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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第4章-3 ロミジュリ展開、お断りします。~子離れ編~

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3話 薫子にバレました

彬視点です。

 その日、藍田家の兄弟は、彬も含めて3人とも学校をサボった。

 家の外は記者がたむろしていて、そんな中を出ていく元気はなかった、というのが理由。


 だからといって、家でやることもないので、彬は朝から自分の部屋でテレビを見ていた。

 バリバリと頭上から響くヘリの音がやたらうるさいが。


 ここ数日帰ってこない父親は、首相官邸、外務省、会社、ホテルや料亭で会食と、都内のあちこちを飛び回っている。

 母親は仕事優先と、果敢(かかん)にも記者の中をかき分けて出かけていった。


 そんな様子がご丁寧に全部テレビに映し出されているので、いちいち近況報告を聞く必要もない。


 最新の映像が手に入らないのか、桜子の姿はいつも赤いドレスを着た試写会の時のもの。

 美人に映っているし、とりあえずは問題ない。


 ネットの方がよほど個人情報が流れていて、小学校や中学の卒業アルバムから、学校行事の写真までと個人的な写真も載せられている。


 とはいえ、悪い書き込みは今のところ見当たらない。

 桜子は恨みを買うような人間ではないので、当然ともいえる。


 桜子はもっとパニックになったり落ち込んだりするのかと思っていたが、今朝、圭介に電話をしてからは普段と変わりない様子だった。


「大丈夫」と笑顔を見せてくれるくらいだ。


 結局、前にひどく落ち込んでいたのは、圭介に会うこともできず、気持ちが信じられなくて、不安だっただけのこと。

 関係が安定している今、桜子はどっしりと構えていられるらしい。


 要は王太子と結婚するつもりなど毛頭ない。


(あの姉さんのことだから、結婚しないためなら何でもするんだろうな)


 意外と桜子の中身は子供のままなので、やると決めたら人目など気にしないし、まっすぐ自分の道を進んでいく。


「あーきらくん!」


 ドアが突然開いて、薫子がずかずかと部屋に入ってくる。


「入ってくるなら、ノックくらいしてよ」


「えー、なに、桜ちゃんの映像見ながらHなことでもしてた?」


 ニヤッと笑う薫子の頬を片手ではさんでやった。


「おい、ガキンチョ、この口は下世話なことしか出てこないのか?」


「彬くんがイジメるって、桜ちゃんに言いつけてやるー!」と、頬をはさまれて、薫子はタコのような口でブウブウ言っている。


 変な顔、と笑ってやろうと思った瞬間、薫子のひざ蹴りが彬の鳩尾(みぞおち)にしたたかに入り、「うげっ」とうめいて手を離した。


「イジメてるのはどっちだよ!?」


「まあ、まあ、彬くん。ケンカしに来たわけじゃないし。先に手を出したのは彬くんなんだから、これでおアイコよ」


 薫子は何もなかったかのようにニコニコ笑っている。


「どこがおアイコだよ? 僕のは暴力じゃない」


「ええー、かよわい女の子には充分暴力なんだよー」


「ひざ蹴りする女をか弱いとは言わない」


「そんなことないよー。こーんなやわらかいホッペ、すぐにつぶれちゃうんだから」


 薫子はそう言いながら両頬をこすって見せた。


「で、なに? ケンカ吹っ掛けに来たんじゃないなら、何しに来たの?」


「彬くんに聞きたいことがあって」


「何を?」


「この件、神泉妃那は何か言ってなかった?」


「なんでそれを僕に聞くの? 圭介さんに聞いた方が早くない?」


「残念ながら、あの人は自分の黒い部分はダーリンに見せたりしませーん。

 というわけで、おトモダチの彬くんの方に聞いてるんです」


「別に友達じゃないけど」


「隠してもムダだよー。毎日のように学校が終わるといそいそホテル通いしてるの、知ってるんだもんねー」


「まさか、つけたの!?」


 彬は隠していたことがあっさりとバレたのと、バレた相手が薫子という屈辱(くつじょく)で真っ赤になった。


「1回だけ。おかげで今月のおこづかい、タクシー代で消えちゃったよ」


 グスン、と薫子は泣くマネをする。


「……まさか、姉さんに言ってないよね?」


「内緒にしておいてほしいの? でも、あたし、隠し事のできない子供だからねー。うっかり口がすべっちゃうかもー」と、薫子はとぼけたような顔で言う。


「……何がほしいの?」


「タクシー代で消えちゃたおこづかい。ちょうだいとは言わないから貸して。来月には返すから」


 彬は仕方なく自分の財布を取って2千円を渡してやった。


「これだけー?」と、薫子の顔は不服そうだ。


「僕のこづかい、全部貸せるわけないだろ」

「お互いわびしい月だねえ」


「誰のせい?」

「彬くんのせい」


 彬は相手をするのもバカバカしくなって、ため息をついた。


「用事が済んだら出ていってよ」


「だから、用事はさっき聞いたじゃない。話がそれちゃっただけ。お金はついで」


「ああ、あの人が何か関わっているかって? 僕だって知らないよ。

 だいたいなんであの人が関わってると思うの?」


「だって、あの人の都合のいいように話が進んでいるじゃない」


「そりゃ、姉さんが王太子と結婚することになったら、圭介さんとは別れることになるから都合はいいだろうけど、この件にどうやって関われるの?

 国と企業、それにあっちの王太子の気持ちなんて、どうこうできるものじゃないだろ」


「じゃあ、彬くんは偶然にも神泉妃那に都合のいいことが起こったと思うの?

 ダーリンに桜ちゃんをあきらめさせるのは一筋縄(ひとすじなわ)ではいかない、あきらめるのを待つって言ってた神泉妃那が、何もしないでボーっと待ってたら、ダーリンが桜ちゃんをあきらめると思っているとでもいうの?」


「何か企んでるのは確かだろうけど、それがこの件と関係あるかはわからないよ」


「企んでいるのは確かなの?」


 薫子の目がキラリと光る。


 妹がこういう何かを見透かす目をする時、ウソが通用しないことは経験上よく知っている。


(父さんとよく似てるんだよな……)

次話、薫子の調査により驚きの事実が発覚か……?

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