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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-1 みんなからの祝福、いただきます。~母ちゃん編~

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9話 いつもの日常が戻ってきた

本日(2023/03/21)は、二話投稿します。


前話と同じ日のお昼休みです。

 昼休み、クラスメートが桜子の周りを囲む。


「桜子さん、わたしたちもお弁当を持ってきたの。ご一緒してもいいかしら」


「今日は久しぶりに圭介に会えたから、ご遠慮してもらってもいい? ぜひ、今度」


 桜子は断って、圭介と妃那のもとに来る。その頃には薫子も教室に姿を現した。


「ねえ、あたしたちが休んでいる間もみんなお弁当を持ってきてたの?」


 みんなで弁当を広げて食べ始めてから、桜子が聞いてきた。


 王太子がいる間は弁当派の桜子に合わせて、昼休みの教室はにぎやかだったが、この一か月は圭介も妃那と二人だったので、一緒にカフェテリアで食事をしていた。


「おれらも教室にいなかったから、どうだったか知らないんだけど、みんなカフェテリアだったかも。おまえが戻ってきたから、また弁当復活か?」


「ええー。この調子で毎日断るのはなあ……」


 桜子はゆううつそうにため息をつく。


「今となっては、おまえの気持ちがよくわかる。昼くらい静かにメシ食いたいよな」


「圭介、とりまかれてたの?」


「休み時間のたびになー。カフェテリアの方がこいつと二人だし、まだゆっくりできた」


「そうだよねー。あたしたちがいなかったら、そうなるよねー」


(『妃那と二人』に引っかかったか……?)


 桜子がむうっとしたように口をとがらせているので、圭介はあわてて話題を切り替えた。


「そういや、今日も車で来たのか?」


「ううん、電車」


「大丈夫だった?」


「うん。写真はバシバシ撮られたけど、彬と薫子も一緒だったから、近寄ってくる人はいなかったよ。ていうか、薫子が追っ払ってた」


「薫子、番犬みたいだなー」


「ダーリン!」と、薫子が目を吊り上げる。


「おかげで、安心。頑張って桜子を守ってくれよ」と笑いかけると、「もう」と、薫子は頬をふくらませた。


「じゃあ、今日の帰りは久しぶりに一緒に帰れるな」


 桜子が「うん」とうれしそうにうなずく。


「ほんと、久しぶりだよねー。王太子が来てからは車だったし、その後は入院で。いつもの放課後がやっと戻ってくる」


「おれもうれしい」


 本当に全部元通りになったのだ。


 それ以上に、桜子との距離をさらに縮まった気がする。困難を乗り越えて、また一歩と。


 それだけでも今は幸せに感じる。




 その放課後、昇降口で待っていたのは薫子だけだった。彬はいない。


「もしかして、あたし、お邪魔? せっかく久しぶりの登校で、二人っきりの時間を過ごせるのにって」


 圭介たち二人を見た薫子が、真顔で聞いてくる。


「何言ってんだよ。彬もいないし、途中から桜子一人で帰らせられないだろ? いてくれて逆によかったよ。ちなみに彬は?」


「デートだって」と、桜子が答える。


「デートって、カノジョと?」


「うん。カノジョって言うといつも否定するんだけど、絶対カノジョだよねー。『好きじゃないの?』って聞くと、『嫌いじゃない』って答えるの。もう、素直じゃないんだからー」


 そう言って桜子は朗らかに笑っている。


(……いや、それは本当のことなんじゃ?)


「それって、桜子から見て、彬が恋してるって思うのか?」


「バレバレだよ。彬ってほんと素直だから、わかりやすいもん。カノジョから呼び出されると、いそいそ出かけていくし。彬が恋に目覚めてくれて、お姉ちゃんはうれしいよ」


「そうだよな……」


「だって、恋するって素敵じゃない? つらいこともあるけど、幸せもいっぱいだもん。あたし、こんな気持ちになるの初めて。だから、薫子もいい人を見つけてね」


「あたしは興味ないもーん」と、薫子はつーんとそっぽを向く。


 弟をよく知っている桜子の目から見て、彬が恋をしているのなら、その可能性は高いと思う。


(でも、相手が妃那だからなあ……)


 恋に目覚めさせてやってくれと、切に願った。


「ああ、でもいいなー、放課後デート。思ってみれば、あたしたち、付き合い始めてからあんまりデートってしてないよね」


「放課後1回デートして、文化祭行って、家に行ったのも含めて3回くらい?」


 家に行った時のことを思い出して、互いに顔を赤くしてしまう。


「ええと、実は少なくない? これが普通なの? 平均したら月に1回くらいじゃない」


 桜子はあわてたように続けた。


「そういや……。付き合い初めは神泉の家に行って、家に閉じ込められて、会えるような状態じゃなかったし。ようやくデートできるようになったと思えば、王太子がやってきてまた不可能。まあ、学校で会える分、まだマシだけどな」


「それで、しばらくはその反響のせいでまたデートできないなんて……」


 ふうっと桜子はため息をつく。


「それなら、桜ちゃん、変装していけばいいよ」と、薫子がニコッと笑いながら言った。


「変装?」


「ほら、もう寒くなってコート着てるから制服は見えないし、あと、ちょっと髪型変えてメガネでもかけて、桜ちゃんの美しいオーラを消せば、目立たないよ」


「ああ、なるほど」と、桜子はうなずく。


「それにイチャつきさえしなければ、最悪はご学友と歩いているだけって思われるし」


「デートってイチャつきたくなるものじゃない?」


「そこは、状況が状況なだけにガマンするしかないけどー。デートできないよりはよくない?」


「そりゃそうだよ」と、桜子は真顔でうなずく。


「ダーリン、明日の放課後はヒマ?」


 薫子が桜子の向こうから圭介をのぞき込んでくる。


「家庭教師断るだけだから、基本的にいつでもヒマといえばヒマだけど」


「じゃあ、さっそく明日。桜ちゃん、今日は変装道具、買って帰ろう」


「明日のために? もう? 圭介もいいの?」


「おれはだから、いつでも」


「そういうことなら、準備しておくね!」


 きらきらした笑顔で元気よく言われて、デートなど関係なしに今ここでイチャつきたくなっていた。

次話はその翌日の放課後デートの話になります。

よろしければ、続けてどうぞ!

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