表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-2 王太子が相手でも譲りません。~計画編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

195/320

6話 そもそもの『計画』の始まり

本日(2023/01/20)、二話目になります。

 電話が切れて、彬は妃那をジト目で見た。


「これ、何の茶番?」


「その前に彬、電話をかけてくれないかしら?」


「誰に?」


「薫子に。今夜のパーティに桜子と一緒に同席するように」


「あいつ、パーティ嫌いなんだけど」


「知っているわ。まあ、どうしてもイヤだというのなら、仕方ないけれど」


「何のために? あいつ、理由を説明しなくちゃ、動かないよ」


「桜子が心配なら、パーティには出席した方がいいとでも。わたしが言っていたと言えば、行くのではないかしら」


「まあ、いいけど。後でちゃんと説明してくれるなら」


「わかったわ」


 彬は自分のスマホを取って、妹に電話をかけた。


「あ、薫子? 僕だけど」


『なに、お楽しみ中じゃないの?』


 開口一番これだ。


(どうしてこの妹は、かわいくないのかな!?)


「なんかさあ、今夜のパーティ、おまえも行った方がいいって言ってるんだけど」


『神泉妃那が? 何のために?』


「僕にもよくわかんないけど、姉さんが心配ならその方がいいって」


『彬くん、その辺りのことをちゃんと聞いてくれないと、有益な情報にならないじゃない』


「だから、あの人相手にそれは無理だって。だいたいおまえに探りを入れるように言われてたことまで、バレてるんだよ」


『つまり、あの人がそう言ってきたってことは、何かの企みの一つってことでしょ。そんなことに乗っかってどうするの?

 あの人の都合のいい方向に流されちゃうだけじゃない。誰がそんなことするもんですか』


「そうかもしれないけど……。最近の姉さんを見ていると僕も心配だし、一緒に行った方がいい気がして」


『自分で行けばー? 心配しながら、なにHなことして楽しんでるの?』


「僕が行っても大したことできないし。何かあるのなら、逆におまえが姉さんのそばにいる方が、まだマシじゃないかと思ったんだけど」


『……わかった。考えてみる』


 彬は電話を切って、「これでいい?」と妃那に聞いた。


「あなた、薫子一人動かせなくて、本当に使えないわね」


「あのねえ……。薫子の扱いは難しいんだよ」


「まあ、いいわ。どちらでもよかったし」と、妃那はあっさり言ってくれる。


「ええー……。どっちでもいいなら、わざわざ行かせなくても」


「保険はかけておいた方がいいでしょう?」


 このことがどう保険になるのかはわからないが、今は先ほどの電話の話の方が気になる。


「説明してくれるって言ったよね? さっきの電話、なんだったの?」


「全部説明しなくちゃいけないのかしら?」


「じゃあ、ピンポイントで。なんでわざわざ姉さんと別れさせるのか聞きたいんだけど。

 二人を元通りにするんじゃなかったの?」


「そうよ。だから、計画していたのに、圭介に桜子を選ばれてしまったら困るもの」


「うん? それでよくない?」


「わたしが死んでもいいの?」と、妃那は真顔で聞いてくる。


「いいとは言わないけど、それくらい悪いことをしたって、納得してもいいことだったりする」


「でも、あなたはわたしがいなかったら生きられないんでしょう? 幸せな桜子を見ていて、平気でいられるの?

 幸せをぶち壊してでも自分の欲望を叶えて、一人で死んでいくことを選んだりしない?

 それはわたしの中で100%起こりうることだと判断したから、回避したのよ」


「……ねえ、つまり、君は僕に死んでほしくないの?」


 自分本位な妃那が彬のことを考えているとは思ってもみなかったので、かなり意外だった。


「違うわ」


「ええー……。じゃあ、死んでもかまわないってこと?」


「バカなの? わたしが死んではいけないという意味よ」


(どう違うかわかんないんだけど……)


「それはともかく、この計画立てた時、圭介さんが手に入らないなら、死んでもかまわないって思ってた?」


「そうね。圭介と幸せになりたかったから、確率は最小限に抑えたけれど」


「今は死んではいけないって思ってるってことは、もうそんなことは思わないんだよね?」


「そうね。あなたがそう言ってくれたから」


「別に僕は君に死ぬなって言ったわけじゃないんだけど……。必要だって言っただけで」


「同じことよ」


 相変わらず微妙なニュアンスが伝わらないらしい。


(けどまあ、この人が死ぬ可能性がそこまであったなんて知らなかったから、必要だって言われたら、死ぬなってことになるのか)


 納得、と彬はうなずいた。


「わたしね、一度死のうとしたのよ」


「え……」


「それを止めたのが圭介だったの。

 圭介はいっぱいやさしい言葉をかけてくれて、生きるように言ってくれた。死んでほしくないって言ってくれた。

 正直、わたしはどうでもよかったけれど。そうでなければ、死を選んだりしないものでしょう?

 だから、圭介が死んでほしくないというのなら、圭介のために生きてあげようと思ったの。

 なのに、圭介は桜子に夢中で、わたしのことをないがしろにする。ウソをついてまで、桜子とコソコソとデートする。わたしが欲しいものは何一つくれない。

 全部桜子がいるせいだとわかったから、計画を立てたのよ」


「自分の命をかけて?」


「大げさね。そもそもかけるほど大した命ではないもの。

 それに、計画が失敗したら、お兄様の遺言も守れるという甘い誘惑もあったわ」


「お兄さんって、もしかして自殺した人……?」


「そう。お兄様はわたしに神泉の血を根絶やしにしてくれと頼んで、窓から飛び降りたの。

 だから、議会派には会社の名前でお金を送ったわ。そして、わたしが首謀者であることがわかるように情報をあちこちにちりばめて流しておいた。

 計画が失敗した暁には、神泉で1番濃い血を持つわたしを含め、神泉の名は消える。

 あなたの父親、うちの会社が欲しそうな顔をしていたから、藍田の傘下にでもなっていたことでしょう。

 お兄様の遺言はそうして完結するの」


 妃那は「どう、美しい計画でしょう?」と笑った。


 その笑みは電話口で見たあの狂気が思い起こされる。


 その狂気の出どころがようやく彬にもわかった。


 すべては、その亡くなった兄だったのだ――。

次回もこの続きの場面になります。

第3&4章からの伏線を回収しながらの話になりますので、なかなか本題に戻って来られません……。

ゆっくりお付き合いいただけると幸いです。

二話同時アップ、お楽しみに!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ