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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-2 王太子が相手でも譲りません。~計画編~

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201/320

12話 成功率99.1%の計画

本日(2023/01/31)、二話目になります。

「『王太子を殺す』以外に、使える選択肢はないの?」


 彬はようやくショックから立ち直って、妃那に聞いてみた。


「一応、目的の中に圭介のわたしへの好意を追加したものも試しに作ってみたのだけれど、日数がかかるから、あまりお勧めできないのよ」


 妃那はそう言って、困ったように小さくため息をつく。


「日数かかってもいいから、とにかく誰も死なない奴で!」


「では、このバージョンかしら。死者ゼロ、重軽傷者1200人。

 あら、意外と日数がかからないわ。5日ですって」と、妃那は目を輝かせる。


「ねえ……冗談言ってる? 死ななくてもそんなにケガ人がいたら、同じことだと思わない?」


「誰も傷つかない計画なんて、見たことがないわ」


「じゃあ、せめて軽傷者のみ」


「わかったわ。オートで条件から作ってみる。軽傷者のみで、日数は問わず、目的変更なし。

 あとは何か付け足したほうがいいかしら?」


「犯罪関係一切なしで」


「そんな計画、出てくるかしら。この辺りの条件、全部使えないのに」


 妃那は首を傾げながら画面をタッチしていく。


(いったいそこに、どれだけの犯罪が入ってるの……?)


 自分と歳の変わらない少女の横顔を見つめながら、彬はぶるりと震えてしまった。


(……ていうか、このこと、圭介さんに言っておいた方がいいんじゃないか? きっと、僕の手には負えないよ)


「あら、驚いた。1件作れたわ」と、妃那は彬を振り返った。


「え、ほんと?」


「その代り、所要時間30日」


「いい、それでいい。どんなのか見せて」


 妃那はうなずいて見せてくれた。


 画面に映し出される場所は民家、ラステニアとなっているが、家の中で人がウロウロしているだけで何も起こらない。

 ポップに書いてある名前を見ても、当然知らない人たちだ。


「30日となると、動きがあまりないわね」


「早送りできないの?」


「できるわ」


 2日目、3日目となっても何も変わらない。


「ねえ、この人は誰。ずっと動いているってことは関係者だよね?」


「王太子の元恋人よ」


「へえ。やっぱ、そういう人がいるんだ」


「あ、病院に行ったわ、10日目。

 これは両親ね。女性と一緒に王宮に行くわ。それが12日目。

 あら、おかしいわ。どうしていきなり王太子のところへ画面が……。

 王太子、緊急帰国。どうしてかしら。

 桜子が圭介の家を訪ねていくわ。

 抱き合ってハッピーエンド、圭介がわたしの頭を撫でているわ。

 終わり?」


「……終わりみたいだね」


「つまらないわね」


「面白い話をつくりたいわけじゃないんだよねー?」


「成功率、あら、すごい。99.9%。残り0.1%は……王太子が桜子を連れて逃亡?」


「被害者は?」


「1名。桜子だわ」


「ちょーっと待ってよー! それじゃ、何の意味もないじゃないか!」


「でも、軽傷よ。待って、詳細を見るから。

 桜子、3日後に入院ですって。原因は摂食障害」


「……それって、姉さん、ショックのあまりご飯を食べないで入院ってこと?」


「そうね。でも、これは使えるのではないかしら。要は時間稼ぎをしたいわけでしょう」


「20日後に王太子が帰国するから?」


「そう。ほら、この部分を『仮病』に変えると、成功率は下がって90%まで落ちるけど、軽傷者もゼロ」


「失敗の10%は?」


「『仮病発覚』はわかるけれど、『桜子脱走』が失敗原因って何かしら?

 ああ、仮病ということは元気だから、こっそりと圭介のところへ行ってしまうと、やはり失敗するのね」


「それくらいならいいんじゃない?」


「失敗したら、またやり直しよ? 成功率をさらに上げる方法はあるわ」


 妃那は画面に集中し、恐ろしい勢いでタッチしていく。

 彬は隣で見ていたが、あまりに画面の内容がぱっぱと変わるので、ついていけない。


「ちなみに、王太子はなんで緊急帰国するの?」


「最初に出てきた女性、妊娠していたのよ」


「王太子の子?」


「そう。一夫一妻制になっているから、王太子にすでに子供がいるとなれば、元恋人でも無視できないでしょう。当然お妃候補となる。だから、王太子は桜子との婚約を破棄して帰国となる」


「そんなにうまくいくものなの? 王太子がそれを知っても、認知しなかったらそれまでじゃない? 最悪、人知れず抹殺されちゃったりとか」


「被害者ゼロなのだから、それはないということよ。

 それに30日間、何もしないという計画ではないのよ」


「何するの?」


「今、最終盤を出すわ。もう少しでかなりいい計画ができそう」


「じゃあ、待ってる」


 よし、と妃那は顔を上げた。


「画面はほとんど変わらないから、簡単な流れを言うと、向こう2日、桜子には部屋にこもっていてもらって1日早く入院に変更。

 10日後の女性の妊娠発覚。

 12日の王宮への連絡までは、正式婚約をしない。

 どの道、入院状態では強行できないでしょう。

 王太子に連絡が入って、帰国するのは20日後。

 桜子はいきなり退院できないから、30日後に退院。

 以上。

 成功率99.1%。失敗する要因は……あら、彬が原因ね」


「え、僕!?」


「この計画、桜子に知られたら失敗してしまうのよ。

 唯一あなたが桜子のそばにいて、1番うっかり口を滑らせてしまう可能性が高い」


「どうして姉さんに内緒にしなくちゃいけないの?」


「圭介とうまくいくとわかったら、元気になってしまうでしょう。

 王太子が帰るのを待つだけだと思えば、ご飯をモリモリ食べて、健康そのもの。

 それでは、婚約の話が逆に進んでしまうわ」


「ねえ、その計画で姉さんがひどい病気になるとか、そういう可能性はないの?」


「ないわ。入院させておけば、少なくとも家にいるよりケアしてもらえるから、病院で症状が悪化することもないでしょう」


「でも姉さん、1か月も入院なんて……」


「王太子が帰ってからは回復期間なのだから、実質20日弱。

 圭介にも会えるし、じきに回復して、問題はないでしょう」


「ほかに失敗要因は?」


「ないわ。圭介が知ったところで桜子に会えるわけでもないし。

 あまり人の動きがないのが、この計画の成功率の秘訣。

 つまり、彬。この計画の成功はあなたにかかっているの。

 1か月後、桜子の元気な笑顔が見たいと思ったら、心を鬼にしてガマンすること」


「それ、当然、薫子にも黙っているんだよね?」


「もちろん。あの子の存在は大事なのよ。ことを大げさにしてくれるから。

 元気のない桜子の代わりに婚約阻止しようと、あの手この手で頑張るでしょう。

 ウソの演技もさすがに10日は続かないでしょうから。

 要はそれぞれの個性も計画に入っているのだから、彬は他言無用ということよ」


「わかった。僕の命にかけてこのことは黙ってる」


「あと、必要なことはおいおい教えるわ。あなたもやることがないわけではないのだから」


「え、そうなの?」


「こまごまとしたことがあるもの。家に出入りできて、桜子の近くにいられるあなたが1番使いやすいでしょう?」


「それは、うん、望むところだけど。姉さんのために何かできるなら」


「では、ここから計画スタート」


 妃那はタブレットのスタートボタンを押すとベッドの脇に放り投げ、彬の首筋に抱きついてきた。

次回はこの続きで家に帰った彬の話になります。

さっそく薫子に問い詰められるわけですが……。

二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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