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【本編完結】監視対象のお嬢様にうっかり恋をしたら、高嶺の花すぎた――けど、あきらめたくないので、テッペン目指そうと思います。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
第3章 『呪い』は全力で回避します。

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29話 圭介、発見

桜子視点です。

 4階建ての雑居ビルの屋上、桜子はフェンスに寄りかかって座っていた。

 隣に立つ薫子は、フェンス越しに双眼鏡をのぞいている。


「ねえ、圭介はやっぱり別の親戚の家にいるんじゃないの? もう三日目だよ? なのに、圭介の影すら見えないじゃない」


 薫子の策によると、圭介と連絡を取るにしても、とにかく居場所を特定することが先だという。


 そういうわけで、神泉家が見渡せるこの雑居ビルの屋上に通って、ここ毎日、朝から日が暮れるまで観察している。


 手っ取り早く言うと、ノゾキだ。


 他人の家を(のぞ)()することに、桜子はいまいち乗り気にはなれなかったが、圭介の居場所を知りたいという欲求に負けて、こうして薫子と一緒にこのビルに通っている。


「ねえ、桜ちゃん。ダーリンのお母さんには会ったことあるの?」


 薫子は桜子の話を聞いていなかったのか、逆に質問を返してきた。


「ないよ。あたしたち、付き合い始めたばっかもん。まだお母さんに紹介してもらうとかそんな関係じゃ――」


 桜子が少し赤くなりながらもじもじと答えると、薫子に「それはどうでもいいんだけど」とさえぎられた。


「どうでもいいって、なに!?」と、目が吊り上がってしまう。


「いや、だから、今、テラスに出て来た女の人、ダーリンのお母さんじゃないかなと思って」


「え、どの人?」と、桜子も立ち上がった。


「今、テラスのテーブルについた」


「ちょっと見せて」と、桜子は双眼鏡を奪って、神泉家の庭をのぞいた。


 テラスに置かれた白いテーブルの前に、確かに水色のサンドレスを着た女性が一人座っていた。

 そこへメイド服の年配の女性がティーセットを運んできて、お茶の準備をしている。


 やがて、メイドは家の中に姿を消し、女性は一人雑誌を読みながらお茶を飲み始めた。


「ほら、お母さんが言ってたじゃない。ダーリンはお母さん似だって。庭の女の人、似てる感じがしない?」


 言われて桜子も考えてみたが、似ているような気もするし、違うような気もする。


「うーん、あんまり自信ないな」


 薫子を見ると、持ってきたナップザックから、おもむろに一眼レフのカメラを出して、望遠レンズを組み付けているところだった。


「何するの?」


「写真を撮って、お母さんに確認してもらえば、手っ取り早いでしょ」


 薫子はカメラを構えて、何回かシャッターを切る。

 それから、スマホとカメラをつなげると、今撮ったばかりの写真をメールで送信した。


「ねえ、もしもあの人が圭介のお母さんだったとしても、圭介もそこにいるって、保証はないんじゃないの?」


「でも、住んでいたアパートは引き払われていたんでしょ? 住む場所がなくなって、お母さんだけが実家に帰って、ダーリンが別の親戚に預けられているって考える方が変じゃない?」


「お父さんの方にいるってことは、考えられない?」


「長いこと一緒には住んでいなかったみたいだからねー。離婚はしてなくても、別居は確実。そんなお父さんのところにダーリンが行くとは思えないんだけど」


「うん、まあ……」


(薫子、よく知ってるなあ……。あたし、圭介からそんな話聞いたことないのにー)


 桜子としてはちょっとムッとしてしまう。


「それに、今まで手元に置いていた息子をダンナに突然奪われたら、あんなにのんびりお茶してるとは思えないんだよね……あ、お母さんからメール入った」


「なんだって?」

「間違いないって」

「じゃあ、やっぱり圭介もあそこに――」


 桜子が再び双眼鏡をのぞいた瞬間、思わず手にしていたそれを落とすところだった。


「見つけた! 圭介!」


 桜子は思いのほか大声で叫んでいた。

 庭の女性の(かたわ)らに姿を現したのは、見間違いようもなく圭介だった。


「え、ほんと!?」と、薫子も驚きの声を上げる。


「圭介、元気そう……て、ケガしてるじゃない! 松葉杖ついてるよ!」


 連絡がつかない間に、圭介の身に何が起こったのか。


(やっぱり『呪い』のせいなの……!?)


「桜ちゃん、急いで! ダーリンが庭にいるうちに門のところまで行けば、桜ちゃんに気づいてもらえるよ!」


「そ、そうよね!」


 桜子ははっと我に返ると、荷物がある薫子をそこに残し、ビルの屋上を飛び出した。


(お願い、圭介、そこを動かないでー!)

桜子は無事に圭介に会えるのか?

次話は圭介サイドの話です。

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