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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-3 みんなからの祝福、いただきます。~ジイさん編~

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2話 いろいろ誤解していたみたい

本日(2023/05/09)、二話目になります。


前話からの続いています。

「ねえ、妃那さん、何か思い当たることはない?」


 桜子は妃那の方に聞いてみた。


「おじい様があなたに会わない理由?」


「そう」


「あなたの顔を見たくないのだわ」


「……それ、どういう意味?」


 妃那の無邪気な天然発言に桜子はイラッとした。


「そのままの意味だけれど。あなたの顔を見るのがイヤなのよ」


「言い換えても、意味は同じよね?」


「ええ、そうね。つまり、他に言いようがないということよ」


「それはあなたがおじい様に何かを言ったせいじゃないの?」


「わたしが? 何を言ったというの?」


「圭介との婚約を許さないように、とか」


 桜子はずっと気になっていたことをついに聞いてみたのだが、妃那はうんざりしたような顔をした。


「あなたもそれを聞くの?」


「あなたもって?」


「わたし、昨日、彬に充分時間をかけて話したのよ。また同じ話をしなくてはならないのかしら」


 そういえば、今朝の登校中、彬はいつになくご機嫌だった。


『姉さん、心配しなくても、僕たちの関係が邪魔になることはないからね。万が一何かあった時は、ちゃんと力になるから』と、力づけてくれた。


 どうやら、彬の方が前もって聞いておいてくれたらしい。


(で、いろんな疑惑も晴れて、これでカノジョと心置きなく付き合えると、幸せいっぱいの顔をしていたのね)


「そ、そういうことならいいわ。失礼なことを聞いてごめんなさい」


「いいのよ、気にしていないから」


「どうしたんだ?」と、圭介が心配そうに聞いてくる。


「もしかして、妃那さんがまた婚約の邪魔をするために、何かしたんじゃないかなって疑っちゃったんだけど。違ったみたい」


 桜子は後ろめたい思いを抱えながら、圭介に笑って見せた。


「妃那、本当に何もしていないんだろうな?」と、それでも圭介は確認してくれる。


「ええ。そう言ってるわ。……あ、もしかして、わたしはみんなが信じられないことを言っているのかしら?」


 妃那はとぼけたように言う。


「ええ、そうね。今までさんざん邪魔をしてきて、今さら何もしないという方が信じられないでしょ?」


「わたしは圭介に嫌われるようなことはしないわ。圭介があなたといることで、笑顔を向けてくれるというのなら、それでいいのよ」


「じゃあ、圭介との婚約はあきらめたというの?」


「いいえ。あなたが婚約するといっても、結婚は先のことでしょう? 少なくとも圭介が結婚できるのは早くて2年先。あなたたちが本当に結婚するのかどうか、今の時点で推察してみても、そんな先の未来では何が起こるのかは予測不能。

 今、何かしても意味のないことでしょう」


「それはつまり、婚約をしてもかまわないけれど、結婚する時は邪魔をする、ということ?」


 桜子が問い詰めると、妃那は困ったような顔で考え込んでしまった。


「……だから、わたしは先のことはわからないと言っているのだけれど」


「じゃあ、今の時点ではそんなことは考えていないの?」


「いいえ、考えているわ。実は昨日から考えているのだけれど、答えが出なくて困っていたところなの」


「どうして? あなたの気持ちの問題でしょう? 圭介にあたしと結婚してほしいのか、ほしくないのか。それだけのことじゃないの?」


「端的に言えば、してほしくないわ。わたしは圭介が好きだもの。けれど、もしもわたしたちが結婚した場合を想定すると、あまり良い結果が望めない気がするのよ」


「どんな結果を想定しているの?」


「誰も幸せになれないという結果。結局のところ、最初の話に戻ることになって、先のことだから何が起こるのかわからないので、今の時点では決めることではない、ということになるでしょう?」


「ええ、まあ、うん……そうかな」


 桜子はなんだか狐につままれたような気分だった。けれど、圭介はそうではなかったらしい。


「妃那、おまえ、成長したなー。自分のことだけじゃなくて、他の人のことも考えて、結論を出そうとするなんて。おれはうれしいぞ」


 圭介はそう言って、妃那の頬をはさんでこすった。妃那はうれしそうに目を細めている。


「わたし、圭介がそういう顔で笑ってくれるのが、一番好きだわ」


 なんだかここまで来て、桜子もようやく妃那が『子供』なのだと理解できた。

 児童施設にいる子供と何ら変わりない。


 表情が硬かった時はわかりづらかったが、こうして感情を見せるようになると、喜怒哀楽がはっきりしてくる。

 それがはっきりすれば、何に歓び、何に怒るのか、そういう感情がこちらにも伝わってくる。

 だから、どういう人間かわかるのだ。


 妃那には邪気がない。


 ほめてやればうれしそうな顔をするし、甘えたい相手にはいい子でいようとする。悪いことをしたと思えば、素直に聞く。そこに何のあくどい企みもない。


(もう、ほんと、ただの子供なんじゃない……)


 自分の欲求に忠実なのも、子供ならではのこと。周りのことなど気にせず、好きなようにわがままを言う。

 大人になるにつれて、周りのことを考え、他人とのバランスを考えて、社会の中で生きていくものだ。


 妃那は今、そんな成長過程なのだろう。圭介はそれを見守っているのだ。


(なんか、あたしの方がよほどあくどいみたいじゃない……)


 とはいえ、中身が子供だったとしても、見た目は充分魅力的な女の子なのだ。


 そんな女の子が圭介にべったりとくっつき、腕を絡めて豊満な胸を押し付けているのを見れば、心穏やかでいられるわけがない。

 圭介がやさしくするのも心の底では気に入らない。

 二人の間には何もないと頭ではわかっているし、圭介を信じているけれど、やっぱりムカムカする。


 そんなやきもちが人を見る目を曇らせるのだ。


(だって、あたし、圭介に関してはちっとも寛容でいられないんだもん……)


 けれど、彬はそんな色メガネを使うことなく、妃那を見て、知って、好きになったのだろう。


(お母さんの言っていた通り、彬が好きになるような子に悪い子はいないんだわ)


 彬は園に行っても子供たちに人気がある。子供の扱いがうまいのだ。

 だから、妃那の扱いも上手にできるのかもしれない。


(なんだかんだで、いいカップルなんじゃない?)


 桜子はくすりと笑ってしまった。


「そういうことなら、このままジイさんを説得するしかないよな。ていうか、無理やり会わせなくちゃ。

 せっかくなら、今日来る? 薫子も来るし、おまえも」


 圭介にいきなり言われて、桜子は驚いた。


「え、今日?」


「予定が入っていなければだけど」


「それは大丈夫だけど、いきなり今日押しかけるの?」


「薫子も来るし、ちょうどいいじゃん。遊びに来たついでに、夕食の席で顔合わせ的に軽い感じで」


「あたしはもちろんかまわないよ。お邪魔じゃなければ」


「よし、決まりだな」と、圭介は笑った。

次回はその放課後、桜子&薫子が神泉家を訪ねる回です。

二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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