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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-3 みんなからの祝福、いただきます。~ジイさん編~

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9話 魔性の女は代々引き継がれていた

本日(2023/05/23)は、二話投稿します。


前話からの続きの場面です。

「やはり、神泉会長も祖母のことをお好きだったんでしょうか」


 桜子の問いに、夫人は「ええ」と迷うことなくうなずいていた。


「男子生徒の中でも一番仲が良かったのではないかしら。けれど、神泉家の人だから、それ以上の関係になることもなく、お付き合いするようなこともなかったわ。

 そういえば、あなた、源蔵さんのお孫さんなの?」


 夫人は圭介の方に聞いた。


「はい」と、圭介はうなずく。


「道理で面影があるんだわ。なんだか不思議な御縁ね。何十年もたって、お孫さん同士がまためぐり合うなんて。そして、今度はお付き合いしているの?」


「はい。わたしは圭介と婚約をしたいと思っています。そのお許しを神泉会長にいただきたいところなのですが、どうやらわたしと顔を合わせるのを避けている様子で……」


 桜子の言葉に夫人は少し考え込んだように黙ってから、圭介の方を見てきた。


「あなたは後継者ではないの?」


「いいえ、後継者は他にいます。ただ、イトコの女性なので、僕が結婚相手として一番の候補に挙がっているのは確かですが」


「神泉の家でそういう意向があるのなら、当主である源蔵さんが桜子さんに会うのを断るのも無理はないと思うけれど」


「けれど、それなら面と向かって、当主として断ればいいだけのことです。その機会すらもうけさせてもらえないのは、他に理由があるからだと思いました。

 祖母の話では、どうも祖父は彼女のおばあさんと駆け落ちをしようとしたらしいんです。けれど、約束の場所に来てもらえなくて、あきらめるしかなかったと。しかし、先ほどのお話からすると、祖父もカン違いをしていたのかもしれません」


「源蔵さんは静さんを恨んでいるのかしら」


「それはわかりません。けれど、恨んでいたとしても、桜子は祖父の愛した人ではありません。やはり会わない理由にはならないと思います。

 どちらかというと、今でも思い続けているから、そんな相手にそっくりな彼女に会うのを避けているのではないかと、僕は思うんですが」


「あの源蔵さんが駆け落ちまで考えたのなら、そういう可能性もあるでしょうね」


「祖母はどうして神泉会長ではダメだったのでしょうか」と、桜子が聞いた。


「お好きだったとは思うわ。ただ恋をするには何か足りなかったのではないかしら。静さんがいない以上、もう想像の話でしかないけれど」


「そうですね……。わたしはなんとなくですけれど、祖母の気持ちがわかります。

 わたしもずっと特別に誰かを好きだという感覚がわからなくて、圭介に出会ってようやく知ったんです。祖父に出会った祖母も同じだったのではないかと」


「ということは、桜子さん、王太子殿下を振ってまで彼を選んだのかしら?」


 好奇心に輝く目を向ける夫人に、桜子はにっこりとかわいらしい笑顔を返した。


「ええ、もちろん。とても運よく王太子殿下にお子ができたので、難を逃れることができました。それに()りて、婚約を急いでいるんです」


「そうね。あなたの場合も余計なカン違いをする男性を増やす前に、落ち着いた方がいいのかもしれないわね」


「わたしは祖母と違ってはっきりお断りしますけど」


「けれど、相手はそう簡単に引いてくれないのでしょう?」


「ええ、まあ……」


「それが魔性の女と言われてしまう所以(ゆえん)ね」


「……それ、圭介のおじい様に言われたことよね?」


「うん」と、圭介はうなずいて返した。


「わたしにはピンとこなかったんですけれど、どういう意味なんですか?」


「そのままの意味よ。魔性の女と称されるのは、たくさんの男性を夢中にさせて、不幸に陥れるから。

 だって、そんな女性が選べるのはたった一人だけなんだもの。その選ばれたたった一人だけが幸せになれる。けれど、選ばれなかった他の男性は、簡単にはあきらめることもできず、一生思いを引きずらなければならない。それはある意味不幸なことでしょう。

 あなたのおじい様もお父様も選ばれたたった一人の男性だから、幸せということ。あなたがピンとこなくても仕方がないわ」


「本当にその通りです。そういうことだから、おじい様にも早く認めてもらわないとね。不幸な男性を増やさないためにも」


 桜子はそう言っていたずらっぽく圭介に笑いかけた。





「やっぱり、圭介のおじい様、おばあ様のことを忘れられないのかもしれないね」


 帰りの車に乗り込んでから桜子が言った。


「うん。ジイさんが魔性の女って言い切った時点で、忘れられないんだって宣言してたようなもんだし」


「でも、あたしたちが真剣に将来を考えて付き合っているのなら、反対する理由にはならないよね?」


「あの当時はまだおれが後継者になる可能性があったから、深入りして自分と同じ目に遭う前にやめろっていう忠告だったんだろうけど」


「今は関係ないもんね。妃那さんがいるわけだし」


「だから、おまえを無理やり会わせる必要はないと思うんだ。おれがまずジイさんと話してみようと思う」


「うん。圭介に任せるよ。そうやって忠告してくれるおじい様なら、ちゃんと圭介のことも思ってくれると思う。大丈夫だって信じてるよ」


「おう、任せとけ。あれでもおれのジイちゃんだからな」


 こうして話を聞いたおかげで、源蔵と話をするきっかけができた。


 ここまで出かけてきた価値は充分にあった。

次話、家に帰った後、源蔵から話を聞くことになります。

よろしければ、続けてどうぞ!

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