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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-3 みんなからの祝福、いただきます。~ジイさん編~

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12話 二人でカウントダウン

本日(2023/05/26)、二話目になります。


【ジイさん編】及び、第6章の最終話です。

 大みそかの夜、夕食に年越しそばを食べた後、圭介は二年参りに出かけた。

 妃那も彬と約束があったので、一緒に車で藍田家に向かう。


「妃那、そんな薄着で寒くないか?」


 妃那は厚手のワンピース一枚、コートもマフラーも手にしていない。

 暖房の効いた車内はともかく、外に出たら風邪を引いてもおかしくない格好だ。


「別に外を歩くわけじゃないもの」


「……二年参りに行くんじゃ?」


「行かないわ。いつもと同じ、ホテルに行くだけよ」


「うーん、こういう機会くらい、二人でどこか行けばいいのに」


「あら、圭介はセックスするより神社に行く方がいいというの? 今年最後のセックスをして、年の初めにセックスをしたくならない?」


「そ、それは否定しないけど! ていうか、ひと言でそこまで連発するな!」


「だって、もうじき彬に会えるかと思うと、興奮してしまうんだもの」


「おまえの頭の中は、現在それだけなのか?」


「そうよ。彬と会うというのはそういうことだもの」


 ホテルの部屋の中でしか成立しない関係とは、何なんだろうと思ってしまう。『デート』には違いないのだろうが。


(……おれたちがまだそういう関係になってないから、優先順位が違うだけなのか?)


 圭介としては、こういうイベントの一つ一つを二人で過ごすのも大事だと思う。

 食事をしたり、街をプラプラ見て歩くのも楽しい。


 結局、好きな相手が一緒ならどこでも、何をしていても幸せということだ。


「妃那、今幸せ?」


「ええ、幸せよ」


 ためらいなく笑顔で答える妃那を見て、圭介は微笑んだ。


「それならよかった」




 藍田家の裏口に到着すると、桜子と彬がそこに立っていた。


「じゃあ、明日のパーティに遅れるなよ」


 圭介は妃那に言いながら車を降りた。


「圭介もね」


「おれは朝帰りする予定ないよ。明日に取っておくんだから」


 言いながら、圭介はむふふっと笑ってしまう。


 パーティで源蔵に紹介した後は、桜子は晴れて正式な婚約者。

 そのまま自分の部屋に泊めても文句は言われない。


 新しい年の始まり、一歩進んだ関係になるには、最高のタイミングだ。


(来年の初夢は、桜子と一緒に見る!)


「先延ばしにして、後悔しないといいのだけれど」


 妃那は理解できないといったように肩をすくめた。


「あと一日くらい待てないほど、おれはがっついてねえよ。じゃあ、よいお年を」


「圭介も。よいお年を」


 圭介は振り返って、桜子と彬に「よっ」とあいさつした。


「こんばんは」と二人が返してくる。


「彬、妃那をよろしくな」


「はい。こちらこそ、姉さんをよろしく」


 彬は笑顔でそう言って車に乗り込んでいった。


「さて、あたしたちも行こっか?」


「おう。じっと立っていると寒いしな」


 暗い夜道とはいえ、桜子はいつものメガネの変装をしている。


「暗いから、駅くらいまで大丈夫よね」


「うん」


 桜子が出してくる手を握った。


「なんだか、今でもあの二人の組み合わせって、イメージがわかないんだけど」


「彬と妃那?」


「何をしゃべったりしてるんだろうって」


「妃那は誰と話をしても変わらんと思うぞ。おまえでも薫子相手でも。彬は普段よりちょっと多めに本音ぶちまけてるんじゃないかな」


「やっぱり男の子って、年頃になるといろいろ秘密にしたりするんだね」


「まあ、女兄弟なら特に言いたくないこともあるんじゃない?」


「そうなんだろうけど、お姉ちゃんはなんだか淋しいよ。昔はなんでも話してくれたのに。妃那さんと付き合ってることもずっと話してくれなかったし」


「自分にくらいは内緒で話してほしかったって?」


「うん」


「おれの場合、妃那は聞けば何でも素直に答えるのは変わらないな。

 けど、いつの間にか彬に会うのが優先になってて、なんか淋しいと思った。あんなにベッタリくっついてたのに」


「……今でも充分くっついていると思うよ? 学校とか」


「けど、今みたいに彬に会う時は、近寄っても来ないからな」


「じゃあ、来年は期待できるかなー。彬も高等部に来るわけだし、あたしは圭介を独り占め」


 へへっと桜子は顔を見上げて笑う。


「そうじゃなくても充分独占してると思うぞ。それより、明日は大丈夫?」


「うん。ちゃんと着物、用意してあるよ。明日の午前中に美容院で髪をセットしてもらったら、ばっちり」


「おれも紋付き袴用意された……。今まで着たことないのに」


「でも、親族が集まるパーティなんかに、あたしが行ってもいいのかな」


「まあ、決めたのはジイさんなんだから、いいんじゃない? あの人、当主だし」


「……なんだかなあ。圭介、神泉家の当主を甘く見てるような気がするんだけど」


「そう? ただの意地っ張りのジイさんだよ」




 電車を乗り継いで、明治神宮まで行った。かなり早く着いたはずなのに、すでに参拝客が列をなしている。


 予想以上の混雑で、桜子とはぐれないようにしっかりと手をつないだ。


「大丈夫?」


「うん、大丈夫。けど、零時までに参拝できそうもなくない?」


「気合入れても間に合わないものは、間に合わないもんな」


「行列の中でカウントダウン……」


「いや、まだ望みはある」


 そんな時、ゴーンと最初の鐘の鳴る音が響いてきた。


「除夜の鐘が鳴り始めたね」


「今年も終わりだな。いろいろあって大変だったけど、いい年になった」


「あたしも。なんといっても圭介に出会えたし」


「おれも。人生最高の年かも」


「なに言ってるの。これからもっといい年が来るって期待しなくちゃ。まだまだ序の口なんだから」


「今が幸せすぎて想像できねえ」


「圭介は欲がないねえ」


「どこが? おまえのことに関しては、めちゃくちゃ欲張りだろ。みんながほしいっていっても、遠慮なんかできなかったんだから。欲張りどころか、ものすごく貪欲」


「それはきっとあたしも同じだよ」


「同じか……? おれのことをほしい奴なんてそうそういないし、そこまで頑張んなくても大丈夫じゃない?」


「それは圭介が気づいてないだけだよ」


「そう?」


「そうなの!」と、桜子は頬をふくらませる。


(ああ、もう、かわいいなあ)


 圭介は桜子の顔をのぞき込んで、そのまま口づけた。


「今年のキスの仕納(しおさ)め」


「あ、もう、変な顔している時にしちゃダメ! やり直し!」


 そう言って目を閉じる桜子をそっと抱き寄せて、もう一度キスをした。


「これでいかがでしょうか?」


「よろしい。いい締めくくりになったわ」


 桜子と顔を見合わせて笑った。


 そして、零時少し前に参拝を終わらせ、スマホで時間を確かめながら、カウントダウン。


 二人で「あけましておめでとう」を言い合って、新しい年はキスで始まった。

この話をもって、【第6章  みんなからの祝福、いただきます。】が完結いたしました。

次回からは【最終章 テッペン目指して頑張ります。】が始まります。


長々と続いてきた物語もいよいよ終わりが見えてまいりました。

最後まで楽しんでいただけるように頑張ります!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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