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12話 藍田家2度目の訪問は桜子のお出迎え

圭介視点です。

 源蔵の部屋を出た後、圭介は妃那の部屋をノックしたが、出てきたのはやはり和代だった。


「妃那は?」


「先ほど出かけられましたけれど」


「は? 遊園地とか言ってなかった?」


「いいえ。大旦那様のところから戻ってきて、ずいぶん不機嫌そうなご様子で……。

 それからすぐに支度をしてゆかれました」


「どこへ行ったんだ? 一人で?」


「さあ。どこともおっしゃっていませんでしたが」と、和代は頬に手を当てて首を傾げる。


「まあ、いいや。こっちで連絡取ってみるから」


 自分の部屋に戻ってから妃那に電話をかけると、すぐに応答があった。


「妃那? どこにいるんだ?」


『車の中よ』


「遊園地はいいのか?」


『今日はそういう気分ではなくなってしまったの。勝手にキャンセルにしてごめんなさい』


「それはいいんだけど。時間も時間だし。またにしようって言おうと思ってたんだ。

 それで、どこに行くんだ?」


『人に会ってくるわ』


「そう? おれも出かけるから、また夜にでも」


『わかったわ』と、電話は切れた。


(……()って誰だ?)


 最近、妃那は放課後どこかに寄ってくることが多い。

 圭介がまっすぐに帰ると、妃那の方が後から帰ってくる。


 何をしていたのかを聞いたら、『車で遠回りをしてきた』と言っていたので、帰りにドライブでも楽しんでいるのだろうと思っていた。


 が、先日桜子と話していたことと、どうもかぶることに気づいてしまった。


『最近、彬にカノジョができたみたいなんだよー。帰りにしょっちゅうデートしてるみたい』


『相手は?』と聞いてみたが、桜子は教えてくれないと言っていた。


(……彬と会ってるのか? まさかなぁ)


 女子にモテまくりの彬が精神年齢3歳児の妃那をわざわざ相手にするとは思えない。

 それに妃那も圭介以外、人を人とも思っていないところがある。


 そんな二人が仲良く話しながら歩いているところなど想像できない。


 組み合わせとしてあまりにありえなさ過ぎて、圭介はぷっと吹いてしまった。


(さて、そういうことなら、心置きなく桜子のところに行くかなー)


 圭介は財布とスマホだけ持って、藤原に車を呼んでもらった。


 ふと気づくと薫子からメッセージが入っている。


『お土産はダーリンの家の近くの『アンジェ』のレアチーズケーキがオススメだよ』


 ごていねいにサイトまでつけてくれている。


(自分へのお土産をオススメするのか……?)


 薫子は相変わらずだ。


 おかげで手ぶらでお昼をごちそうになるのもどうかと気づいたので、運転手に言って薫子お勧めのケーキ屋に寄ってもらった。


 ほしいものを買っていけば喜ばれるのは間違いなしなので、逆に提案してもらえて助かったのかもしれない。




 桜子の家の裏門で車から下りる時、辺りを見回してみたが、記者らしき人はいなかった。

 正門の方にいるのかもしれないが、この辺りはしんとしている。


 そのまま門のインターホンを鳴らすと、「いらっしゃい」という桜子の声と同時に自動で開錠された。


 短いアプローチを進み、勝手口まで来た時にはパタパタという足音が聞こえて、桜子がドアを開けてくれた。


「圭介!」と、桜子が勢いよく胸に飛び込んでくるので、ケーキの箱を落っことしそうになる。


 その背後にいた薫子がタイミングよく受け取ってくれたので、圭介もぎゅうっと桜子を抱きしめることができた。


「会いたかった」

「やっと会えたー」


 薫子がケーキの箱を持って家の奥に姿を消してくれたので、このチャンスは逃せない。


 圭介が抱きしめる力をゆるめて桜子の頬に手を触れれば、目を閉じた彼女の顔は目前。


(これは許可を求める必要はないわけで……)


 初デート以来の2回目のキス――。


 唇が離れた後の桜子の少し恥ずかし気な表情に、圭介の頭の中はとろりと溶けてしまっていた。


(これは幸せすぎる……!)


「あ、ええと、上がって」と、桜子が思い出したように言うのもかわいらしい。


「ご飯はもうできているよ。といっても、お昼だから簡単にカレーチャーハンなんだけど」


 家に入って、圭介を居間に案内しながら桜子が言った。


「おお、久しぶりかも。神泉の家に行ってから、普通の家庭料理食ってないから。

 母ちゃんのチャーハンがなつかしい」


「お母様、もうお料理しないの?」


「しないなー。家事一切、当たり前のように全部人に任せきり。

 あの家行ってから、ようやく母ちゃんがお嬢だったってわかったよ……。

 人を使うことにものすごく慣れてる」


 圭介が言うと、桜子は笑った。


「前のお母様を知らないから何とも言えないけど、あたしが会った時はいい家の奥様って感じだったよ」


「そう? ようやくいろいろ落ち着いたし、近いうちに改めて桜子を母ちゃんに紹介しないとな」


「しょ、紹介って……。どうしよう。なんか今からドキドキ緊張しちゃうよ」


 桜子は赤い顔をして目をきょときょとと泳がせる。


(や、ヤバい。こういう顔もめっちゃかわいい! おれ、こんなカノジョを親に紹介できるのかー!)


 圭介は幸せすぎて完全に顔が崩れてしまっていた。

次話、この続きの場面になります。

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