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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-3 王太子が相手でも譲りません。~実践編~

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8話 圭介さんを笑顔にしたいそうです

本日(2023/02/21)、二話目になります。


圭介視点からスタートです。

 ここ数日、圭介には妙に妃那がまとわりついてくる。

 別に迫ってくるわけではないので困ることはないが、なんだか変な感じだ。


 最初は栄養ドリンク剤。それを勉強中に運んできた。


「圭介、これを飲んで。元気になるわ」と。


「は!? こんなん、おれに飲ませて、どこを元気にさせるつもりだ!? 襲わせようとしてるのか!?」


 警戒心バリバリで身を引くと、妃那は怒って頬をふくらませながら出ていった。


 その翌日、今度はクッキーを運んできた。


「圭介、少し休憩しない? お茶を持ってきたの。このクッキー、わたしが焼いたのよ」


 そう言われて、かなり驚いた。

 何でも使用人任せの妃那が自分でお茶を持ってくるなど、天変地異かと思う。


「マジで? なんでまた?」


 手作りクッキーとは、ずいぶん女の子らしいことをする。


「あ、わかった。彬に作ってやるつもりなんだろ。おれ、練習台? あいつ、いろんな女子からいっぱいもらってそうだからなー。おまえも頑張んないと」


 一つ味見をして、「うまい」と言ってやったのだが、妃那はやはり怒って出ていってしまった。


 その翌日の放課後、妃那が行きたいところがあるというので、どこに行きたいのか聞いたら、「富士山」だった。


「なにしに?」


「ご来光を拝みに」


「それ、元旦行事だよな? 1度は行きたいと思ってたけど、年末年始ならともかく、今から行くところじゃないだろ? ていうか、おれ、桜子からあんまり離れたところに行きたくないし」


「そうよね」と、妃那はあっさりと引いた。


 そんなこんなで、妃那のわけのわからない行動に振り回されて、気がまぎれることもある。

 しかし、妃那に何度桜子の様子を聞いても「大丈夫」、「問題ないわ」しか言ってもらえない現状、ただただ時間が過ぎるの願ってばかりの毎日だ。


 週末に中学時代の友達から遊びに行こうと誘われたが、そんな気分にはなれずに断ってしまった。


 月曜日に妃那に付き合ってもらいたいところがあると言われても、もう「いいよ」と答えてやる元気もない。


 そして、気づいたのだ。

 この1週間、妃那も彬に会っていないことに。

 桜子が入院中で彬も自由に動けないだろうし、そんな気分ではないのかもしれない。


 だから、圭介にかまってほしくて、わけのわからないことを始めたのだ。


「おまえもつらかったんだな。彬に会いたいなら、おれに遠慮せずに会ってきたっていいんだぞ」


 やさしく言ってやったのに、妃那は無言でにらんできた。


「ええ、そうするわ」と。


(……マジで、天才の考えることは凡人にはわからん)




 *** ここから彬視点です ***




 彬が1週間ぶりにホテルに呼び出されたのは、そろそろ計画が動くころだからだと思った。

 毎日桜子の様子を見に行っていたのだが、いつ呼ばれてもいいようにはしていた。


 ――が、部屋に着くや否や、妃那は怒りだした。


「やっぱりどれも失敗したわ!」


「あー、そっちの計画?」


「成功率1%未満の計画なんて、絶対にうまくいかないのよ。どうして、こういう時に限って、圭介はわたしの計画を失敗にしてくれないの!?」


「やっぱ、ダメだったんだ……」


 そして、怒りに任せて、そのまま襲われた。


 さすがに桜子の弱っている姿を見続けて、このところはそんな気にはなれなかったが、今日、桜子が少し話をしたという朗報が彬を元気にさせてくれた。


 おかげで、妃那から呼び出された時も、思わずいそいそと出かけようとして、薫子ににらまれた。


「へーへーへー、彬くん。桜ちゃんよりHが優先なんだー」


 計画のためとも言えず、そっちの目的がないわけでもないので、彬は開き直るしかない。


「いいだろ。たまるものはたまるんだから!」と、恥も外聞もなく叫んでいた。


 そういう男の生理現象はさすがの薫子にも理解できないらしく、ふんと鼻を鳴らして去っていった。

 たまっていたのは実際ウソではないので、薫子にも疑われずに済んだのかもしれない。




 1週間ぶりにすっきりしたところで、ようやく計画のことを思い出した。


「これから、何かすることあるの?」


 隣で横たわっている妃那をちらりと見た。


「ないわ。やることは全部終わっているから」


「なんだ。それで呼ばれたのかと思ったけど」


「性欲発散したかっただけよ。彬は桜子のそばにいたかったの?」


「これまではそうだったけど、姉さんが今日ちょっと話したらしいから、ちょっとくらい離れてもいいかなと」


「何を?」


「なんか、花を毎日届けてくれる人がいて、誰が持ってきているのか知りたがったんだって。薫子が言ってた」


 妃那はぎょっとしたように目を見開いた。


「まさか、圭介だったの?」


「違ったって。姉さん、がっかりしてまたふさぎ込んじゃったけど。とりあえず、普通に会話ができたみたいだから、ちょっと安心」


「なら、よかったけれど」


「今日、病院に行く日だっけ?」


「時差があるから今夜よ」


「そっか。じゃあ、もう少しなんだ」


「ねえ、それより、わたしはどうしたらいいの?」


 妃那はそんなことはどうでもいいとばかりに圭介のことを聞いてくる。


「教えてあげれば? 姉さんがしゃべったって」


「そんなことで笑ってくれるの? またふさぎ込んでいるのでしょう?」


「そう? 圭介さん、きっと心配してるだろうから、ちょっとでもそういうことを聞いたら安心するよ。僕たち家族もそうだったし」


「何度も大丈夫だと言ったのに、信用がないのかしら」


「そうじゃないよ。具体性がないから、漠然(ばくぜん)と不安になっちゃうんだよ。

 僕だってそばで姉さんを見ていて、このまま一生しゃべらないんじゃないかとか、眠ったまま目を覚まさないんじゃないかとか、いろいろ考えちゃうし。

 様子もわからなかったら、余計に悪い方へ悪い方へ考えちゃうものだよ」


「そうなの? では、わたしは桜子がどういう状態にあるか、詳しく話してあげればよかったのかしら」


「まあ、今まではどうかとも思うけど。あんな姉さんの状態を聞いたら、取り乱しちゃいそうだし。

 でも、これはいいことだから、言ってあげた方がいいと思うよ」


「わかったわ。彬がそう言うのなら試してみる」


 その夜、寝るころになって妃那から届いたメッセージは一言、『圭介が笑った』だった。

 妃那がどれだけ喜んでいるかと思いながら、久しぶりに彬もぐっすりと眠れた。

特に何をする計画ではないのですが、いよいよ終盤。

なのに、予定外の出来事に彬がアタフタ……。

次回も二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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