フェローチェ・パーティー、終わりへのカウントダウン
都市から南にある石窟のダンジョンの中で、フェローチェはこれまでにないくらいイラだっている。
「おい……新人、まだ時間かかってるのかい? トラップ解除くらいさっさとやっちゃってよまったく!」
「す、すみません! でも、かなり複雑な仕掛けで解除に時間が……」
「言い訳すんなよな! アンネリーゼより役に立つからこうやって使ってやってんのに。アイツより遅いってどういうことだよ!!」
新人の仕事にしびれを切らしたフェローチェの怒鳴り声が、うしろに控えていたメンバーたちにも響く。
アンネリーゼがいたころは、ダンジョンにしかけてあるトラップなぞものの数分で、早いときには数秒で終わらせていた。
たとえそれが未知のトラップであったとしてもだ。
「こ、これだけ複雑な仕掛けなんですよ! もっと道具が必要ですし、あっても滅茶苦茶時間がかかります! それを数分? 数秒で? 無理ッ! 不可能ッ! インポッシブル!!」
「なにがインポッシブルだ! やれって言ったらやればいいんだよ!!」
しゃがみながら作業をしていた新人に、足で砂をかけてやったフェローチェ。
それを黙認し続けるメンバー。
変に口を開けば、自分が槍玉を投げられるから。
(クソ、なんで俺がこんな目に合うんだ! あのアンネリーゼとかいう奴より使えるって誉めた矢先これかよ!)
「まったくグズグズしてたらクエストクリアが遅れるじゃないか。今日は妹との約束があるから遅刻なんてできないんだ!」
「は、はい……」
(すごく機嫌悪そうだな)
(あぁ、『カトレシア』嬢さんのことになるとすぐにしびれを切らしすからなぁ)
(なんとかできねぇのかよ)
(無理だ。ミセリアならいさめられるが、生憎遠征中だ)
メンバーはフェローチェの機嫌に戦々恐々としていた。
アンネリーゼを追い出してまだ数日しか経っていないというのに、もうこんなにもギルドパーティーの雰囲気が重くなってしまっている。
最初はこんなもんなのかと誰もが思ったが、徐々に亀裂は走っていった。
アンネリーゼの代わりとして罵られるこの新人だが、のちにこのパーティー存続に激震を走らせることになる。
(こんなところにいたら潰れちまう! でも、俺まで追い出されたら……クソ、こうなったら……お前らも道連れにしてやるからなッ!!)