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ハーストとヴァレリィ

「やぁお嬢さん。祭りは楽しんでいるかい?」


「え、は、は、はい。なんとか……」


「ん~、その格好動きやすそうでいいね。それでいて大人の女性の雰囲気を醸し出している。おっと失礼、俺の名前はハースト。普段はギルドパーティーの一員として働いているが、今は君のような麗しきレディたちのために、この祭りに舞い降りてきた天使ってところさ」


「は、はぁ」


「ふふふ、緊張してる? 俺のこと苦手って顔してるね。いいよ別に隠さなくても。色んな女性がいてくれたほうが、俺も愛し甲斐があるってもんさ。君、名前はなんていうの?」


「あ、アンネリーゼ、です」


「アンネリーゼ……ん~、高貴さを感じさせてくれる良い名前だ。ありがとう。これはほんのお礼だ」


 出会って早々に歯が浮くようなセリフを並べ立てるハースト。

 そして彼女の手をそっと取るや、甲にキスをする。


「へ、へ、へ、へぇ!?」


「今宵の出会いに祝福を込めて、さ」


「卿よ、あまりこの娘をからかうものではないよ」


「うん? ……ッ! なんってことだ! まさか男装をしていただなんて……。俺のレディを見る目もまだまだ未熟だな。失礼、お名前をうかがっても?」


「名乗るほどの者でもないよ。わたしのことを気にするよりも、卿の周りの女性たちを大事にしてあげたまえ。さっきから卿が目移りばかりしているからむくれているぞ」


「……アウチ、なんて慈悲深く、そして高潔なお方なんだ。いいでしょう。ここはアナタの言葉を尊重しよう。じゃあ、そろそろ別の場所へ行くよ。またねアンネリーゼ。どうしても俺に会いたくなったら寝る前に祈ってくれ。そうすれば、きっと夢の中で会えるからさ」


「は、はい……ありがとう、ございます」


 ハーストの不思議な色香にぽーっとしかけた直後、それを突き破るような低い声でヴァレリィがハーストに食ってかかる。


「よーよーよー、ずいぶん見せつけてくれちゃってんじゃあねぇの。俺との挨拶がまだだぜ? お互い自己紹介しようや……」


「ん? なんだいたのか。まぁよろしく頼むよ。このレディたちを困らせるんじゃあねぇぜ。じゃあな」


 ハーストの素っ気ない態度にヴァレリィはさらに怒り心頭の形相で。


「おいテメェ! なんだその態度はアァン!? 人に見せつけるみてぇに女どもに色目使いやがってコラァ! あと俺との挨拶簡略化し過ぎだ!」


「なにコイツ、ちょーうるさい」


「どーせハーストのモテモテっぷりに嫉妬しちゃったんでしょ?」


「嫉妬じゃねぇやい!」


「嫉妬に決まってるじゃない! ん? そういやコイツどこかで……、あー! こないだナンパしてきたイナカモンじゃない!」


「え、もしかしてギルドでナンパしてきた男ってコイツ? うわ~、マジ引くわ~」


「やれやれ……出会って早々に無様を晒しちまうとはな」


「うるせぇー! ちょっとモテるからって偉そうにしてんじゃあねぇぜオラァ!」


「別にしてないが? そっちが勝手にくってかかってきたんだろ?」


 ごもっともである。

 呆れ果てたアンネリーゼはヴァレリィを撫だめようと背中をさすりながら彼を止めた。


「も、もういいじゃない。せっかくのお祭りなんだし、ね? パーッとやりましょパーッと」


「うるせー! コイツはいっぺん俺がブッ飛ばしてやらねぇとダメなんだよぉ!」


 酒の酔いとハーストへの嫉妬で喧嘩っ早さに拍車がかかっている。

 そんなときだ、ハーストの目付きが一気に変わった。


「……おい、俺が今言ったこともう忘れたのか唐変木(とうへんぼく)


「なにぃ!」


「いいか、お前が俺のことをどう思おうと知ったことじゃあねぇ。嫌おうがどう思おうが好きにしろ。だがな、そんな理由でアンネリーゼやそこの麗人を困らせるってんなら、俺だって黙っちゃいねぇ」


「ほっほ~面白れぇ。黙ってねぇんならどうするんだ?」


「乗ってやるよ。テメェの喧嘩にな!!」


「ちょ、ふたりとも!?」


 アンネリーゼが止めようとするが、取り巻きたちはハーストを熱烈に応援し、クライメシアに至っては「喧嘩もまた祭りの華」と言ってそれを肴に酒を飲む気だ。


 見物人が増え、円形の人だかりができる。

 その開いた空間で、ハーストとヴァレリィが拳を構えた。


「この俺ちゃんと喧嘩をしようってのが運のつきだぜ。俺ぁ今の今まで喧嘩で負けたことがねぇ!」


「ほーう、それで?」


「そして、悪いがテメェは一発でブッ飛ばす!」


 そう言って魔力を込めると自慢の龍法(ドラグラ)を発現させた。

 彼は本気でハーストを吹っ飛ばすつもりらしい。


 これにはアンネリーゼも止めようとするも、余裕の表情でハーストに精されたためそこで見ているしかなかった。


「大丈夫だ。君の友達を悪く言ってしまうようで申し訳ないが、彼の攻撃は俺には通じないよ」


「ほっほ~う。言ってくれんじゃあねぇか。面白れぇ!!」


「手加減してやるから、さっさと来な」


「ちょ、ちょっとせっかくのお祭りなのに……クライメシア~!」


「まぁ見ていたまえ。そうだな……あのハーストという男の動きから学んでみるというのは?」


「え、こんなときに!?」


 振り向いた直後、ヴァレリィとハーストの喧嘩のゴングが鳴った。

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