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探窟の先の鎧武者と、麗人再び

 次の日、朝早くにアンネリーゼは探窟隊とともに行動した。

 なにごともなく進んでいく一行だが、周囲に注意を向けている。


 アンネリーゼは探していた。

 やはりあの男装の麗人はいない。


「うふふ、あの娘、気になってるみたいね」


「まぁ命の恩人ですからね。私も興味があります」


「なんか……いないっぽいし。多分もうどこかへ行っちゃったのかなぁなんて」


「……会いたい?」


「そりゃあ勿論。私まだお礼も言ってないんですから」


「しかし……会えるんですかねぇ。こんな場所で」


 そのとき、探窟隊の後方部から悲鳴が響き渡る。

 3人同時に振り返ると、仄暗さと灯りの中で、ふた振りの剣閃が血を巻き上げていた。


 鬼のような気迫と、老練な腕からなる大小二刀流。

 まるでドラゴンが炎を吹いてるような勢いだ。


 昨日と今日でまたしても刀を見れるとは思わなかった。

 だが関心などしている場合ではない。


「うぉぉぉおおおッ!!」


 漆黒の鎧をまとった老騎士。

 左目に眼帯をした白髪の大男の猛攻は止まらない。



 仲間が抵抗むなしくやられていく様に姉妹は怒りをにじませた表情で戦闘態勢に入る。


 だが魔術を行使をしようとする前に、距離を詰められてしまった。

 跳躍で人々を飛び越えながら交差斬りをしかけようと二刀を振り上げる。


「させない!!」


 回転機構『天国への車輪(ヘブンズ・ウィール)』を起動させようとしたそのとき。


「!?」


 大男が驚いたように空中で巧みな方向転換をした。

 巨大な音を響かせて着地しながら、アンネリーゼをワナワナと凝視している。


「アンネ、リーゼ……?」


 大男が口を開いた。

 信じられないというような表情で見つめてる。


「な、なに……? 一体なんなのよアンタ! どうしてこの人たちを!!」


「……邪魔をするな小娘。私の依頼にお前は含まれていない。下がれ!」


「下がるわけないじゃない! この人たちは……私にとって大切な人なの」


 姉妹に危険が及ぶとわかった瞬間、内側で燃え上がるものがあった。

 その衝動に任せて啖呵たんかを切る。


 大男も引き下がる様子はない。

 二刀を角のように構え、殺気をその重圧に乗せる。


 大勢で囲むも怯む様子はない。

 

「私たち姉妹に喧嘩を売ったこと、後悔させてあげますよ」


「誰の依頼かは知らないけれど、むざむざやられるわけにはいかないわ」


「フン、抜かせ。魔術などこの私には通用せんぞ!」


「あーもう! なんなのよアンタ! やっと、やっと見つけたのに……。出てってよ!! 邪魔しないでよぉ!!」


 アンネリーゼの叫び声が響いた直後、奥の闇から軽やかな駆け足の音が耳に届いた。

 彼女らの頭上を羽ばたく蝶のようなシルエットが通る。


 布地がはためきその女性は着地した。



 誰もが目を引くほどに美しくも恐ろしい。

 暗闇の中での彼女の美貌は、まるで死神のよう。


 男装の麗人の"彼女"だ。

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