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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-3 みんなからの祝福、いただきます。~ジイさん編~

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1話 おじい様はやっぱり逃げていたらしい

本日(2023/05/09)は、二話投稿します。


第6章パート3【ジイさん編】スタートします。


圭介視点です。

 月曜日、圭介はいつものように車で妃那と登校していた。


 が、なんだか、妃那の様子がおかしい。完全に人形になっている。微動だにしないし、瞬きもしない。


(……ウソだろ。まさか、退行現象?)


「おーい、妃那?」


 妃那の目の前で手を振って、ようやく我に返ったかのように圭介を見てきた。


「何かしら?」


「いや、なんか、また人形になってたから、大丈夫かと思って」


「いえ、昨日から続いている考え事があって。問題ないわ」


「そう? ならいいけど。それより、その頭、どうしたんだ?」


 今日の妃那は頭のてっぺんにお団子を作って、ずいぶん幼稚なクマの絵柄のクリップで留めている。


「和代にやってもらったの。どう、似合うかしら」


 妃那は圭介の前で顔を左右に振って見せる。


「うん、似合う。横髪で顔を隠すより、ずっとすっきりしていていいぞ」


「ほんとう? 西洋のお人形さんみたいでしょう?」


「うん、まあ、顔立ちは純和風だから、ちょっと違うけど」


「あら、そう?」と、妃那はむっとする。


「けど、西洋人形に限らず、日本髪とか、着物の時も髪を上げるだろ? どっちかっていうと、そういう感じ」


「市松人形と言われないなら、何でもいいわ」


「……なに、そんなこと気にしてたのか?」


「今まで気にしたことはなかったけれど、こうして髪を上げるとそう見えないことがわかったのよ。だから、気に入っているの」


「で、なんでまた、そのクリップ? ずいぶん子供っぽいけど」


「あら、かわいいと思うわ。彬にプレゼントしてもらったの。生まれて初めてのクリスマスプレゼントよ」


 妃那はうれしそうに言う。


「そっか、それはよかったな」


 妃那の頭をなでてやろうとして、お団子のせいで不可能だということに気づいた。


「なでてくれないの?」


「いや、せっかくの髪型が崩れちゃうから」


「なら、外すわ」


 妃那はためらいなくクリップを外して、頭を寄せてくる。


「あーあ、もったいない」


 そう言いながらも、圭介は頭をなでてやった。


「圭介は直してくれないの?」


「できるわけないよ。桜子に頼んだら? あいつなら、髪長いし、よく髪を上げたりしているから」


「そうするわ」


「そういう時は、ちゃんと『お願いします』って言って頼むんだぞ?」


「わかったわ」


 それから、また妃那は人形のようにじっと動かなくなってしまった。


(……なにか、あったんかな。それとも、またなんか変なことを考えてんのか?)


 一応、注意しておかなければならない、と圭介は思った。




 *** ここから桜子視点です ***




 昼休み、いつもの4人でお弁当を広げている間、桜子は妃那の様子を観察していた。


(……まだ、なんか信じられないのよね。ぽやんとした彬のことだから、ダマされているんじゃないかしら)


 そんな中、他のみんなはもらったクリスマスプレゼントの話をしている。


「えー、で、妃那さんは何もらったの?」と、薫子が聞く。


「わたしはおじい様から腕時計とおばあ様からバッグ、叔母様からはお洋服をいただいたわ。お父様からはなんと、自動販売機だったのよ」


「自動販売機!?」と、桜子は聞き間違いかと思った。


「ええ。先日、街を歩いている時にお父様におねだりしたんだけれど、ダメだと怒られてしまって。

 でも、実はクリスマスに驚かせようと思って、その時は買ってくれなかったんですって。

 もう、わたし、驚いて興奮してしまったわ」


「ええー、いいなあ」


 薫子はうらやましげに言うが、桜子にはさっぱり意味が分からなかった。


「……自動販売機で何するの?」


「分解して中を見るのよ。どういう構造か気になるでしょう?」


「あ、そう……?」


(気にしたことないけど……)


「ねえねえ、お札の読み取りセンサーもついてる奴?」


 薫子は興奮したように身を乗り出して聞く。


「ええ、もちろん」


「いいなー。あたしも一度開いてじっくり見たかったんだ」


「あら、あなたも興味あるの? なら、うちに来て、一緒に自動販売機を分解する?」


「え、いいの?」と、薫子が目を丸くする。


「ええ、もちろん。わたしもまだ全部見ていないから、今日の放課後にでも一緒に見ましょうよ」


「じゃあ、じゃあ、お邪魔する。ね、いいでしょ、桜ちゃん?」


「本当にいいの? お邪魔して」


 二人の会話を微笑ましく見ていた圭介に聞いた。


「全然かまわないよ。妃那、よかったな。初めて友達が家に遊びに来てくれるんだから」


 圭介の言葉に妃那は笑顔でうなずく。


「ええ、これが友達というものなのね。放課後がとても楽しみだわ」


「というわけで、うちは大丈夫」と、圭介は桜子に笑顔を向ける。


 学校に来始めた頃の妃那は、圭介以外とまず話すことはなかった。話しかけてもそっけない応答。どこにいくにも圭介と一緒。

 これは今でも変わらないが。


 最近、少しずつ変わってきているような気がする。


 今朝もイルミネーションで受賞した件でクラスメートたちに囲まれ、ぜひ見てみたいという子たちに「28日までは一般公開をしているから、是非見にいらして」と、得意げな笑顔を向けていた。


(……これって、やっぱり彬の影響なのかしら)


「で、桜子はプレゼント、何もらったんだ?」


 圭介に聞かれて、桜子は顔を上げた。


「あたし? あたしはロングブーツ。今度のデートで初下ろしする予定」


「じゃあ、近いうちにデートしなくちゃな。学校も明日で終業式だし、あさっては?」


「うん、空いてるよ。1日あるから、どこに行こうか」


「遊園地とか? 寒いかな」


「待って、あさっての天気を見てみる」


 スマホを開いて、天気予報をチェック。


「少なくとも晴れだから、あったかい格好していけば大丈夫じゃない? 遊園地、あたしも行きたいし」


「じゃあ、決まりな」


 ふと圭介のしている腕時計に気づいた。


「もしかして、それ、プレゼントにもらったの?」


「ああ、ジイさんから。おれの腕時計、安っぽいからやめなさいと言われた」


「ていうか、妃那さんとおそろいじゃない? ペアウォッチになってるんだけど」


 桜子はむうっと口を尖らせた。


「ペアで買った方が安かったからとか?」


「そんなことあるわけないでしょ、神泉の人に限って! 妃那さんとくっつけようとしているの、見え見えじゃない?」


 桜子が言うと、「冗談だって」と、圭介は笑った。


「同じ時計つけてるくらいで二人がくっつくなんて、さすがのジイさんも考えてないと思うぞ」


「ところで、圭介、おじい様に聞いてみた? パーティの日のこと」


「一応、問い詰めたんだけどな。会場にはずっといたって言い張ってるし、見つけられないおれらの方が悪いって、開き直ってた」


「……それ、明らかに逃げていたって認めてない?」


「うん、だから、おれも突っ込んだんだけど。そもそも会う約束をした覚えはないと。まあ、確かにそうは言ってたけどさあ。あそこまで来たら、あいさつくらいって思うよな」


 圭介はそう言って、小さくため息をついた。


次話、このまま話は続きます。

お時間ありましたら、続けてどうぞ!

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