血濡れた流れに魚住まず
レジスタンスたちが身を潜める中、民衆にも動きがあった。
まるで軍事パレードのように、各々の武器を持って規則正しい足並みで行進する民衆。
それを高台から見下ろすはこの街の惨状の張本人。
品行方正。
清廉潔白。
清く、正しく、美しく。
人間正しくするならば。
規制に圧政、洗脳教育、異端裁判是非もなし。
────アンラマユー判事だ。
まるで得意分野と言わんばかりに、俗悪と認定した作品やそれを作った者、所持した者を火炙りにしていく。
「ウワァーッハッハッハッハッ! 悪を滅ぼすのはいつでも気持ちがいいものだ」
炎と熱狂がアンラマユーを子供のようにはしゃがせる。
その瞳はあまりに純粋無垢だ。
「アンラマユー判事万歳!!」
「我らに真の自由をもたらすお方だ!!」
「判事万歳!!」
「然り!! ワシこそ、この街の救世主である! ヨフゼフの街はこれまで退廃的な穢れに満ち満ちていた。だがそれも終わる。ワシに続け! この街から一切の穢れを取り払うのだ!」
舞い降りた判事に続きながら民衆は雄叫びを上げて、家も、人も、そして作品も焼きつくしていく。
そしてそれは偵察にきていたレジスタンスのメンバーの目に止まり、すぐにアジトに報告が行った。
会議中だったレジスタンスたちは騒然となる。
「どうするねリーダー」
「答えはひとつだろ。戦うまでさ」
誰もが決死の覚悟を抱いている目をしている。
「あの皆さん。私たちも戦います」
「え、君たちが? それはダメだ。君たちには馬車で一気に門のほうまで言ってもらわなくてはならないんだ」
「わかっています。でも、いやな予感がするんです。きっと連中は一筋縄ではいかない」
「そうとも。だからこそ君たちには……」
「行かせてください」
「グレイス……君まで」
「この惨状を放ってはおけません」
「へっ、だったら俺も行くぜ。あのクソデカ判事にゃたっぷりと礼をしてやらねぇと気が済まねぇからな」
「ま、そこは同意だな。奴の空間系の力は侮れない。早めに倒しておくほうが吉だぜ」
メンバーのほぼ全員が参戦を表明している。
作戦としてはレジスタンスたちが時間稼ぎをしている間に門のほうまで一気に行ってもらい門を開くというものなのだが。
「確かにそうかもな。奴は妙な力を持っている。あれで何人も仲間がやられた。……やってくれるか?」
「はい」
「ただし、危ないと思ったらすぐに逃げてくれ。君たちは希望なんだ」
こうして戦線が組まれることになる。
アンラマユー率いる民衆を分断し、一気に片付けるというもの。
「人数をそこまで裂くわけにはいかないな。よし、分断したほうの民衆はわたしに任せろ。ひとりで相手しよう」
「え、アナタが?」
「なるべく多くわたしに回せるように計算するといい。そうすれば遥かに楽に立ち回れるぞ」
「だが……」
ウォフマナフは口ごもるも、アンネリーゼやヴァレリィは大いに頷いた。
実際、彼女ならその程度の立ち回りは造作もないだろう。
「姉様は馬車で待機をお願いします。作品を守ってください」
「……アナタひとりで大丈夫?」
「ひとりではありません。素晴らしい人たちが一緒です」
「そう、わかった」
そうして各々動き、作戦は決行されるときがきた。
場所は巨大な時計塔と教会のある聖堂通り。
教会と時計塔が爆破され瓦礫が民衆を分断する。
アンラマユー判事のところに1割、押し潰されたのが3割、残り6割は瓦礫の向こう側へと追いやられた。
「おのれ、待ち伏せか!」
アンラマユーの怒りの声が響き渡る背後で、瓦礫の向こう側では即刻クライメシアが大立ち回りを繰り広げていた。
民衆などまるで相手にならない。
彼女からすれば動かない的も同然。
「クライメシアが早速やってるみたいだぜ」
「あとはこの連中を片付けりゃあいいだけだ」
アンネリーゼたちクエストメンバー。
そしてレジスタンスのメンバーがジリジリと詰め寄る。
数ではアンネリーゼ側が有利。
だがアンラマユーはふんと鼻で笑い、四股を踏むような勢いで1歩踏み出す。
「小僧に小娘がたばになったところで同じこと。ワシの力にひれ伏すがよい!」
アンラマユーが力をためるかのような動作をする。
そこからなる地響きと空間の揺れ。
民衆はゾクゾクと笑みをたたえ、レジスタンスたちはたじろく。
「なんて闘気してやがる」
「ビビってんじゃあねぇヴァレリィ。来るぞ!」
「アンネリーゼさん」
「わかってる。修行の成果と私の戦い方、全力でぶつけてやる!」
(うん? 思った以上に敵が少ないな。これだけの規模の街だからもっといるだろうに。……もしや)




