天体観測しに行こうよ
冬の童話祭に投稿しようとして、止めたやつです。
「流れ星が消える前に3回願い事を唱えると、願いが叶うんだよ」
ゆうちゃんにそう教わった健太くんは、毎晩ゆうちゃんと空を見上げました。動いてるお星様がないか、眠くなるまでずっと見つめました。
だけど流れ星は一個も見えませんでした。
「今日は流星群だそうだ。流れ星が見られるかもしれないぞ」
お父さんにそう教えてもらった健太くんは、その日もずっと窓から外を見上げていました。だけど、窓からは流れ星が一つも見えませんでした。
「ゆうちゃんと外で見てもいいかな?」
「じゃあ先生に聞いてみようか」
先生は少しなら良いよと言ってくれました。二人は仲良く庭に出て、手を繋いで空を見上げました。
「健太くんは、どんなお願い事するの?」
「ゆうちゃんが先に言ってよ」
「えー、恥ずかしい!」
ゆうちゃんはモジモジしながら、健太くんの手をギュッと握ります。
「えっと……健太くんのお嫁さんになれますよーにって!えへへ」
健太くんはとても悲しい気持ちになりました。
「……そんなの願わなくていいよ」
「うん?」
「流れ星なんて待たなくていい。高校卒業したら、すぐ結婚しよう。結婚して、病気が治ったら家族作って、子供と一緒に天体観測しに行こうよ」
「…………うん」
「だから、二人で同じ願い事しよう。ゆうちゃんの病気が治りますようにって」
健太くんに抱っこされて、ゆうちゃんは泣きました。脚が動かなくなった時も、あと半年しか生きられないとわかった時も、ゆうちゃんは泣きませんでした。
ゆうちゃんの時間は、あと一ヶ月しか残ってないのかもしれませんでした。
「……叶うかなぁ」
「叶えるよ、僕が。絶対に……必ず。だから、がんばろ?」
「……うんっ」
ゆうちゃんと健太くんの頭には、いくつもの星が流れていました。
そして、あの日から2年が過ぎました。
今夜はゆうちゃんのお葬式です。
ゆうちゃんはいっぱい頑張りました。結婚式を病院で挙げて、患者さんとお医者さん達からいっぱいお祝いされました。
『私達、一生幸せになります!』
ゆうちゃんは絶対に約束を守る女の子でした。だから約束通り、最後の最後まで健太くんと幸せな結婚生活を送りました。
そう、皆は言ってくれたけども。
「……幸せなものかよ!脚が動かなくなって、大好きだったお風呂にも入れなくなって、ご飯だって喉を通らなくてゲーゲー吐いて!ごめんねっていつも笑っててさあ!!」
健太くんは、とても悲しくなりました。皆が慰めても、悲しさは消えませんでした。
「誰が願いを叶えるだって……!?俺は……最低な嘘つきだ……!!」
一人で泣いていた健太くんに、お葬式に参加してくれた先生が声を掛けました。
「健太くん」
「あ……先生……ご出席頂き、ありがとうございました」
「それはいい。それより、由李さんから手紙を預かっている。もしも病気が治らなかったら、渡してほしいと」
「ゆうちゃんの……手紙……!?」
健太くんが渡された手紙を受け取ると、先生は少しだけ頷くと、そのまま帰っていきました。
健太くんはベンチに座ると、恐る恐る手紙を開きました。
「……あいつ」
ゆうちゃんの手紙は、手で何も持てなくなる前に書いたようです。字はヨレヨレで、読むのが大変でした。それでも健太くんは、ゆっくりと、1文字ずつ読み勧めます。
健太くんへ
お嫁さんにしてくれてありがとう。
お父さんにしてあげられなくてごめんなさい。
じつはあの日の流れ星にはちがうおねがいごとをしてました。
健太くんがしあわせになれますようにって。
健太くんが泣きませんようにって。
健太くん。わたし、ほんとうにしあわせだったよ?
全部健太くんのおかげだよ。
だから、健太くんは私よりもっとしあわせになって。
わたしが死んじゃっても、ふこうにならないで。
いままでありがとう、けんちゃん。
愛しています。
由李
「ばか……やろ……!不幸になるなとか……無理に決まってるだろ……!!愛してるとか、俺の台詞だっての……!!ゆ……ゆうちゃん……!!……っ、由李ぃぃぃぃぃ!!」
健太くんの上に、一つだけ星が流れました。
今日も誰かの願い事を受け取りながら。




