少年と伯爵
初投稿。ほぼ自己満足のために書いてます。
少年は目の前が真っ白になった。
何が起きたかわからず、ふと、目線を下に落とす。
少年が目にしたのは…
自分に覆い被さる母親とそれを庇うかのように立ち塞がり、仁王立ちしたまま動かない父親の、事切れた姿だった。
……どういうことだ…?……父さん!母さん!…なん…で…
視線を上に向けると、そこには男が佇んでいた。誰だ?父さんと母さんを殺したコイツは一体!?
恐怖に震えながらも、虚ろな目で男を観察する。自分も殺されるかもしれない。
…?よく見ると男は人のようで人ではなかった。
…肌が…青い…?……それに…なんだか変だ…
男の肌は青かった。青白いというレベルではない。身長は2mを超えるだろう。両親を殺したその顔は、何故か悲しげだった。
男「愚かな人間だ。いや、此奴らだけではない、か。この様な事はあってはならんのだ…。」
……何を身勝手な事を!!…ふざけるな!よくも父さんと母さんを!!!
少年は涙でぐしゃぐしゃになった目で男を睨みつけた。しかし、震える身体から声が出ることは無い。恐怖に震えながらも睨みつける。それが少年にできる唯一の抵抗だった。
少年の視線に気づいたのか、男が少年を見据える。少し考えるような素振りを見せた後、彼はゆっくりと口を開いた。
男「…ふむ。お主が此奴らの息子か。……ということはつまり……()はお主ということか。」
?なんて言った……?
聞き慣れない言語に少年は訝しげな目をする。わからない。納得したかのような表情で男はゆっくりと少年から視線を切ると、天を仰ぎ言葉を続ける。
男「少年よ、お主に罪はない。何より子どもを手にかけるなど、吾輩の意向に反する。逃げよ!見逃してやろう…」
……逃げろ?さっきからなんなんだ!?意味がわからない…
無理やり身体に力を込める。彼を包んでいた母親の身体がずれ落ちる。少年の身体は震えながらもなんとか立ち上がることに成功した。
生の抜けた母親の顔は微笑んでいるように見えた。
男「命を賭してお主を守った母の死を無駄にするな!行け!」
…!!「……が、…」
少年は絞り出すような声で叫ぶ。上手く言葉にならない。男は再び少年に視線を向けた。その顔に表情はなく、静かに次の言葉が出るのを待った。
少年「……が!…お前が!…お前が、殺したんじゃないか!!」
男「その通りだ。恨め。恨みに怨み、憎しむがいい!!その思いを忘れるな!が、今はどうするべきか考えろ。お主のような子どもなど、吾輩の相手にもならんぞ?」
悔しいが当然だった。両親の命をあっさりと奪った男に、齢7歳にも満たない彼が敵うはずもなかった。少年の父親はこの辺りでは名の知れた実力者だった。その父が一切敵わなかったのだ。
男はニヤリと笑うと、言葉を投げる。
男「…少年よ。名は…何という?名乗れ。」
威圧的な態度に少年は震えながらも、絞り出す。
少年「……ジョン」
男は満足気に頷く。
男「ジョンか。吾輩の名はゼル、二つ名は伯爵、魔王ゼルだ!仇の名だ、覚えておくといい。」
男―ゼル伯爵―は少年―ジョン―に背を向ける。その背に敵意はなかった。
伯爵「行け!!今は逃げるのだジョンよ。そしていつの日か復讐に来るがよい!」
ジョンは横たわる両親に目を向け、涙を拭う。
……ごめんなさい。父さん、母さん。いつの日か!必ず!!
ジョンは走り出す。一心不乱に駆ける。燃え上がる生まれ育った家、息絶えた両親を背に。
文字通り右も左もわからないが、今は走るしかない。幼い身体が悲鳴を挙げる。そして火の手が見えなくなった頃、彼は人知れず気絶し倒れた。
続編あり…のつもりの前日譚としての物語です。




