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2話 皆さん、さようなら

桜子視点です。

 新学期初日、桜子は無意識のうちに夏休み前と同じ電車の車両に乗っていた。


 この車両に乗ると、いつも圭介は向かいのドアに寄りかかっていて、「おはよ」と桜子たち三兄弟を笑顔で迎えてくれていた。


 いるはずがないのに期待して、がっかりしてしまう。


 弟と妹がそんな桜子を気づかわし気に見ていることに気づき、桜子は笑顔を向けた。


「大丈夫だよ」


 圭介がいない学校に行くのは、正直、気が進まない。

 しかし、家に引きこもっているよりは、人のいるところに行った方が気がまぎれる。


 それに、万が一ということもある。

 神泉家の子女は圭介の母親からしても青蘭学園に通っていたので、彼が絶対に学校に戻らないとも限らないのだ。




 教室に入れば、見慣れた顔ぶれがあいさつをしてくる。

 かなりの人数がこの夏に海に行ったのか、いい色に焼けていた。


 夏休みがどうだったとか、ああだったとか、桜子も会話の輪の中に入り、一緒に笑い合った。


 桜子にとっては圭介と付き合い始めたということが、この夏1番の出来事だった。

 しかし、それに続く圭介の行方不明によって、夏休み全体まで色あせてしまった気がする。


 楽しいこともたくさんあったのに、今、ここに圭介がいないだけで、教室の景色さえ違ったものに見えてしまう。


「あいつ、退学したって聞いた?」

「おう。とうとう学費払えなくなったんだろ」


「やっとこの学校も本来の姿に戻ったって感じだよな。そもそも、あんな貧乏人を入学させること自体間違ってんだよ」


「そうそう。あまりに異質すぎて、めちゃくちゃにしてくれたよなあ。学園のアイドルと付き合うとか、ありえねえよ」


 古賀を始めとする男子グループの会話が耳に入って、桜子はただでさえ貼り付けていた笑顔が凍り付いた。


(圭介が退学……? もう、2度とこの学校には来ないの?)


「古賀君、その話は本当なの?」


 桜子は男子グループを振り返って聞いた。


「え、藍田さん、知らなかった? あんなに仲良かったのに」


「最近、連絡が取れなくて……」


「まあ、その方がいいんじゃない? これで藍田さんもあいつのお守りをしなくてすむわけだし。

 これ以上関わると、家名にも傷がつくところだったんじゃない?」


「そうよねえ」と、女子グループまで同意している。


 同級生たちの圭介に対する物言いに、桜子は全身の血が煮えたぎったかのように熱くなった。

 ただでさえ圭介との仲を邪魔され、頭に来ているところ。たっぷり火に油を注いでくれた。


(圭介がやめたなら、あたしがここにいる理由はないわ)


 圭介がいなくなったことを喜び、すぐに忘れていける人たちの中にはいたくない。

 そもそも圭介がイジメにあわないように、この肌に合わない学園に無理をして通っていたのだ。


「気分が悪いから、あたし、帰るわ。さようなら」


 桜子はカバンをつかんで教室を飛び出した。


 もう2度とここには戻らない。そう決めて――。

まさかのすれ違い? などという事態にはなりませんので、ご心配なく。

次話は同じ日、妃那のお守り(デート)に出かけていった圭介たちの話になります。

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