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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第4章-2 ロミジュリ展開、お断りします。~成長見守る編~

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17話 お姉ちゃんは淋しいです

第4章パート2、最終話です。


桜子視点です。

 夜7時の藍田家、夕食の席にやってきたのは桜子と薫子だけだった。

 これだけ人が少ないのも珍しい。


「えー、みんなは?」


 夕食を運んでくるお手伝いの春代に桜子は聞いた。


「旦那様と奥様は取締役会議だそうですよ。彬様は少し遅れると連絡がありましたが」


「取締役会議って、こんな時間に? 朝は何にも言ってなかったのに」


「なんでも緊急案件が上がったとかで、急に決まったそうですよ」


「へえ、何かあったのかな」


 薫子と顔を見合わせて首を傾げた。


 そこへ「間に合った!」と彬が飛び込んでくる。


「お帰りー。遅かったじゃない」


「あれ、父さんたちは?」


「会議だって。さ、食べよう。彬も剣道に遅れるよ」


 いただきます、と三人で食卓を囲む。


「彬くん、最近夕食の時間ギリギリだけど、放課後何しているの?」


 薫子が目をキラキラさせて聞く。


「別に友達と遊んでるだけだけど」


 どうやら詳しいことは話したくないらしく、彬はそれ以上何も言わない。


「もしかして、カノジョでもできた?」


 薫子の意外な質問に、桜子は目を丸くした。


「え、そうなの?」


「友達って言ってるけど?」


 彬の眉が不機嫌そうに上がるが、薫子はかまわず突っ込む。


「でも、相手は女の子なんじゃないのー?」


「だから?」


「薫子、あんまり突っ込んじゃダメだよ。でも、そっかあ、彬にもカノジョができたんだ。

 なんか、安心したなー。モテるわりには女の子に興味なさそうだったから」


「だから、カノジョじゃないって」と、彬は口を尖らせる。


「別に恥ずかしがらなくったっていいよ。兄弟の間で隠し事はなし。

 あたしはお姉ちゃんとして、彬の恋を応援してあげるからね」


「桜ちゃん、こういうお年頃の男の子は隠し事したがるんだよ。大人になった証拠って奴。ねえ?」


 薫子の意味ありげな問いかけに、彬はやはりむっつりとしていた。


「男の子ってそういうものなの? 淋しいなあ」


「大丈夫。桜ちゃんにはあたしがいるからね。ずうっと大人になんかならないで、桜ちゃんには隠し事もしないよ」


「このウソつき薫子。おまえの方がよっぽど隠し事してると思うけど? 圭介さんのことだって、いろいろ知ってたくせに、ちゃっかり黙ってたじゃないか」


「ウソも方便っていうでしょ? 隠し事も本人のためなら『言わぬが花』ってこともあるんですよー」


「そういうの、詭弁(きべん)って言うんだよ」


 この二人は基本的に仲がいいわけではないと、桜子も知っている。

 男と女のわりに顔はよく似ているし、歳も一つしか違わないから双子のようだが、性格はまったく似ていない。

 そのせいなのか、よくぶつかっている。


 桜子からすれば、じゃれ合っている子犬にしか見えないのだが。

 つまり、二人ともかわいい。


「まあまあ、薫子も悪気があって隠し事してるわけじゃないみたいだし、彬もそういうお年頃になったんだと理解して、淋しいけど話したくなるまでは聞かないでガマンするね」


 彬は少し困ったような顔をして、それからコクンとうなずいた。


(……もしかして、これが俗にいう反抗期って奴なのかしら)


 そのうちに何も話してくれなくなるんじゃないかと思うと、淋しいどころじゃない。


(あたし、泣いちゃうかも)


「お先にごちそうさま。剣道行ってくる」と、さっさと食べ終えた彬が食器を片付けて立ち上がる。


「うん、いってらっしゃい。頑張ってね」


 彬を見送りながら、桜子は自分の食事を続けた。


「桜ちゃん、元気出して。彬くんが姉離れするのも、桜ちゃんにカレシができたからじゃない?」


「そうなの?」


「だって、桜ちゃんはダーリンとの時間を優先するでしょ? 一緒にいる時間が減っちゃうから、淋しいんだよ。で、その淋しさを他の誰かで埋めてるって感じ?」


「うーん、なんか違うような気もするけど。昨日も一緒にひまわり園に行ったりして普通に過ごしてたのに」


「恋愛とかの話じゃなければ大丈夫なんじゃない? なんといっても第二次性徴期真っただ中。男女の違いがよりはっきりしてきて、兄弟でもデリケートな時期なんだよ」


「男の子ってみんな変わっちゃうのかな。ヨリのこともかなりショックだったんだけど」


「三つ子の魂百までっていうくらいだから、根本的なところは何にも変わってないと思うけど」


「きっとあたしが変わってほしくないところが変わっちゃうから残念に思うんだね」


「じゃあ、ダーリンは子供のころに比べて変わっていたとしても、桜ちゃんの好きな方向に変わったから恋したんだね」


「圭介はあんまり変わっていないと思うよー」


 家族思いで、困っている人を放っておけない。

 そんな人だから、周りに人が集まってくる。

 先日の文化祭デートのおかげで、それがよくわかった。


 青蘭なんかに入らなかったら、たくさんの友達に囲まれて、もっと生き生きと高校生活を楽しんでいたことだろう。


(ちょっと残念だけど、いっぱい女の子が寄ってこなくて、あたしとしてはラッキーかな?)


 そんなことを考えて、桜子はふふふっと一人笑いをしてしまった。

パート2【成長見守る編】は、圭介&桜子と彬&妃那の話が半々となりました。

ここまでで仕込みは完了(妃那の? 作者の?)。

次話から第4章最終パート【子離れ編】が始まります。

『緊急案件』で桜子両親が不在。それが桜子達にどう関係してくるのか?



続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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