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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-3 王太子が相手でも譲りません。~実践編~

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11話 ようやく会えた……けど

本日(2023/02/28)は、二話投稿します。


時間は少し戻って、圭介の方の話です。

 今朝、圭介は突然妃那から桜子に会いに行ってもいいと言われた。

 予定では3日後のはずだった。


「え? マジ!? 今すぐ会っていいのか!?」


「少し予定を早めてみたの。圭介が喜ぶかと思って」


 まだ3日もあると思っていたところが、突然今日になったのだ。

 それを喜ばなくて、何を喜ぶ。


「よくやった! おれはものすごくうれしい!」


 妃那の頭をわしわしとこすり、それからすぐに家を飛び出した。


 あと少しで桜子に会えると思うと、車の中でも運転手をせかしてしまう。

 ようやくの思いで病院にたどり着き、受付で桜子の病室を聞いたのだが、事務員の返事に「へ?」と、間抜けな声が出ていた。


「ですから、藍田桜子さんは家族のみの面会となっておりますので、ご両親の許可なく面会することはできません」


「ウソだろー……」


 圭介はくたくたとその場に座り込んでしまった。

 ここまで必死にやってきた分、一気に気が抜けた。


(いやいやいや、別にあきらめる必要はないんだから。ほんの少しガマンして待っていればいいんだ)


 どちらにしろ今日のニュースを見て、そう遅くないうちに家族もやってくるだろう。


 圭介はロビーで落ち着いて座っていることもできず、うろうろと徘徊(はいかい)していた。


「ダーリン」


 声をかけられて、圭介ははっと振り返った。

 そこには薫子が立っていて、まさしく救いの女神が現れた瞬間だった


「薫子! よかった、おまえがいてくれて。桜子に会いに来たんだけど、家族以外面会禁止って言われて、誰か来るのを待っていたんだ」


 はやる圭介とは裏腹に薫子の視線が冷たい。


「ねえ、ダーリン。どのツラ下げて桜ちゃんに会いに来てるの? 別れるって言ったのはダーリンの方だよね? 妃那さんを選んで、桜ちゃんを捨てたよね? 今さら何しに来たの?」


 薫子は計画を知らない。

 たまたま王太子に子供ができたことが発覚して、『じゃあ、それなら』的に戻ってきた図々しい元恋人にしか見えないだろう。


「すまん。おまえが怒るのも当然だよな。話をすると長くなるんだけど――」


「話を聞く必要はないよ」と、薫子はけんもほろろに言い放つ。


「いや、それでも……!」


「だって、知ってるもん。ていうか、さっき知ったばっかだけどー。ダーリンも一緒になってあたしたちをダマしていたんでしょ? ムカついたから、お返し。だから、さっきのは冗談」


 薫子はニッと笑う。


「じゃあ、その、桜子に会いに行ってもいいのか……?」


 恐る恐る聞いてみると、薫子は少し困ったような顔をした。


「桜ちゃん、あたしのせいで興奮させちゃって、今は鎮静剤で眠ってるんだけど」


「後にした方がいいか?」


「もちろん行ってあげて。眠り姫を起こすのは王子様の役目なんだから。目を覚ました時、ダーリンがいたら、桜ちゃん、きっと喜ぶよ」


 圭介はうなずいて、薫子の後に続いて桜子の病室に行った。


 特別室はホテルの部屋のように広々としていて、いたるところに花が飾られている。

 むせかえるような花の香りの中、桜子はベッドに静かに横たわっていた。


「桜子……」


 桜子の予想以上にひどい状態に圭介は涙が出た。

 ふっくらとした頬はこけてしまい、目の周りも隈取ったようにくぼんでいる。

 ぬけるような白い肌も、今は血の気がないだけで、ただ青白くくすんで見えた。


 口元に手をかざせば、静かな呼吸が感じられる。

 そっと頬に触れると、その温かさにほんの少しなぐさめられた。


 点滴だけの生活では栄養は取れても、筋力は落ちてしまう。

 掛け布団から出ている首も肩も元々華奢な感じだったのに、今はさらに細くなってしまった。


 圭介はベッドわきのイスに腰かけて、桜子の細い手を握った。


 ただただ逢いたくて、当然のように来てしまったが、こんな状態の桜子を見ると、ためらいを覚えてしまう。

 いくら計画とはいえ、ひどいウソで傷つけて、ここまで追い詰めてしまったのだ。


(なあ、桜子、謝ったらおれは許してもらえるのかな。まだおまえを好きだって言える資格、本当にあるのか?)

次話はこの続きの場面になりますが、桜子視点になります。

お時間ありましたら、続けてどうぞ!

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