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新たな仲間と祝福を

 クライメシアの突然の提案に、アンネリーゼは彼女を少し離れた場所まで連れ出してコソコソと話し合うことに。


「ちょっと待って今のどういうこと!?」


「そのままの意味だが?」


「そういうことじゃなくって! いきなりギルドパーティーを作るなんて……」


「じゃあずっとソロでやるつもりなのか? それではいつか限界が来るだろう。わたしに頼りきりはいかんぞ? わたしでは卿の望みは叶えられない」


「う、それは……」


「まぁ聞くといい友よ。多くの人間から知識や技術を学ぶことも、強くなる上では大事なことだ。相手はなにを信条とし、なにを積み上げてきたか。他者を知り、己を知る。知識や技術を通して自分と向き合うのだ」


「そ、そんなもっともらしいこと言われてもなぁ。私は今アナタに教えて貰ってるし……」


「あぁそうともさ。だがわたしの教えることをすべて覚えることだけが、わたしに報いる術ではない。わたしのみを信じるな。それではきっといつか卿を悲しませてしまう」


「わ、わかったようなわからないような……まぁ、いいけど」


「ホラ、行ってきなさい。彼がウンウン唸りながら座り込んで待っている。……そろそろ日の光が霧と林の中から出てくる。影の中で見守っているよ」


 そういうとサッと影の中へ入り込んでしまい、実質アンネリーゼとヴァレリィのふたりきりに。

 ふたりの間に朝日が金色の道を敷く。


 緩やかな風の中、距離を縮めてアンネリーゼは勇気を出して提案した。


「あ、あのッ! その、いきなり来てすっごいテンパッてるかとは思うんですけど……その、私とパーティー組みませんか!」


 自分からこんな誘いをしたのは初めてだ。

 ましてや相手が異性ともなれば緊張は数倍にも跳ね上がる。


 しばらくの沈黙にアンネリーゼは諦めかけたが、ヴァレリィがすっと立ち上がり。


「新しいギルドパーティーの設立、かぁ。ありだな!」


「あ、じゃあ……」


「でっかい組織で変にこき使われるより、小さくても前へ出て活躍するほうが俺には性に合ってる。よっしゃ、大船に乗った気でいろや!」


「よ、よろしくお願いします!」


 アンネリーゼにとって、飛躍的な一歩だった。

 ほんの少しだけ『深淵への階段(アトランティス)』に近ついた気がする。


(さて、アンネリーゼはこの男からなにを学ぶか。そして、しっかりと拝見させてもらおう。この男の実力を……)


 名前を名乗るのはそれからでいいだろう。 

 影の中でクライメシアは温かくふたりを見守っていた。


 そしてふたりしてギルドへと足を運ぶ。

 シャチハタが出迎えてくれたわけだが……。


「そうか……アンネリーゼちゃんもとうとうエエ人みつけたわけやな、グスン」


「あ、そういうのはいいですから」


淡泊たんぱくやなッ!? まぁええわ。んで、新しくギルドパーティーを作るってマジか」


「えぇ、今後やっていくのにさすがにひとりだけだとキツいし、それに……ちょっとでも自分を変えなくちゃ」


「……偉いな、アンネリーゼちゃん。せやけど……」


 シャチハタの黒塗りのメガネの奥の視線が、アンネリーゼのうしろのほうへと向く。


「よぉネーチャン! 今から任務? 終わったらよぉ、俺とティータイムしねぇか? オイ待て逃げるなってオイオイ待て待てなに笑ってんだよぉオイ!」


 朝っぱらからナンパをしていた。


「……将来有望な構成員やな」


「色々すみません」


「あんまり気ぃ落とすな。おい兄ちゃん! クエストとかの説明したるからはよこんかいワレ!」


 相手にされなくてむすっとしているヴァレリィを隣に、アンネリーゼは新しいギルドパーティーの申請をさっさとやってしまう。

 そのあとクエストを受注しようとしたのだが……。


「おい待て。このEとかDとかは難易度のランクってのはわかる。だがど~も引っ掛かるんだ」


「なにがや」


「ホラ、このギルドの1番端っこの受付。そこへ行く人間全員、どっか陰気臭くてよぉ。さっきから気になってたんだ。仕事を選んでるって風にも見えねぇ」


「……割と目ざといな兄ちゃん。今は知らんでええ。希望があるうちはな」


「なんだよ気になるじゃねぇか」


「ヴァレリィさん。今はクエストを受けて、クリアすることに集中しましょう。あそこは今は気にしなくてもいいと思います」


「へーへー、わかりましたよーだ。じゃあパッパッと終わらせっかい!」


「……ほな、リストから選んでくれ。昨日アンネリーゼちゃん頑張ったからな。Dランクはいくつか受けられるようになったで。目指せCランク!」


「はい、じゃあこれでよろしくお願いします!」


(大丈夫そうだな……)


 ヴァレリィの実力を信じて、またDランクのクエストを受ける。

 心なしか胸が弾むような気分だった。


 困難に打ちひしがれていた自分と決別するためには、強くならなければならない。

 それがクレイメシアや仲間になってくれたヴァレリィとならできそうな気がしてきたのだ。

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