サルバニト・パーティーの凱旋
「……で、一時撤退というわけか」
「その言い方おかしい! 相談だよ相談!」
一旦別室に移り、ヴァレリィとクライメシアとで話し合う。
その場はアモルに任せて、ラクリマとグレイスには待ってもらうことに。
「だっていきなりなんだもん。まさか私たちのところに来たいだなんて夢にも思わなくって」
アンネリーゼにとってふたりは遠い世界の人間だ。
クエストで一緒になれたり、こうして真正面から話ができるだけでもありがたい存在。
しかし、現実は斜め上方向にぶっ飛んでいた。
どういう流れでそうなったのか是非とも聞いてみたいものだが。
「でもよぉ、別に入りたいってんならいいじゃあねぇか。人数も増えるし、なにより強ぇんだろ?」
「でも所属するのならもっと高ランクのギルドパーティーへ行ってもおかしくないふたりだよ? なんか、ウチでいいのかなぁって」
「卿はどうしたいんだ?」
「え?」
「確かに彼女らは逸材だ。ほかのギルドパーティーからすれば喉から手が出るほどにな。……だがそんなことはどうでもいい。卿はあのふたりと一緒にパーティーを組みたくはないのか?」
アンネリーゼの本心をわかっているかのような問いだった。
それが彼女の心を大いにくすぐる。
ヴァレリィも大きく頷いて、ラクリマとグレイスの加入を認めた。
アンネリーゼはひとりリビングへと戻って、ふたりに思いを聞かせる。
「ラクリマさん、グレイス。私たちのギルドパーティーはほかと比べると貧乏で、まだまだ小さいです。でも、もっと上にあがれると思うし、そうしたいんです。おふたりが力を貸していただけるのなら嬉しいんですけど、その前に理由を聞かせてもらってもいいですか?」
「簡単なことよぉ。アナタの働きはめざましいものがある。仕事をするのならアナタのような人と一緒がいい」
「そして私たち自身、『深淵への階段』のことはもちろん、ハンニバル周辺のことも調べておきたいからというのもあります」
「ハンニバル周辺?」
「ちょっときな臭いからねぇ。初めてアナタと出会ったときも、少し違和感があったから」
「もちろん、パーティーの一員としてクエスト達成のために全力を尽くします。姉様と一緒なら、研究はどこでだってできます」
「ホント、すごいですねおふたりとも。わかりました。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」
今日この日、ふたりのギルドパーティー加入が認められた。
ひとつの部屋をふたりで使うとのことで、早速様々な書物や道具を置きまくっている。
まさに魔術学者らしい部屋模様だ。
「今日はどうするのぉ? クエストにはいかないの?」
「今日からでもクエストに参加できますよ」
「そうですね。皆で行きましょう。……そんな高ランクのはまだまだですけど、アハハ」
「一歩ずつ進んでいきましょう。焦ることないわぁ。さ、チャチャッと準備しなくちゃ」
一行はギルドへと向かう。
一気に人数が増えてアンネリーゼも鼻が高かった。
ちっぽけな自分にこうも人が集まってくる。
良くしてくれている人たちがいるのだ。
報いたい。
そのために強くなることは苦でもない。
「おう、いらっしゃ……ありゃ! アンタらあんときの!」
「お久しぶりですわねぇシャチハタさん」
「アナタここの所属だったんですね」
「あ、アハハハ……こりゃこりゃ。んで、なんでアンタらが?」
「今日から新しくパーティーの一員として所属してくれるんです」
「……そうか。アンネリーゼちゃんと一緒にか。そらええこっちゃ。アンネリーゼちゃん、このふたりは魔術師としても超一流や。リーダーとして期待してええでぇ?」
「ちょ、リーダーだなんて……」
そのときだった。
玄関のほうでワッと歓声が起こる。
それはまるで国軍の凱旋のような賑わいだった。
「……ラッキーやなぁ。ハンニバル最強『サルバニト・パーティー』のお帰りや」
それはハーストが所属しているギルドパーティー。
ヴァレリィは苦い顔をしつつも、真っ先に窓のほうから外を見る。
先頭を歩くのは青と銀で飾られた軍服衣装の女性。
緑の黒髪は日に照らされ、より艶やかに。
整った顔立ちとその威厳ある風体に、街の人々からの黄色い声援はやむことを知らず。
心なしか後ろを歩くパーティーメンバーたちの顔も得意げだ。
「最強ってだけあってスッゲー人数だな。お、こっち入ってくるぜ」
ヴァレリィが口笛を吹きつつ戻ってきた。
ギルド内も彼女らの帰還でソワソワとし始めている。
「す、すごい。職員の人たちが皆立ち上がって……」
「あぁ、まさに英雄の帰還や」
実際にそうである。
サルバニト・パーティーは言わば、このハンニバルにおけるヒーロー集団。
大勢の憧れの的なのだ。
そして今、まさにその英雄たちがアンネリーゼたちの前へと現れた。




