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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-3 王太子が相手でも譲りません。~実践編~

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7話 バラの花をありがとう

本日(2023/02/21)は二話投稿します。


圭介視点でスタートです。

 その日の放課後、圭介はいったん妃那と家に帰ってから、再び車を出してもらって桜子の入院している病院の正門前に停車してもらった。


 これ以上は近づけないので、木立の向こうに見え隠れする建物を車の中からを眺めるだけだ。


 何もしてはいけないと言われながら、どうしても居ても立ってもいられず、少しでも桜子の近くに来たかった。


 王太子が見舞いに来て去った後のせいか、報道陣がちらほら見えるだけ。

 診察も終わっている時間なのか、辺りは静まり返っている。


 車の運転席が開いて、出かけていた運転手が戻ってきた。


「言われた通りにしましたけれど。私でよかったのですか?」


「うん、いい。ありがとう。あなたの仕事ではないのに」


「いえ、このくらいは」


「じゃあ、家に帰るよ。家庭教師が待ってるから」


 圭介は見えなくなるまで窓から病院を見送った。




 *** ここからは桜子視点です ***




 桜子は毎日覚醒と睡眠を繰り返していた。


 いつの間にか眠って、いつの間にか起きる。

 目が覚めてもぼんやりとしていて、まるで夢の中にいるようだ。

 だから、泣きたいと思っても、涙も出てこない。


 みんなが励まそうと話しかけてくれるのは聞こえている。

 (しかばね)のようにこうして寝ていれば、いずれ王太子もあきらめる。


 そう思うと、誰の声にも応えたくなかった。

 あえて動く気にもなれなかった。

 そもそも自分の身体すら重くて、指一つ動かすのも億劫(おっくう)なのだ。


 今日も薫子がやってきて、かいがいしく桜子の世話を焼く。

 身体を拭いたり、あちこちマッサージしてくれたり、桜子が答えなくても元気に話しかけてくれる。


「ねえねえ、桜ちゃん。今日で7本目。ラッキーセブンだよ。いいことあるかもしれないよ」


 薫子は毎日1本ずつ届く赤いバラの花の話をしているらしい。


「1週間も毎日通ってくれるなんて、よっぽど桜ちゃんのファンだよね」


(1週間、毎日……)


 いろいろな人から花は届いている。

 病室はむせかえるくらいの花の香りに満ちている。


 王太子も見舞いに来た日、会うことはなかったが花を置いていったらしい。

 それきり花をもらった話は聞かない。


 そんな中で毎日花を届けてくれる人など、そうそういない。

 しかも、毎日たった一本ずつ。

 面倒なことをしてまでそんなことをする人がいる。


(もしかして、圭介……?)


「誰から……?」


 桜子は思わず聞いてしまった。


「桜ちゃん、しゃべった! 誰からか知りたいの? あたしが聞いてきてあげるよ。もしかして、桜ちゃんの知ってる人かもしれないよ!」


 薫子は桜子が声を出したことがよほどうれしかったのか、キャッキャと笑って部屋を飛び出していった。


 それからしばらくして、薫子はがっかりしたように戻ってきた。

 その顔を見て、桜子の期待している答えは返ってこないと知った。


 薫子もきっと期待していたのだろう。

 それが圭介からだったら、桜子が元気になると。


 桜子がじいっと見つめていると、薫子は慌てたように笑った。


「なんかねえ、けっこう歳のいったおじさんだって。桜ちゃんの知ってる人かなー」


「……今度来たら、名前を聞いてもらって。お礼を言いたいから」


「うん、わかった。お願いしておく。きっと明日も来てくれるだろうから。でも、桜ちゃん、少しは元気になった?」


 桜子はかぶりを振って目を閉じた。


 バカなことを考えたと思った。


 圭介に気持ちが残っていたら、こんな状態の桜子を放置しておくわけがない。

 たとえ、気持ちが残っていたとしても、本気で別れたのだ。


(だから、何だっていうの? 圭介はあたしのものなの。誰にも渡したりしないよ)


 そう、今はこのまま王太子との婚約が白紙に戻ればそれでいい。

 その後はどんなことがあっても圭介を取り戻す。

 妃那なんかと婚約させたりしない。


 桜子はこっそりと笑った。


(あたし、いつの間にか元気になってる。ラッキーセブンのおかげかな?)

偶然にも7話目のお話でした♪

次話は圭介を笑顔にしようと頑張る妃那の話になります。

よろしければ、続けてどうぞ!

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