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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-2 みんなからの祝福、いただきます。~妃那&彬編~

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7話 あまりにバカバカしい話で泣くに泣けません

本日(2023/04/18)は、二話投稿します。


前話からの続きの場面です。

「結局、僕たちがしてきたことが迂闊(うかつ)だった。だから、当然の結果だったと……」


 圭介から話を聞いて、彬は小さくつぶやいた。


「親に隠さなければならないと知っていて、カードを使っていた妃那が一番悪い。おまえも気づいていたら止められたかもしれないのに。

 おまえ、カードってものを使ったことがなかったんだな。この間、薫子と買い物に行った時に知ったんだけど。気づけないのも無理ないか」


「僕はそんな用意周到に動ける人間じゃない。完璧にふるまうことなんてできやしない」


「彬、これから話すことをよく聞いて。おれが伯父さんに話したのは、もう1か月近く前なんだよ。

 それからも伯父さんはずっと黙って見守ってた。妃那のことを気づいてやれなかったことに悔やんで、これから自分が何をしてやれるのか、考えながら様子を見ていたんだ。

 それがどういう意味か分かるか?」


「……わかんないよ。とっとと僕を抹殺してくれた方がわかりやすい」


「そうだよな。けど、伯父さんはそうしなかったんだ。娘を思う父親として、どれだけおまえを憎々しく思っても。

 でも、伯父さんは妃那にも何も言わず、一緒に笑っていた。愛してやった。けど、それでは妃那は何も変わらない。変えてやることができないということも同時にわかったんだ。

 そして、おまえの存在が妃那にとって大事なものなのかもしれないと思った。伯父さんはそう思ったから、おまえに期待したんだ。おまえなら妃那に本当の愛を教えてやれるんじゃないかって」


「そうだね。そうやって僕に過度な期待してたのかもしれない。けど、僕に今日会って、期待は裏切られた。だから、帰れって言った。もう二度と近づくなって思ったんだ」


「ごめんな。おれたちが本当はずるいんだ。勝手におまえに妃那を押し付けて、勝手に期待してた。まだ中学生のおまえに重荷を背負わせてた。

 どうしても肉親では教えることのできない愛情をおまえなら与えてくれるんじゃないかって。そして、おまえを傷つける結果にしてしまった。

 責めを負うのはおれらなんだ。おまえは悪くない」


 圭介のやさしい言葉が余計に胸を刺す。

 許しの言葉を受ける資格のないことは、自分が一番よくわかっているのだから。

 自分たちの不注意な行動がすべてを招いただけのことだ。


「僕たち自身の問題なのに、勝手に自分たちの責任にしないでよ」


「うん。おまえはちゃんと自分のしたことがわかっている。どこに責任があるのか、ちゃんと考えられる。

 でも、本当におれにも責任があるんだ。

 例えば、今日のことだって、おまえを不用意に妃那に近づけた。あいつが所かまわず、時かまわず発情することを知っていたのに。その相手をしてくれるおまえがそばにいたら何が起こるか、考えてもみなかった。

 伯父さんにすでに話してあるのに、おまえを家に呼んでしまった。自分のことでいっぱいいっぱいで、おまえのことまで考える余裕がなかった。

 勝手に妃那を押し付けて、勝手に任せて、大事な時に放置したんだ。ひどいだろ?」


「そんなの、僕が自分の立場をわきまえて、ここまで来なければ、何にも起こらなかった。最後まで悩んで、大丈夫かもなんて過信して、結局、このざま」


「それは……難しかったと思うよ」


「何が?」


「だって、おまえを呼んだのは妃那だったんだから。おまえに来て欲しかったんだよ」


「なに、性欲発散のために?」


「違うよ。おれもさっきまで知らなかったけど、おまえを父親に紹介したかったんだって」


「は、そんな、バカな。なんでカレシでもない僕を紹介しようと思うの? ありえないでしょ?」


「おまえも知っての通り、妃那は頭がいいのにかなりずれていてな……。どうもおれがおれの母親と桜子のことを話すのがうらやましかったみたいなんだ。自分も父親とおまえの話をしたいって思った。そして、今日の計画を立てた」


「さっき聞きそびれた計画の結末……」


「おまえを桜子の弟として紹介したかったんだって。そうしたら、行為そのものを話さなくても、おまえに聞いた話やおまえとした話はできるだろ? それを父親に話せるようになる。つまり、仲のいい友達として紹介ってことになるんだけど。

 おまえの性格を全部分析して、桜子と一緒に来るように仕向けたんだろう。あいつがそう決めたのなら、かなりの確率でおまえはここに来ざるを得ない状況に陥る」


「バカじゃん……。クリスマスの計画はさんざん僕に話しておいて、なんでそっちの計画は話さないんだよ? 最初から知っていたら、僕だってそのつもりで来るか来ないか決めたのに」


「一度、パーティは断ったんだろ?」


「当たり前じゃないか。あの人の父親になんて会いたくないし、会う理由もないんだから」


「そう、おまえはそう答えた。普通だったら、そこで説得するよな? これこれこういう理由だから、来てくれないか、とか」


「まあ、そうだね」


「あいつの場合、断られた、おまえは来ない、なら、無理やり来させるために計画を立てる、という思考パターンみたいなんだよな。おまけに計画がバレたら、おまえが来なくなってしまうと思っていたみたいだし」


「ほんと、バカ……。相変わらずっていうか。クラスメートの弟として紹介くらいなら、別にかまわないのに。そう思ったから、僕だって来てもいいかと思ったわけだし」


 彬は呆れて乾いた笑いがもれていた。


「そうなんだ。あいつに欠けているのはコミュニケーション能力。言葉で相手をどうこうするという発想がないらしい。もっとも長いこと誰とも話をしない環境にあったから、それも仕方がない。

 少しずつ変わってきていると思うけど、それでも突拍子のないことをやらかすのは、誰かに相談するってことをしないからだと思う。変に頭がいいから、自分一人で解決できると思っている。それが慢心(まんしん)だということに気づいていない」


「確かに……」


 彬も同じようなことを思ってきたので、同意以外の言葉はなかった。


 幾度となく聞いてきた『計画』は、彬からすると「えっ?」と思うような内容で、いつも驚かせる。

 天才の考える内容のすばらしさに感銘するのならいいが、毎度毎度「何考えているの!?」と思うようなことを平気で話してくる。

 おかげで放っておくわけにもいかず、彬が軌道修正するのだ。


「だから、今回のような失敗が起こると思う。もっとも、その計画を立てた時に、おれが伯父さんにすでに話してあったことを知らなかった。それを計算に入れて、計画を立てることができなかった。

 おまけにおまえを見たらガマンできなくなって、部屋に引っ張り込んでしまった。

 挙句の果てに伯父さんが乗り込んできた。最悪な結果になってしまった。

 妃那は全部おれのせいだって言っていた。計画を失敗するのはいつもおれが絡むからだって」


「結局、そんなくだらない計画のために、全部終わったんですね……。なんか、僕たちらしいっていうか」


 あまりにバカバカしい話で、笑い飛ばせれば楽になれるのに。

 泣きたいのに涙も出てこない。


 変な笑みを浮かべているだろうと、彬は思った。

次話でこの二人の会話も決着になります。

お時間ありましたら、続けてどうぞ!

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