表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第4章-3 ロミジュリ展開、お断りします。~子離れ編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

163/320

7話 お父さん、お疲れさまです

桜子視点です。

 父親からこれから帰ると連絡があって、桜子は弟たちと一緒に寝ないで待っていた。


 この1週間、どうなったか聞こうと父親に電話をかけても留守電。メッセージを送っても既読スルー。

 完全に音信不通だった。


 それがようやく帰ってくる。


 疲れているだろうことは想像できたが、まず話を聞かないことには眠れそうもない。


 深夜直前、裏の勝手口が開く音がして、兄弟3人で居間を飛び出した。


「お父さん!」

「お帰り!」

「やっと帰ってきた!」


 口々に桜子たちが叫ぶと、父親は疲れた顔に笑みを浮かべた。


「ただいま。みんなに出迎えられてうれしいな。あれ、華は?」


「え、お父さん、知らないの? お母さん、おとといから出張に行ってるよ」


 桜子が答えると、薫子も続ける。


「そう。こんな家にいるくらいなら、全国視察でも行ってた方がいいって」


「ウソだろー!? さっき電話した時、家にいたんじゃないのか!?」と、父親はショックを受けている。


「今夜は北海道にいるみたいだよ」


「『子供たちに久しぶりに会えるから、楽しみでしょ』って、そういう意味なのか……。

 おれ、1週間以上華に会えなくても頑張ったのに。この瞬間だけを楽しみに過ごしてきたのに……。

 それで、いつ戻るって?」


「来週末とか言ってた」


「おれ、休暇取って、追いかけてもいい?」


「仕事がないならいいんじゃない? ていうか、そんなことより、お父さん、役員会議の決定は!? どっちになったの!?」


「そんなことって……。おれにはすごい大事なことなんだけど。

 ええと、とりあえず座ってからでもいいか? 実はさっきから立ちっぱなしで……。

 あとお茶くらい入れてもらえるとうれしいんだけど」


 みんな、おれがオジサンってわかってるのかなー、と父親はボソボソとつぶやいていた。


「お茶でいいの? ビールは?」


「お茶でいいよ。今、酒飲んだら、話の前にひっくり返る」


「じゃあ、話が終わるまでお酒はお預けだね。今、お茶入れるから、居間で待っていて」


 薫子と彬が父親のカバンを持ったり、上着を預かったりとかいがいしく世話を焼いている間に、桜子はキッチンに行った。

 寝る前なので、カモミールのハーブティにする。


 桜子は怒涛(どとう)の勢いで用意して、ちゃぶ台の前に陣取った。


 彬と薫子に先に話を始められたらたまらない。


 そわそわと話を待っている桜子たちにおかまいなく、父親はお茶をすすってほっと息を吐いている。


「ああ、生き返る……」


「で、で、お父さん、そんなにのんびりしているところを見ると、ラステニアとの取引は反対で可決されたってことでいいのよね!?」


 桜子が勢い込んで聞くと、父親はとぼけたように「うん?」と首を傾げた。


「ああ、最初の役員会議の議案? あれはうやむやになって最終決議は取らなかったんだ」


「うやむやって何? つまり、どうなったってこと?」と、桜子の方が首を傾げる番だ。


「そもそも最初の役員会議で緊急動議で上がったのは、ラステニアとの取引をするかどうかの1点のみ。

 その裏にはおまえの結婚が含まれていたわけだけど、決は半々に割れて次回に持ち越し」


「その話は知ってるよ。お母さんに聞いたから。その後どうなったかを聞いてるの」


「順を追って説明すると――」と、父親は丁寧に説明してくれた。




 藍田家がラステニア王室と姻戚関係があるといっても、桜子の曽祖父が日本に留学中に曽祖母と出会い、半ば駆け落ちのように国を捨てて結婚しただけのこと。

 藍田家への婿入りは認められなかった。

 よって、曽祖父はその時点で皇籍(こうせき)離脱(りだつ)


 血のつながりがあるだけで、親戚付き合いなど全くなかった。

 藍田グループとしても今まで取引実績はない。


 そんな関係だったはずなのに、今回のクーデターが勃発(ぼっぱつ)して、ラステニアが資金調達のために突然取引を持ちかけてきた。


 藍田グループとしても寝耳に水な話で、とにかく事実確認をする方が先と、ラステニア側との会談を申請、実施することになった。


 話を聞いてみれば、国王の方はもともと軍需産業に興味のない藍田グループからの支援は期待していなかったという。

 単に桜子にご執心な王太子の強い要望があって、一応声をかけた程度の話だったらしい。


 とはいえ、藍田グループもせっかく相手の方から声をかけてきてくれたのなら、それを無下(むげ)に断るのはもったいない。

 軍事に加担するのはごめんだが、国が安定している状態なら取引はもちろんしたいところだ。


 そこで、父親は取引の条件として、桜子との婚約の代わりに、王太子の身の安全を保証することを提案した。


 内戦が激化する中、王宮もいつ攻め込まれるかわからない。

 世継ぎである王太子の身に危険が迫るのも時間の問題だった。


 ラステニア側はその提案を受け入れ、内戦が終結した時点で藍田グループとの取引を始めるという確約をしたのだ。


 一国の王太子を預かるとなると、政府との調整や滞在先の確保など、やることはいろいろある。

 おかげで父親はほとんど寝る間もなく、この1週間、都内を飛び回ることになった。


 ようやく今日、ひと通りの準備が終わって、父親は家に帰って来られたということらしい。

これで一件落着か?

次話もこの場面が続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ