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ラクリマとグレイスのパーティー加入

「アンネリーゼ、手紙が来ているぞ」


「ん、手紙?」


「またあの姉妹からだ」


「へー、なんだろ。……なになに、えっと……────」


「どうしたアンネリーゼ、顔色が悪くなっていっているようだが……」


「アモルー!! アモルー!!」


 今朝はこの叫び声から始まったといっても過言ではない。

 アモルにあれこれ指示を出し、その場にいたクライメシアと部屋で筋トレをしていたヴァレリィを引っ張り出してホウキやら雑巾を持たせる。


「いい! ピッカピカにしてね! ピッカピカにしてふたりを迎えるの!!」


「お、おい、一体なんなんだよ」


「なんだもクソもない!! ホラ! さっさとやる!!」


「わたしもやらねばならないのかね?」


「やるの!!」


 なぜか始まった大掃除。

 アモルは慣れた手つきでこなしていくも、当の3人はどこかぎこちない。


 というよりも連携が取れていない。

 クライメシアに至っては偶然見つけた本を読んでしまっている。


「ちょっとサボらないでよー!」


「アンネリーゼ、一体なにが卿をそこまでさせている?」


「あのふたりが来るの! ラクリマさんとグレイスがウチに来るの! ちょっとでも汚れとかあって目に着いたら……あわわわわ」


「なんだそんなことか。あのふたりは大丈夫そうな気がするがな。埃臭いダンジョンに潜って調査をしているのなら別に少しの汚れなど気にする必要が」


 そう言いかけたが、アンネリーゼがすごい剣幕5秒前といった状態だったので即刻口と本を閉じた。

 黙ってホウキを動かして掃除に専念する。


「しっかりやってねクライメシア」


(やれやれ、あの娘の怒った顔はどうも苦手だな……)


 ヴァレリィにも適時指導を行い、ようやく終わったころだ。

 あの姉妹がやってきた。


「あぁ、お待ちしていましたラクリマさん、グレイス!」


「ごめんなさいねぇ。突然押しかけるようなことしちゃって」


「あれ、もしかして今忙しかったですか?」


「ううん、なんでもないの。さぁ上がってください。小さな屋敷で大したおもてなしはできませんけど」


 ちょうどアモルがお茶を入れていた。

 お茶菓子も用意してあり、その手際の良さに溢れんばかりの感謝を内心に満ちさせる。


(あとでお礼言わなきゃ)


 とりあえずふたりを座らせて、クライメシアたちを呼び出す。

 

「おう、あんときのねえちゃんたちか」


「あ、ヴァレリィさん。……すごい汗ですね」


「おう、筋トレしてたのによぉ。途中でアンネリーゼに掃除しろーって」


「ヴァレリィ!」


「ちょ、ほ、ホントのことだろうが!」


「本当のことだな。わたしも駆り出されたのでビックリした」


「あらあら」


 和やかな雰囲気がリビングに溢れる。

 そこにアモルがお茶と茶菓子を持って来た。


「お客様、ようこそおいでくださいました。私はアモル。マスター、アンネリーゼ様にデザインされた魔導人形です。ご用があればなんなりとお申し付けくださいませ」


「まぁ素敵な魔導人形さんね。いつ買ったの?」


「いや、買ったというか~その~」


「ちょっとした伝手があってよ。元の人形をモデルにアンネリーゼが全部手作りでやったんだ」


「え、アンネリーゼ様って、そういうのもできるんですか?」


「あ、あ~うん、機械いじりとかは得意だから」


 ヴァレリィの咄嗟のフォローに内心ほっとする。

 できうるならば、彼女の過去をこれ以上掘り下げたくはない。


 今のままでいてほしいというのはワガママなのだろうが、アモルとして傍にいてくれるだけで、このギルドパーティーが和やかで華やかになる。


 日々の生活の中で、それほどまでの存在感を放っているのだ。


「うんうん、アナタのギルドパーティーが豊かになっていっているようで私も嬉しいわぁ」


「あ、アハハハ」


「さて卿らよ。わたしは手紙の内容を知らないからうるさく言える立場ではないが、今日はなんのようで来たのかな?」


 クライメシアが足を組むようにしてアンネリーゼの隣に座る。

 さんざん掃除をさせられたので、その部分ではやや不服が残っているらしく、内容によってはちょっとばかし文句を言ってやろうかと思っていた。


「あらそうねぇ。つい会話が弾んじゃったわぁ」


「で、ではお話します。コホン」


 まずヨフゼフの封印街の報告の件について。

 ハンニバル中枢部に、どんな惨状が巻き起こっているかをこと細かに報告したのだが、返答はなし。

 

 芸術作品は喜んで受け取ったらしいのだが……。


「まったくあり得ませんよ。調べろーってそっちが言っておいて結局は芸術作品とかですよ」


「あ~、まぁ、お偉いさんにはありそうだよね」


「けっ、気に入らねぇな。それで? その作品はどうなったんだよ。もしかして、連中の懐ン中か?」


「ほとんどが世界中のあるべき場所に輸送されたらしいわぁ。……コレクター界隈は大騒ぎ。オークションでウン十億の値がつけられたのがいくつも出されてたわ」


「億ぅ!?」


「……彼らの守りとおした作品が世に出てくれたのは嬉しいですが……少し複雑です」


 ハンニバル中枢部はこれを目論んでいたのか?

 だとしたらなんとも言えない気分になる。


 しかし非公式ではあったものの、巨大ギルド都市ハンニバルの名は名実ともにどのギルド都市よりも上になったことだろう。


「……それだけかな?」


「え?」


「その報告だけなら文面でもできるだろう。ほかにもあるのではないのかね?」


 アモルについでもらったブランデーに口をつけながら、クライメシアは深く座り直す。

 

「そうねぇ。言うべきよね」


「あの、折り入ってご相談がありまして」


「相談っていうのは?」


 アンネリーゼが身を乗り出し、クライメシアはまたグラスに口を付けた。



「私たちをアナタたちのパーティーに入れてほしいの!」


「お願いします」


 ブッとブランデーを噴き出す音とアンネリーゼの驚倒の声が響き渡る。 

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