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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第5章-1 王太子が相手でも譲りません。~説得編~

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1話 元通りの学園生活はどこに行った? 

第5章スタートです!


圭介視点になります。

 月曜日、学校に来ると言っていた桜子は、ホームルームの始まるギリギリの時間に教室に飛び込んできた。


「おはよう」と、みんなに笑顔であいさつをしている。


 1週間ぶりの登校。

 しかもその間、世間で1番話題の人だった桜子は、あっという間にクラスメートたちに取り囲まれて、質問攻めにあっている。


 それでもにこやかにかわしながら、真っ先に圭介のところにやってきた。


「おはよう、圭介」と、まぶしいくらいの笑顔を見せてくれる。


 おととい、桜子の両親が急に帰って来た後は、結局二人が出かけるまでは話らしい話もできなかった。

 もちろん、見つからないように静かにしていたこともあったが。


 おかげで、なんだかイロイロ中途半端なまま気まずい感じで、圭介はコソコソと帰ることとなった。


 改めてこうして学校で顔を合わせることになったが、桜子はいつもと変わらない様子だ。


 圭介はほっとしながら「おはよ」と返した。


「遅刻ギリギリか?」


「遅刻はしてないよ。編入生を校長室に案内したりしてたから」


「編入生? こんな時期に?」


「ほら、例の王太子様」と、桜子はうんざりしたような顔をする。


「王太子って、ラステニアの?」


「そう。ニュース見てない? おとといの夜、急に来日したの。で、今日から学校」


 王太子との結婚問題は解決したと聞いていたので、それきりニュースなど見ていなかった。

 昨日1日はそんなヒマもなかったということもあるが。


「うちの学校に通うのか? まさか、このクラス?」


「そのまさかだよ。そこにまた机が増えてるよ。このクラス、すでに定員オーバーなのにねえ」


 そう言って桜子が指を差したのは、彼女の席の横に置かれた机とイスだった。

 圭介の隣と同じく、通路がふさがっている。


「で、なんで桜子が案内してるんだ?」


「それはうちが王太子を受け入れるホスト役だから。お父さんの仕事なのに、あたしまで引っ張り出されるとは思ってもみなかったよ」


 おとといの夜に来日したということは、桜子の両親が急に北海道から戻ってきたのは、王太子を迎えに行くためだったらしい。


 もう少し遅かったら、完全に最中に乗り込まれるところだった。


(ある意味、セーフだった?)


 そんなところを見られたら、メンタルやられて、一生できない身体になっていたかもしれない。


 とはいえ、せっかくの機会を棒にふった事実は変わらない。


(……ていうか、まさかまたこいつの仕業か? 桜子とそういう関係にさせないようにって)


 圭介は隣でスマホを見ている妃那をチラリと見やった。


(これがマジだったら、さすがのおれも怒るぞ)


 あとちょっとのところでお預けにされた恨みは、そう簡単に消えるものではないのだ。


 おまけに――


「おまえにご執心の王太子様が、学校にまで来るのかよ……」と、ぼやいてしまう。


 今日からは再び元の楽しい学園生活に戻ると思っていたのに、どう考えても圭介の期待するようなものにはならない気がした。


 話に切れ間ができたせいか、ここぞとばかりにクラスメートが桜子を囲んでくる。


 王太子がクラスメートになると聞いて大騒ぎだ。


「それで、桜子さん、内戦が収まったら、王太子と一緒に帰国するんでしょう?」

「晴れてお妃さま。素敵だわー」


(はい? なんか、話が違くないか?)


 圭介は首を傾げた。 


「もう、みんな、何を言っているの? その話はお断りしたのよ」と、桜子がホホっと笑いながら言う。


「それは内戦中で危険だからでしょう? だから、王太子の方にまず来てもらったって。新聞もニュースもみんなそう言ってたわ」


「そもそも断る理由がないじゃない。ラステニアは小国とはいえ、もともと豊かな国で、国が安定さえすれば、その辺りの企業の社長よりずっとお金持ちの王子様でしょう?」


「お父様の会社との取引も始まるから、会社の業績も上がって、いいこと尽くしじゃない」


「その取引は結婚とは関係なくされるものだから、別にわたしが結婚する必要はないのよ」


 そう答える桜子の笑顔がかすかに引きつっているように見える。


「ええー!? でも、普通に素敵じゃない。王太子っていってもチンチクリンだったりするのに、セレン殿下は超イケメンでしょう?」


「そうそう。気品があって、金髪で、アメシスト色の瞳がきれいで……。物語に出てくるような王子様そのものじゃない」


「白馬が似合いそうよねえ」


「あー、ほら、先生たちが入ってきたわよ」と、話をそらすためか、桜子が言った。


 圭介も入口に視線を向けると、確かに担任と一緒に新聞やテレビで見たラステニアの王太子が入ってくるところだった。


 教室は一気に女子の黄色い声であふれかえる。


 それも納得がいくのは、王太子は新聞で見るよりずっと整った彫りの深い顔立ちで、頭は小さいし、背は高いし、足も長い。

 サラサラの金髪に色白の肌、大きな薄紫の瞳がどこか(うれ)いを感じるミステリアスな印象を与える。


 学校の制服を着ているが、同じ制服でここまでの気品を漂わせる男は、この学校で見たことがない。


「みんな、静かにー」


 担任が手を叩いて教室を静まらせるが、その彼もいつになく緊張した面持ちで、よく見ればかすかに震えている。

 いきなり国賓(こくひん)が自分の担任する生徒になってしまって、戸惑いを越して恐ろしいのかもしれない。


 教室が静まってから、担任がセレン殿下を紹介し始めた。


 歳は19。

 普通なら大学に行く歳なのだが、日本語が不慣れなため、滞在中はこの青蘭学園に通うことになったそうだ。


 とはいえ、「皆さん、こんにちは」とあいさつした王太子の日本語はかなり流暢(りゅうちょう)で、日常生活には何の問題もなさそうだ。


(どう考えても、桜子がいるからこの学校に来たんだよな……。しかも、わざわざ同じクラスで)


 桜子の隣の席に座る王太子を見て、圭介はため息をついた。

次話はこの場面の続きになります。

前日に王太子の来日レセプションに出席した桜子の回想が入ります。

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