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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第4章-1 ロミジュリ展開、お断りします。~子育て編~

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18話 デートの終わり方って……

 桜子と二人、目当てのピザを堪能(たんのう)して店を出ると、外はすっかり暗くなっていた。


「あっという間に日が暮れるようになったなー。夏ももう終わりって感じ」


「そうだね。でも、まだまだ夜でも暑いよ」


「さて、帰るか。遅くなっちまったし。家まで送ろうか?」


 歩き出そうとすると、袖が引っ張られて、桜子に引き留められていた。


「まだ帰りたくないんだけど……」


「どっか行きたいとこでもあるのか?」


「……どこってわけじゃないけど、圭介ともう少し一緒にいたいなって」


「じゃあ、家まで送ってやるよ。そしたら、もう少し一緒にいられるだろ?」


「そういう意味じゃなくて……二人っきりになれるところに行きたいなって……」


 顔を赤くして目をキョトキョトしている桜子を見て、さすがの圭介もその意味に気付かないわけにはいかなかった。


 思わずごくりと息を飲んでしまう。


(いきなり初デートでホテルに行くとかアリなのか!?)


 告白してくれた日、1度はガマンしたのだ。

 2度もガマンしろなどと、神様だってそんなムゴいことは言わないはず。

 しかも、女の方がいいと言っているのだから、ためらう理由はなし。


「本当にいいのか?」


「だって、今、圭介を帰したら、また会えなくなっちゃうし……。

 今頃、妃那さん、あたしたちが二人で会ってること、おじい様に報告してるはずでしょ?」


 彬からのメッセージが来た時、桜子が真っ先に確認してきたのはそのことだった。

 妃那を無事に送り届けたこと以外にも、何か書かれていたのかもしれない。


(おれ、バカだ……)


 この別れの間際(まぎわ)まで楽しく過ごせたことは間違いないと思う。

 しかし、時折、桜子がボケっとしていることには気づいていた。

 そんな時に桜子が考えていたのは、このことだったに違いない。


 もしかしたら、今日が会える最後になるかもしれないと――。

 

 一方で圭介は深く考えていなかった。


 妃那が家に帰ってしばらくしても、圭介が帰ってこないとなれば、桜子と一緒にいることは容易に想像できる。

 二人を別れさせたい妃那が、源蔵に報告しないわけがない。


 今頃、圭介を探すべく、神泉家から人が出ているかもしれない。


 捕まったら最後、再び神泉家に軟禁(なんきん)され、桜子と会えないように2度と学校に行かせてもらえないことも考えられる。


 問題が山積みの今、軽々しくデートなんてすべきではなかったのだ。

 薫子に乗せられて、いそいそとここまで来てしまったが、後悔してももう遅い。


 しかし、このまま逃げたところで、解決する問題は一つもない。


「心配すんな。今度は何があろうと、あの家から脱出しておまえに会いに行くから。

 これ以上、状況が悪くならないように、今夜はこれで帰った方がいいんじゃないか?」


「……そういう意味で言ったんじゃないのに」


 桜子は赤い顔のまま、怒ったようにまなじりを吊り上げる。


「そういう意味じゃないって?」


「もういい! はい、これ、あたしのスマホ。圭介に貸しておくから、薫子のスマホに連絡して。妃那さんに見つからないようにね」


 桜子は叩きつけるように、圭介の手にスマホを押し付けてきた。


「いや、でも……」


「見られて困るものは入ってないから。セキュリティコードはあたしの誕生日。帰ったら、どうなったのか、ちゃんと報告してよ」


「わかったけど……」


「あのねえ、あたしだって、ちゃんと対策考えてるの。圭介が家に閉じ込められても、今度は音信不通なんかにさせないから。

 それに相手の出方次第では、藍田の権力、総動員させても圭介を取り返すつもりでいるんだからね。

 あたしは圭介をお婿さんにもらうって決めて、圭介も同意したんだから、圭介もちゃんと覚悟を決めてよ」


「それはいいんだけど、おまえ、なんで怒ってんの?」


「別に怒ってないよ。じゃあ、またあとで。連絡忘れないでね」


 桜子は身をひるがえして、雑踏(ざっとう)の中を歩いて行ってしまった。


(ちょっと待て……。わけがわからねえ。てか、初デートの終わりがこんなにあっさりなのか?

 家まで送るどころか、駅までも一緒に行かないのか? これ、普通に『ケンカ別れ』って、言わねえ?)


 ケンカというより、一方的に桜子が怒っていただけだが、それでもいいわけがない。


 圭介は慌てて駆け出し、桜子を追った。


 幸い立ち並ぶ店の光のおかげで、駅までの道は明るい。

 人ごみの中に見え隠れする桜子の後姿もすぐに見つかった。


「待っ――」


 手を伸ばして桜子の腕をつかむはずが、その腕が一瞬のうちに消えてしまった。


『て』の言葉と同時に、圭介はそのまま空をつかみ、今まで駆けてきた勢いとともに、地面にヘッドスライディング。

 かろうじて顔を打ち付けなくて済んだが、ついた手がすり切れたのか、じくじくと痛かった。


「うわ、だっせー」

「あれ、青蘭の制服でしょ? お坊っちゃんは車に乗りすぎて、歩き慣れてないのよ」


 往来でみっともなくすっ転んだ圭介を見て、クスクス笑いが耳に入ってくる。

 恥ずかしいことこの上ない。


 おかげで、すぐに立ち上がる勇気も出てこなかった。

コケた圭介、この後どうなる?

次話に続きます。

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