13話 友達になったものの、イトコとの契約は?
『藍田桜子は学校になじめず、何度もやめることを考えたらしい。
1番話が合いそうなおれと友人になってほしいと頼まれて、一応オーケーした。
彼女に学校をやめさせたいのであれば、断ることもできる。
契約違反に当たるというのなら、契約打ち切りで構わない』
圭介はいろいろな文面を考えた末、依頼主――貴頼へはそう書いて送った。
正直、貴頼がどちらを望んでいるのかはわからなかったが、圭介のカンでは桜子を退学させることはないだろうと思った。
やめさせることが目的なら、最初から入学させなければいい。
人ひとり簡単に入学させることができるのなら、逆に人ひとり入学拒否することくらい簡単だ。
一方で、桜子がこの学園に入学したいきさつである『笑えない話』も気にならないこともない。
桜子はもともと都立を受験する予定だった。
しかし、試験会場の高校へ向かう途中、道で苦しんでいる老女を見つけ、そのまま病院に搬送。
その老女の家族への連絡がなかなか取れず、桜子は最後まで付き合う羽目になった。
結局、試験時間には間に合わず、あきらめて家に帰ったという。
それから1週間ほどして、受けてもいない青蘭学園の入学許可証が届いた。
学園側が藍田家の娘を入学させればいい宣伝になると、勝手に通知をよこした可能性はある。
実際、桜子は授業料免除の特待生なのだ。
つまり、さすがに貴頼の家の権力でも藍田家のものには及ばず、学園側が桜子の入学を強行したというケースが考えられる。
この場合、桜子を入学させたくなかった貴頼は、圭介に監視役を頼み、桜子の身辺調査から何らかの理由を見つけて、退学に追い込もうと画策しているということになる。
そう考えれば、話のつじつまは合う。
この圭介の送った報告によって、貴頼の意図が少なからずわかるに違いない。
最悪『契約を打ち切りにする』と、返されてもおかしくはない。
圭介は緊張しながら返事を待っていたが、ようやく届いたものはいつもの『了解』ではなく、『様子を見ることにします。定期連絡はいつも通りに』だった。
この曖昧な返答からは、結局貴頼の本意は読み取れなかった。
桜子をやめさせたくないから現状を維持すると言っているのか。それとも、ただ時間の猶予の問題で、そう遠くないある日突然、『契約解除』の一言が送られてくるのか。
なんだか薄氷を踏む思いで、毎日が心もとない気もしたが、少なくともそのXデーが来るまでは桜子とともに過ごせる。
その時間はたとえ退学になっても、自分の人生においてかけがえのない時間になるに違いない。
だから、今はこんな日々が1日でも長く続くように圭介は祈っていた。
次話、桜子のお父さんは本当に呪いに関係があるのか? の話になります。