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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-3 みんなからの祝福、いただきます。~ジイさん編~

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8話 ジイさんはカン違い男の一人だったのか?

本日(2023/05/19)、二話目になります。

 訪ねる家はレストランから歩いても10分程度ということで、食事の後は腹ごなしに歩こうということになった。


 桜子がスマホで地図を確認しながら案内してくれる。


 左右はうっそうと木が茂る森のようになっていて、その向こうにちらほらと大邸宅が見え隠れしている。

 歩道というものがなかったので、車に気を付けながら車道の端を歩いていた。


「あ、目的地に着いた。ここだよ」


 桜子に言われて立ち止まったところには、大きな鉄の門がそびえていた。その向こうに白亜の城のような洋館が見える。その庭にはプールもついていた。


「おまえのばあちゃんの友達も金持ちなんだな」


「青蘭時代の友達だからね。もともとの家柄もいいし、それなりのところにお嫁に行くと思うよ」


「何やってる人?」


朝日電機(あさひでんき)の会長夫人」

「大手電機メーカーの?」

「そう」

「はあ、なんかすごそうな人だな」


「なに言ってるの。圭介のおばあ様も大手製薬会社の会長夫人じゃない」


「……あれ? おお、そうか。そういう風に名称がつくとなんかすごそうだよな。おれからすると『ばあちゃん』なんだけど」


「もう、圭介ってば……」と、桜子は苦笑している。


「時間になるから、チャイム押すよ」


 インターホンで名前を名乗ると、すぐに門が自動で開いた。プールを横手にアプローチを進み、玄関のノックを叩く。


「いらっしゃいませ」と、メイド服の女性が出迎えてくれた。




 家の中は近代的な造りで、窓がいっぱいあり、差し込んでくる光で明るい。

 案内された応接間で、圭介は桜子とソファに座って会長夫人がやってくるのを待っていた。


「なんか、緊張するな……。おれ、あいさつできるのかな」


「大丈夫だって。明るくて元気そうな方だったよ。あ、ほら、いらっしゃったみたい」


 ドアが開くと、メイドを伴って老齢の女性が入ってきた。小柄でほっそりとして、圭介の祖母と違って洋装だった。


「改めまして、藍田桜子です。昨日はお電話で失礼しました」


 桜子が立ち上がってあいさつするので、圭介もそれにならった。


「実はあなたがお小さい時に、パーティで一度お会いしているのよ。おじい様に連れられて。まだ3歳くらいだったかしら」


「さすがにその頃の記憶までは……」と、桜子は少し困ったような笑顔を浮かべる。


「ほんと、驚いたわ。テレビや新聞で見るより、ずっと静さんに似てるんだもの」


「やはり似ていますか」


「ええ。わたしの時の流れがおかしくなってしまったみたい。ところで、こちらは?」


「神泉圭介くんです。今、お付き合いしている人で、今日は彼にも関係あることなので、一緒に伺わせていただきました」


「あら、もしかして、ご学友と紹介されていた方? 神泉家の御子息なの?」


「初めまして」と、圭介も頭を下げた。


「立ち話もなんですから、どうぞ座って。今、お茶を出すわ」


「どうぞお構いなく」


「それで、静さんのことを聞きたいと言っていたけれど?」


 三人でソファに腰を下ろすと、夫人が聞いてきた。


「はい、祖母の結婚に関してなんですけど。祖母はわたしが生まれる前に亡くなっているので、どんな人かも知らなくて」


「静さんは明るくて、純粋で、天真爛漫(てんしんらんまん)な方だったわよ。高校の時は『春の女神』などと称されていたわね。

 藍田家を継ぐ人だったのもあるけれど、そうでなくてもとても美しい方で、夢中になる男性も多かったわ。あなたもそうではないのかしら」


「はあ……」と、桜子はかすかな笑みと共にうなずく。


「それで、祖母が結婚する前に恋人がいたということはないんですか?」


「わたしの知る限りでは、特定の相手はいらっしゃらなかったと思うわ。こう言ってはなんだけれど、静さんって、今でいう『天然』といった感じの方だったのよ」


「天然……」


 桜子が複雑そうにつぶやくのが、隣にいる圭介には聞こえてきた。


「男女関係なく、どなたにもやさしくて、好意を寄せるから、特に男性はみんなカン違いしてしまうの。『あの方のことが好きなの?』と聞くと、ためらいもなく『好きよ』と答えてしまう感じ」


「それは年頃の男の子だったら、普通にカン違いしてしまいそうですね……」


「そうなの。静さんは高校を卒業してすぐに結婚したんだけれど、その結婚式の日、なんと3人もの男性が教会に乗り込んできて、花嫁と駆け落ちしようとしたのよ。どの方も、自分の方がふさわしい、こんな男と結婚するなと。

 静さんは驚いていたわ。どの方とも結婚の約束をした覚えはないと。

 後でどういうことなのか聞いたら、確かにその3人の男性は結婚を申し込んでいて、『お気持ちうれしいわ』と返事してもらったと」


「……その先の断り文句はなかったんですか?」


「どうやらそのようで。すっかりカン違いしたその方たちは、静さんが無理やり結婚させられるのだと思って、助けに来たらしいの」


「おばあ様ってば……」と、桜子は頭を抱えた。


(おれのジイさんもそのカン違いして教会に乗り込んでいった一人ってことか?)


 聞いてみたかったが、桜子と夫人の話が続いているので、圭介はとりあえず黙っていた。


「おば様、祖母は高校卒業後に結婚したとおっしゃっていましたけど、祖父とはどういういきさつで結婚したのかはご存じなんですか?」


「いきさつというほどのものではないのだけれど、とにかく突然だったのよ。静さん、電話をかけてきて、いきなり結婚すると言うの。お相手の方は高校時代に何度か会ったくらいの人で、卒業を機に結婚を申し込まれてお受けしたと。

 けれど、話を聞けば、お相手は30に届く年の離れた方で、藍田銀行にお勤めの普通の家の方。それほどハンサムでもない。とてもではないけれど、静さんが恋に落ちて、しかもすぐに結婚を決める相手とは思えなかったわ」


「確かに祖父はお世辞にも顔立ちが整っていたとは言えませんね……」


 桜子が同意するところを見ると、誰が見ても『意外な相手』だったのは想像ができた。


「でも、静さん、その人は自分のためだけに生きてくれる人だからと。どんなことがあっても一生愛してくれる人だからと、言っていたわ。

 お付き合いもしないのに結婚など決めてしまってどうなのかと思ったけれど、静さんは結婚した後もずっと同じことを言っていたわ。

 ご主人が事業を拡大しようとして、悪いウワサが流れた時もどこ吹く風で、信じているから大丈夫と」


「祖父はいろいろ世間から叩かれることもして、悪い評判もあった人でしたが、とても家族思いの人だったんです。何よりも家族を大切にしてくれました。わたしも本当にかわいがってもらいました。大好きな人にそっくりな母やわたしは、自分の宝だとよく言っていました」


「ええ。だから、あなたのお母様が行方不明になった時は、あなたのおじい様も大変嘆かれたと聞いたわ。静さんが早世(そうせい)してしまったのは悲しかったでしょうけど、あなたやお母様がいらっしゃったから長生きされたのでしょうね」


「あの、おば様、話は戻るんですけれど、祖母の結婚式の日に教会にいらっしゃった男性たちの中に、神泉の方もいらっしゃったんですか?」


 桜子が圭介の気になっていたことを聞いてくれた。


「源蔵さんのことを言っているのかしら?」


「ご存知なんですか?」


「ええ、高校時代に同じクラスでしたから。でも、源蔵さんは教会にはいらしてなかったわ」


「え、そうなんですか?」と、圭介は桜子と顔を見合わせていた。


 どうやら、源蔵は花嫁と駆け落ちしようとしていた3人には入っていなかったらしい。


(ばあちゃんもウワサで聞いただけって言ってたしな……)

次回、この場面が続きます。桜子祖母と源蔵の関係は?

二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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