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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第6章-1 みんなからの祝福、いただきます。~母ちゃん編~

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4話 さあ、初心に帰ろう

本日(2023/03/10)、二話目になります。


桜子視点です。

 退院後、週末ということもあり、桜子は家でのんびり過ごしていた。


 さんざんニュースに出てしまった直後、外に出ても人にジロジロ見られるし、勝手に写真を撮られる。

 それくらいなら、家――敷地内にいた方がよほど落ち着ける。

 庭が充分広いのでランニングもできるし、合間に空手の型をやったり、竹刀を振ったり。

 身体を引き締めるための努力を怠ることはできないのだ。


(いつ圭介に見せてもいいように、パーフェクト・ボディにしておかないと!)




 夕食に集まった家族の話題は、今日一日流れ続けた桜子の退院会見のことだった。


「桜ちゃん、きれいだったよねー。映画みたいだった。録画しちゃったよ」


 薫子がうっとりしたように言うと、母親が目を吊り上げた。


「やだ、薫子、録画したの? 消しなさいよ。桜子が急に飛び出していくから、あたし、驚いてものすごいマヌケな顔して映ってるんだから」


「えー、別にお母さんに焦点が合ってるわけじゃないんだから、いいじゃーん」


「ダメよ! あたしの一生の汚点になるんだから!」


「ええー、おれは永久保存だけどなー。めったに見られない華の顔、取っとかなくちゃな。お宝映像」と、父親がホケホケと言う。


「もう、音弥まで! ていうか、桜子、よく見つけたわよね。あんなに人がぐっちゃんぐっちゃんしてる中から圭介くんを」


「うん、すぐにわかるよ。あたし、目がいいから」


 桜子の隣で薫子がうぷぷと笑いながら言い出した。


「でも、あんなに花束差し出されて、うっかり隣の人のを受け取っちゃったら、笑えるよねー。『え、おれのじゃないの?』って、ダーリン、呆然としちゃうよ」


「もう、何のギャグよ?」


 ぶははと食卓に笑いが広がる。


「それはそうと、桜子、気を付けなさいよ。あんたはさんざんテレビに出てたから仕方ないけど、圭介くんの方にも注目が行ったら、いい迷惑よ」


 笑いが一通り収まった後、母親が真面目な顔で言った。


「圭介は気にしないと思うけど。公然と付き合えるって喜ばない?」


「圭介くんはそうかもしれないけど、家の方が迷惑だって思うわよ。あっちは格式の高い家なんだから」


「……うちは?」


「うちは代々話題豊富な家で、世の中を騒がせてるから、もうあきらめてる」


「あ、そう。それ、開き直っていいのかな……」


 恥さらしの家なんじゃ? と、桜子は首を傾げた。


「でも、今回は『ご学友』って、名前も出ていなかったから大丈夫じゃない?」と、彬が言う。


「うん、ほら、あたしもかろうじて抱きついただけだったから。ハグって感じでしょ?」


「かろうじてなの?」


「だって、普通にキスしたくなるでしょ? 久しぶりに会えたんだし」


「よくとどまったね……」


「なんか、周りがうるさいことに気づいて。圭介もためらっちゃったみたい」


 彬とそんな話をしていると、母親が割って入ってきた。


「桜子、問題はそこじゃなくて、たぶんあちらの家の方で情報に制限かけたってこと。圭介くんの名前が出ないように」


「え、神泉で?」


「あんたと圭介くんがウワサになったら困るってことよ。それって、向こうは付き合いを認めていないってことでしょ」


「認めてはいないかもしれないけど、妃那さんとの婚約は強行しないってことになってるよ」


「つまり、そういうこと。邪魔はしないけど、応援しているわけでもない。向こうとしては圭介くんはまだ大事な跡取りなのよ。それを派手なことやって、勝手に名前を出されたら迷惑と思うのも当たり前でしょ?」


「ええー、それなら逆にどんどんウワサ流した方がいいじゃん。向こうも認めざるを得なくなるんだから。無理やり引き離したら、向こうの家の方が非情だって世間から叩かれるよ」


 薫子が明るく言う。


「圭介くんがそれでいいって言うならいいわよ。でも、家族に反対されて、家を追い出されるようにうちに来ても、圭介くんの将来に何の役にも立たないわ。神泉の名前がバックについているか、ついていないかでその先にかかる圭介くんの苦労はずいぶん違うんだもの。

 神泉の名をせっかく得られたんだから、それを捨てさせるのはもったいないわ」


 王太子との婚約が決まりそうな時、それを回避するための方法として、圭介と先に婚約してしまうことも考えた。父親には反対されたが、圭介も乗り気ではなかった。

 圭介自身はどうでもいいけれど、家の人がまず認めないと言っていた。


「そうだね」と、桜子は母親に同意した。


「そもそもあたしたち、みんなに祝福されるように頑張ろうって決めたんだもん。いろんなゴタゴタで目的地を見失っていたのかも。初心に帰らないとね」


「そういうつもりなら、向こうの心証を悪くしない方がいいってこともわかるでしょ?」


「うん」


「もうゴタゴタ、起こらないといいよねえ」と、薫子がつぶやく。


「薫子、やめてよー。もうこりごりなんだから」


「神泉家って神社の一族でしょ? 特別な儀式とかあって、今頃『二人が別れろー』とか呪いをかけてたりして」


「怖いこと言わないで! また変な人が寄ってきたらどうするの!?」


「まあ、でも、さすがに王太子以上に権力ある人はいないんじゃない?」と、彬が軽く言ってくれる。


「権力はともかく、しつこい人は世の中にはいっぱいいるからなあ……」


 晴れ晴れとした未来はまだ描けないことに気づいた。

次回、圭介は妃那の父親、智之から話があると言われて……。

そろそろ妃那と彬の関係もバレる頃?

二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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