1話 うち、神泉家に恨まれてるの?
第4章 Part2【成長見守る編】スタート!
桜子視点です。
せわしい朝の食卓、家族全員がそろったところで、桜子はチンチンと箸で茶碗を鳴らした。
「食べながらでいいから聞いてね。昨日、話す時間がなかったから」
「何を改まって」と、母親がお味噌汁をすすりながら上目遣いに桜子を見る。
「私、桜子は圭介と婚約することにいたしました。圭介も同意してくれて、この家を継いでくれるそうです」
桜子としては重大発表のつもりだったのだが、家族の反応は「へえ、そう」くらいで、誰も驚いた顔をしない。
『今日は天気が良さそうね』と言ったのと変わらない。
(今さらな話なのー!?)
さすがにこれはちょっとすねたくなる。
「で? うちはともかく、向こうの家は?」
話を促すように聞いてきたのは、やはり母親だった。
「それは多々問題あるけど、目的地は決まったということで、みんなにも報告しておこうと思ったのー」
「つまり、反対されているんでしょ?」
「それはおいおい解決していくということで」
「どうやって?」
「具体的な対策はまだだけど、そもそも理不尽な理由で付き合いを反対されているんだもん。
ちゃんと納得してもらえれば、賛成してもらえるよ」
「理不尽な理由?」
「あ、聞こうと思ってたんだ。なんか、圭介がおじいさんに言われたらしいんだけど、藍田の女は魔性のもので男を不幸にする星のもとにあるって。何それって感じでしょ?」
母親が気づかわし気に父親の顔を見る。
「え、お父さん、実は不幸だとか思ってるの?」と、薫子が好奇心全開で聞く。
「いや、そうじゃなくて……」と、珍しく父親の歯切れが悪い。
「直接的ではないけど、過去にいろいろあったせいで、特に神泉会長はうちと関わりを持ちたくないのかもしれないと思ってな」
「ちょっと待って。うち、恨まれてるの? 何があったの? ていうか、何したのよ?」
「話せば長くなるから、今夜でもいいか?」
桜子が答える前に、母親が間に入った。
「あたしから話すから音弥は気にしなくていいわ。ま、それでも夜ね。今日はすぐに出かけなくちゃいけないし、あんたたちも学校でしょ」
どうやら、父親の方が話したくない内容らしい。
(ていうか、過去に何があったのよー!?)
次話、圭介側の話をはさんでから、過去の話が明かされます。




