしく」


「了解。でも、よかった。こんなに毎日一緒にいるのに、突然1か月も音沙汰(おとさた)なくなったら寂しいもん」

「友達ってそういうもんだろ」


 桜子の言葉に心底喜びながら何気ないフリを装わなければならないのが、圭介としてはやはり悲しい。

 好きな相手に対して、『友達』ほど自虐的(じぎゃくてき)な名称はないのだ。


 せめて『友達』から『カレシ』になれる権利が欲しい。

 このままグズグズ『友達』のままでいたら、いつのまにか誰かにかっさらわれてしまう。


 実際、船上パーティー以来、羽柴(はしば)(れん)は毎日のように教室までやってきて、あの手この手で桜子をデートに誘っている。

 貴頼だって、いずれは何らかの行動に移すだろう。


 桜子もそんな風に求めてくる相手に心が揺れないとも限らない。

 手遅れになる前に、ここにも『カレシ立候補者』がいるということを知っていてもらいたい。


(こうなったら、最初の給料が出た時点で、速攻貴頼との契約を切って告白してやるからなっ)



 そんな決意とともに、圭介の高校1年の夏休みは始まった――。

次話から圭介の夏休み最初のイベント、前話で出てきた中学の同窓会。

そこでいろいろ発覚するものが……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あぁ~、蓮くんってまだ諦めてなかったんですね(;´∀`) 船上パーティ以降、貴頼くんも特にこれといって行動に出てないのか……(´・ω・) なんだか、運命の夏休みが始まるっ!!って感じ
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