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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-2 みんなからの祝福、いただきます。~妃那&彬編~

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15話 半分ウソだけど、家族に報告です

本日(2023/05/02)は、二話投稿します。


前話から引き続き、彬視点です。

 昨夜寝ていない彬は、明け方早く家に帰ってくると、ほとんど一日寝て過ごした。

 ようやく夕方になって行動開始。


「あー、もう、やっと起きた!」


 洗面所で顔を洗っていると、薫子がやって来て不満げに言った。


「ふー、やっと起きられた」


 身体の疲れも取れて、気分は爽快(そうかい)だ。


「もう、お父さんとお母さん、プレゼント渡そうとして待ってたのに。何度起こしても起きないんだから」


「ごめん、気づかなかった。それで、父さんたちは?」


「夕ご飯の時に戻ってくるから、その時にって」


「姉さんは? 出かけてないの?」


「今日は家にいるよ」


「で、で、昨日の話の続きなんだけど、何、カノジョって? 神泉妃那のこと?」


「そう。いろいろ片付いたから、今日の夕食の時にでもみんなにもちゃんと言っておくよ」




 その夜、家族がそろって、いつもより少し贅沢にデパ地下お惣菜で、クリスマスパーティとなった。


「で、お母さんたちは、どんなクリスマスを過ごしたの?」と、桜子が聞く。


「あたしたちは銀座でお食事して、ホテルに泊まってきただけよ」


「盛り上がった?」と、薫子が興味津々に聞くと、にっと笑って母親は右手を見せた。


「新しい指輪をもらいましたー」


 姉と妹は「見せて、見せて」と顔を近づける。

 それを見て、父親はほけほけと幸せそうな顔をしている。


 その後は神泉家のパーティの話になった。


 どうだったか詳しいことは、薫子が撮った写真を見せながらぺらぺらと話してくれた。

 どうやら妃那が計画していたパーティはどれも成功だったらしい。


 食事は立食式、七面鳥をメインに巨大ローストビーフ、後は食べやすいようにオードブルはいろいろな種類のピンチョス、サンドイッチや巻きずし、子供の好きなポテトやオニオンフライといったファーストフードまで。

 どれを食べてもおいしかったと言っていた。というか、全種類制覇したと薫子は豪語していた。


 そして、クリスマスケーキは壮大な庭付きのお菓子の家。牧場の小屋をイメージしたらしい。


(僕も一緒に計画したのに……)


 何にも見られなかったし、何にも食べられなかった。イルミネーションも門から玄関に入るまで、ちらっと見ただけ。


 すべてがうまくいった今となっては、残念で仕方がない。


(しかも、僕、来年は絶対に行けないし)


 ぐすん、と彬は鼻をすすった。


「それで、神泉会長にはあいさつできたの? 一番の目的だったんでしょ?」と、母親が桜子に聞く。


「できなかったー。あれは、明らかにあたしと顔を合わせまいとして、逃げていた……」


 桜子がむうっと口をとがらせる。


「逃げる?」と、母親は驚いたような顔をする。


「だって、そうとしか考えられなかったもん。ちらっと姿が見えると、どっかに消えちゃうの。

 まるで鬼ごっこしているみたいだったよ」


「あの神泉会長が姑息(こそく)な手を使うとは思えないけどなあ。婚約を認めるかどうかはともかく、パーティ客へのあいさつくらいはするだろ。主催者側なんだから」


 父親は納得できないといったように首をひねる。


「もしかして、桜ちゃん、怖がられていたんじゃない? きっと一度話を始めたら、絶対婚約を押し切ってくるって」と、薫子。


「こっちはそのつもりなんだからしょうがないじゃない」


「だから、せめて顔を合わせなければ、回避できると」


「とはいえ、そんなの大勢いるパーティの場だからできることで、改めて機会を設けてあいさつってなったら、逃げられないんじゃない?」


「そういう時は仮病使うとかで急に来られなくなったとか、家に押しかけても病気で寝てるとか」


「そうやってずるずると引きのばして、いつまでも婚約させないってこと?」


「うん、そう」


「うーん。つまり、ただ単純にあいさつがしたいって言っても、会ってもらえないってことになるから、何か方法を考えなくちゃいけないわけか」


 桜子は腕を組んで悩んでいる。


「あたしも協力するよ。いい作戦を考えよう」


「でも、いまひとつ、わかんないんだよね。妃那さん、親公認の恋人ができたみたいだし、圭介はもうどうでもいいんじゃない?」


 彬は思わずむせた。


「大丈夫? あわてて食べないの。ほんと、小さい頃から変わらないんだから」と、桜子がとんとんと背中を叩いてくれる。


「姉さん、知ってたの?」


「あたしも今日、圭介から電話をもらって知ったところなんだけどー」


「圭介さんから電話があったんだ」


「うん。昨日家のゴタゴタで、パーティの後、出かけられなくなっちゃったでしょ。改めてごめんって。で、その理由も教えてもらったの。

 妃那さん、どうもそのことでお父さんとケンカ? みたいになってて、圭介が仲裁に入ってたとか」


「相手は神泉の人じゃないの?」と、母親が聞く。


「それは聞かなかったけど、隠れて会っていたみたいだから、違うんじゃない?」


「……それ、僕です。みんなに一応、言っておこうと思ってたんだけど……」


 彬がぼそぼそと言うと、桜子と母親は「はいっ?」とすっとんきょうな声を出し、薫子は疑り深い目でじいっと見つめてくる。そして、父親は世界が終わったといったような顔をしていた。


「あ、あんた、本当に妃那さんと付き合ってるの!?」


 桜子は驚きすぎたのか、声が裏返っていた。


「だから、そうだって」


「だって、神泉の人がどうして彬を認めるのよ? しかも、『知る者』の妃那さんなんて、殺されてもおかしくないじゃない」


「だからまあ、コソコソ隠れて会ってたわけで。けど、このままってわけにもいかないから、あっちのお父さんに紹介してもらった……」


 彬はウソまではいかない程度に話をしていた。


「で、あっさり許してくれたの?」


「すったもんだはあったけど、最終的には納得してもらえて、無事に親公認で会えることになったわけ」


「彬がずっと『カノジョ』って言ってたの、妃那さんのことだったのかあ。うん、それは忍ばざるを得ない恋よね。万が一親に知られたら、引き裂かれてしまう。映画のような設定よね」


 桜子は「うん、うん」と納得している隣で、薫子もやれやれといったように笑っている。


「ああ、もう、やっと納得いったよ。昨夜、彬くん、いったんは交渉が決裂したから、パーティの途中で帰っちゃったんだね。で、妃那さんはそのままお父さんと交渉を続けて、で、めでたく朝まで寝ないでクリスマスデート」


「余計なこと言うなよ!」


 思わず赤くなってしまうから、全部暴露させられてしまう。


「事実でしょ? でも、あんなに落ち込んでる彬くん、初めて見たから、よっぽど妃那さんのことが好きなんだってわかるよ。あたしにも必死で隠そうとして、ウソついて。よかったね、うまくいって」


 薫子はにっこり笑った。


(……なんか、違うんだけど。僕、わりと本当のことを話してたつもりだよ?)


「彬にとっても素敵なクリスマスになったんだね。よかった」


 桜子はほんのり顔を赤くしてふんわりとした笑顔を向けてくれる。


(姉さんに祝福されるのはなあ……)


 彬はうれしいと思うより、切ない気分の方が(まさ)っていた。

次話もこの場面が続きます。

お時間ありましたら、続けてどうぞ!

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