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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第3章 『呪い』は全力で回避します。

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32話 新たな試練も乗り越えてみせる

圭介の視点です。

 圭介が運ばれてきたお茶を飲んでいると、突然、家の中から目覚まし時計のようなけたたましいアラームが聞こえてきた。


「え、おい、何の音だ!?」と、圭介はあわてた。


「防犯センサーに何か引っかかったのよ。ちょっと様子を見に行ってくるわ」


 そう言って、圭介の母親は玄関の方へ向かっていった。




 それから10分ほど経って、母親はテラスで待っていた圭介の元へ戻ってきた。


「何だったんだ?」


 問いかけてみたが、母親は複雑そうな顔でしばらく無言のまま圭介を眺め、それからため息をついて、イスに座った。


「……まあ、黙ってるのもフェアじゃないから、本当のことを言うわよ。桜子さんがあんたに会いに来たのよ」


「桜子が……!?」


 桜子がすぐそばにいると思うと、居ても立ってもいられず、駆け出そうと立ち上がった。

 ――が、ずきりと足に痛みが走り、バランスを崩した。


 崩れ落ちそうになる圭介を引きずり止めたのは、母親だった。


「行ってもムダよ。もう帰ったから」


「帰ったって……? 帰したのかよ!? なんで!? おれが桜子に逢いたいこと知ってて、なんで邪魔すんだよ!?」


 母親はあきれたようにため息をつきながら、圭介をイスに座らせた。


「あんたねえ、彼女、門を乗り越えたのよ。立派な不法侵入なのよ?

 こんなことが公になったら、どんな大騒ぎになるか、わからないとは言わせないわよ」


「そもそも無理やりおれをここに閉じ込めて、桜子に会わせないようになんてするから、桜子だってそんな無茶をするんだろうが。

 それだけ、桜子だって、おれに会いたがってるってことだろ? なんで引き離すんだよ!?」


「じゃあ、聞くけど、今、会ってどうするの?」


「どうするって……」


「1回会ったら、それで満足? それとも、手に手を取って逃げるの?

 あっという間に連れ戻されるってのに?

 どっちもお互いに好きって気持ちが先走りしていて、周りが見えていないのよ」


 畳みかけるような母親の言葉に、圭介は何も言えなかった。


 逢いたくて、逢うことしか考えていなかった。

 1度でも会いさえすれば、この事態が好転するような気がしていた。

 ここから抜け出すことができれば、なんとかなると思い込んでいた。


 つまり、具体的なことは、何も考えていなかった。


「だからって、どうしたらいいんだよ……」


「だから、言ったでしょ? 頭冷やして、よく考えてみなさいって。それに、何かするにしても、まずはその足を治すことね」


 桜子に恋をした時、ムダなことをしている気がした。


 桜子は『呪い』さえなければ、どんな男とでも付き合える。

 自分にひざまずく男たちの中から、最高の男を選ぶことができる。


 そんな男たちの中から自分が選ばれる可能性は、ほとんどゼロだと思っていた。

 それでもわずかな可能性にすがって、ようやくここまで来た。


 その奇跡のような幸運に舞い上がって、そのあまりのありえなさに、1度手にした幸運を逃すのが怖くて、焦っていたのかもしれない。


(そうだ、ちゃんと落ち着いて考えるんだ)


 確かに今、逃げたところで、問題は何一つ解決しない。

 この神泉家と関わりを持ったことが、すべての元凶ではあるが、悔いたところで時間は戻せない。


 こうなってしまった以上、自分はこの家にいながら、妃那との婚約を回避し、桜子との未来を勝ち取るしかない。


 正式な婚約は7か月後。

 それまでに、妃那を始めとするこの家の人間に、桜子との仲を認めさせる。


(たぶん、これが次の試練になるんだ)


 どうすべきかは、まだわからない。

 だから、落ち着いて考える必要があるのだ。


 今日、会うことは叶わなかったが、桜子の気持ちが変わっていないことはわかった。


 そのことが何よりも勇気づけてくれる。

 自分の目的がブレない限り、この試練は乗り越えられるはずだ。


「おれは絶対に勝つからな!」


 目の前にいる母親に、というより自分に向かって圭介は宣言した。

【第3章 『呪い』は全力で回避します。】は、この話をもって完結となります。

クライマックスというよりは次章へのプロローグといった感じだったでしょうか。


第2章パート2から始まった長い長い夏休みもここで終了。

次話からは【第4章 ロミジュリ展開、お断りします。】が始まります。

再び学園ラブコメ(?)になる予定です。


圭介と婚約する気満々の妃那が加わって、どんな学園生活が待っているのか。

ぜひ次章もお楽しみください!


続きが気になると思っていただけたら、ぜひブックマークで。

感想、評価★★★★★などいただけるとうれしいです↓

今後の執筆の励みにさせてくださいm(__)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自身も駆け落ちした経験から、圭介に厳しい言葉を掛けるお母さん。 桜子も、勢いのままに来ちゃったけど、不法侵入はオオゴトになっちゃいますからねー汗 冷静な大人の言葉をきちんと聞けるなら、きっ…
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