魔導人形はモミジ谷に
シャチハタ曰く、とあるギルドパーティーで運用されていたメイド型の魔導人形がメンバーを皆殺しにしたとのことだ。
昨日の祭りの最中、その裏側での凶行。
犯行時間はわずか1時間。
凶器は鋭い刃物とされている。
「魔導人形の行方はまだわかっとらん。都市の中か外か……。上は大事にはしたくないみたいでな。とりあえず限定的にクエストのリストには乗せて、腕の立つギルドパーティーに参加を募ってるんや」
「そうだったんですね……それにしてもパーティーメンバー皆殺しって……ひどすぎる」
「あぁ、胸糞悪い話や。でもそれだけで片付けられへん。メンバー全員腕利きの冒険者や。ちょっと奇襲されたくらいで死ぬようなタマやない」
「自分らのメイドだからって油断したんじゃあねぇの?」
「そうなん、かなぁ。でや、クエスト出したんはええものの、受理してくれるギルドパーティーがおらんくてな。みぃんな自分のことで忙しいみたいや。そこで、上の命令で受理できるギルドパーティーの範囲を広げたってわけや。どうや? 受けてみる気ないか? もちろん強制やない。これは今までのDランクやらCランクやらのそれとは違う。死ぬ確率も格段に上がる」
「ふん、俺は別に構わねぇがアンネリーゼの意向に従うつもりだ。お前が決めな」
「どうするもこうするもないよ。魔導人形がこんなことするなんてって思うと……すごく気になる。私は知りたい」
「決まりだな」
「よっしゃ、ほなら行ってらっしゃい。回復用アイテムとか、必要な物品は揃えとくんやぞ?」
「わかりました。ありがとうございます」
冒険者ギルドを出て市場で装備を整えたあと、ふたりは聞き込みを行う。
不審な人物を見かけなかったか、そのギルドパーティーのアジトの近くを通った者はいなかったか。
二手に分かれて走り回るも、大した情報は集まらず時間だけが過ぎていく。
「だぁ~見つかんねぇ」
「手がかりのひとつもないなんて……。たった1時間で殺人をこなして痕跡を悟らせないなんてできるのかな?」
「……計画的だったってぇことか?」
「う~ん、なんだろ。少なくとも突発的にやったって感じではなさそうな雰囲気はする。そんなことをしてメンバーひとりひとりを相手にするなんて多分無理かも」
「なぁ、俺はあんま魔導人形のことわからねぇんだけどよ。やっぱり人間みたいにある日突然そういうことをするもんなのか?」
「そういった事例は聞いたことがない。そもそも、魔導人形そのものに戦闘能力はないはずなのよ」
「どういうことだ?」
「魔導人形はあくまで人間の傍で、日々の生活を支えたり、仕事のサポートをしたりする心強い味方のような存在。……ヴァレリィの言う通りいつか戦闘に特化するものが生まれるかもしれないけれど、今の技術力じゃ無理だと思う。だって1体作るだけでもすんごい時間とお金がかかるし、強度の問題もあるから」
「そういうもんなのか」
「そう。……だから余計に不思議なの。なんでこんなことをしたんだろうって」
「俺は、どうやってソイツがメンバー相手に勝つことができたかってのが気になるな。戦闘能力がないなのならなおさらだ。まさか、毒か?」
「凶器は鋭い刃物ってあるけど……まぁ毒かなにかで動けなくしてからってのも考えられるし、方法はわからない。そういうのは本人に聞けばわかる。私たちは探そ?」
「そうだな。こうしてジッとしてても始まらねぇ。奴がどこにいるかを探らねぇとよぉ」
再び情報収集を始めると、門からクエスト帰りのギルドパーティーが見えた。
「アンネリーゼ、あれ!」
「そうか……外の可能性だってある。外からの情報をなにか知ってるかも!」
駆け寄ってみると、誰もが大怪我を負っていた。
ギョッとしてどうしたのか尋ねてみると、どうやら襲撃にあったらしい。
「ついてねぇぜ。魔物討伐の帰りに妙なヤツと出くわして……強ぇったらありゃしねぇ」
「妙なヤツ? それってもしかしてメイド服を着ていませんでしたか?」
「お、おう。よくわかったな」
「どこにいましたか!?」
「モミジ谷ってところだよ。場所わかるか?」
「はい、ありがとうございます」
「おい、ヤツをどうするかは知らねぇが気をつけろ! アイツの戦闘能力は並じゃねぇ」
「ガッテンだ! よぉし、有力情報ゲットだな。さぁ行こうぜ!」
「うん!」




