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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
最終章 テッペン目指して頑張ります。

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最終話 テッペンでつかんだ高嶺の花

本日(2023/06/23)、二話目になります。


この話をもって、本編完結です。

 ステンドガラスが美しいと評判の白亜の教会――。


 圭介はその祭壇の前に立っていた。


 色とりどりのガラスから差し込む光の中、オルガンの演奏が始まり、大きな扉がゆっくりと開く。


 モーニングを着た音弥の隣には、純白のドレスに身を包んだ桜子。

 ヴェール越しでもそのきれいな顔は充分よく見える。


 ほっそりとした首筋に肩の空いたデザイン。上半身はシンプルでパールの飾り、ほっそりとした腰からふんわりと幾重にも重なったレースのスカートが広がっている。


 大きな白い花とピンクの花の混じったブーケが、お辞儀と同時にかすかに揺れた。


(ああ、これがおれの花嫁さんか……)


 一国の王妃にもなれた家柄と美貌。改めて自分が相手なんかでいいのかと思ってしまう。

 音弥の方がよほどカッコよくて、父親より新郎と言われてもおかしくないほどお似合いに見えてしまった。


 そんな桜子がたくさんのフラッシュを浴び、うつむきがちに音弥の腕を取って、ゆっくりと歩いてくる。そして、圭介の前までたどり着くと、音弥の手から桜子の手を渡された。


 ヴェール越しに見えた桜子の顔はいつもよりはっきりと化粧され、全体に淡い色づきだというのに、目元がぞくっとするほど色っぽい。


 圭介は桜子の手を取ったまま祭壇への階段を上り、神父の前に立った。


 オルガンの伴奏に合わせて讃美歌斉唱が始まる。それが終わると神父の方から結婚式の始まりが告げられた。


 その間、圭介も前を向いているだけで、さすがに隣の桜子を見ることはできなかった。


『病める時も健やかなる時も』


 映画やドラマで定番の誓いの言葉が始まり、急にドキドキしてきてしまう。


「誓いますか」と、聞かれ、「誓います」と答える。


 同じように桜子も誓いの言葉を聞かれ、「誓います」と、答えてくれる。


 指輪交換が終わると、誓いのキス。


 恥ずかしかったらほっぺにキスでもいいと言われたが、わずかに頭を下げてベールを上げて見えた桜子の顔に思わず見とれて、そのまま唇を押し付けていた。


 唇を放すと、桜子はニコッと口元に笑みを浮かべる。


 そして、「このキスは無効だからね」と、のたまった――。




 ***




「無効って何だよ!?」


 圭介が飛び起きると、スマホのアラームが鳴っているところだった。


 朝5時、起床の時間。


 圭介は広いベッドでひとりポツンと座っていた。


 スマホを取り上げて、アラームを止めながら自分の左手をチェック。

 ちゃんと薬指に結婚指輪ははまっている。


 そして、サイドテーブルの上の写真立てを振り返る。そこにはたった今、夢に見たばかりの桜子のウエディングドレス姿の写真。


「夢かあ……」


 25で結婚して、それからさらに15年以上が経つ。

 その間、何度くり返し同じ夢を見てきたことか。


(これ、完全にトラウマになってるな……)


 圭介がほっと息をついていると、廊下からバタバタとにぎやかな足音が聞こえてきた。


 バーンと大きな音を立てて開かれたドアからは、二人の少女が飛び込んでくる。


 おそろいのTシャツに短パン、唯一違うのはポニーテールにしている髪の色。

 一人は明るい栗色のふわふわ巻き毛、もう一人は黒髪のサラサラストレート。


 綺良(きら)紗良(さら)。圭介の双子の娘たちである。


「おっはよう、パパ! 朝の鍛錬の時間だよ!」

「あれ? ちゃんと起きてるの? ママがいないから、絶対サボると思ったのにー」


 二人とも桜子そっくりな顔に、意外そうな表情を浮かべている。


「サボりません。ちゃんと起きてるよ」と、圭介は苦笑した。


「ほらほら、それなら早く着替えて。急がないと、会社に遅刻しちゃうよ」

「社長さんが初日から遅刻したら、恥ずかしいよー」


「はいはい、今行きまーす」


 圭介は二人の娘に両手を取られ、引きずり降ろされるようにベッドから出ていた。


 今日は4月1日。圭介が藍田ホールディングス代表取締役として、初出勤する日だった。

 いよいよ藍田グループの総帥としての仕事が始まる。


(で? そういう日に限って、どうして桜子は出張でいないかなー?)


 圭介は内心ぼやきながら、娘たちに引っ張られて洗面所に向かう。


(でもまあ、この『両手に花』でも悪くないから、いいんだけど)


 テッペンでつかんだ高嶺の花は、もう両手では足りない。

 幸せという名の花は、これからも増えていくことだろう。

 いつか両腕に抱えきれないほどに――。


 双子の娘たちはこの春、高校に入学。圭介が桜子と出会った年を迎える。


 この二人もそろそろ運命の相手を見つけるのだろうか。


 そんなことを思って、少し淋しくなった。



 〈了〉

 これにて『監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。』は、本編完結となります。


 70万字を越える超長編を最後まで読んでくださって、ありがとうございました!

 読んでくださった皆様、イラストを描いてくださった皆様には感謝しかありません。


 次話より番外編が始まります。(2023/9/1から連載開始予定)

 最終章15話で、圭介の高校一年が終わり、二年目が始まったところからスタートです。

 本編主人公、圭介や桜子も出てきますが、メインの話は彬&妃那になりますので、番外編とさせていただきました。

 セフレとしか言いようのない関係の二人が、その後どんな形でハピエンを迎えるのか、よろしければ続きもお楽しみください<m(__)m>


 お知らせなどは活動報告またはツイッター(@ao_kojiya)に随時流していきますので、よろしければフォローをよろしくお願いいたします。


 ついでに、下の★★★★★なども入れていただければ、今後の励みになります!

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結おめでとうございます! 圭介が苦難を乗り越えて掴んだテッペン。最後にそんなその後のシーンも見せてもらえて、幸せがうつってきたかのようです! 結納のところだったり、夢で見た結婚式だったり…
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