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男の名はヴァレリィ

「クソ~、どこもかしこも"間に合ってる~"とか、"今は募集してませぇん"なんてふざけたこと言いやがってよぉぉ~。……間違いねぇ、ありゃ俺を田舎モンだと見くびってた目だ。くぅぅ、ぶん殴ってやりてぇぇえ。……とにかくまずは宿で休んで明日からまた探すか、いっそのことソロか……クソ~」


 この男の名はヴァレリィ。

 190近い身長の偉丈夫の若者だ。


 はるばるやってきたはいいが、ついたのは夕方で、その時間帯からギルドパーティーに入れてもらおうと躍起になってきたがすべて上手くいかなかった。


 仕方なく宿へ戻ろうとした矢先、ふと林の奥に妙な屋敷が見えるのに気付く。

 怪訝そうに見ながらも今は身体を休めようと宿へ足を進めた。


(あ~んな辺鄙へんぴなところにボロ屋敷だぁ? バケモンでも出そうな雰囲気だぜ)


 だが妙に気になる。

 ここまで栄えた都市であんなものがあると、ヴァレリィの冒険心がうずいてしょうがない。


「へっへ~ん、面白そうだなぁ。よし、ちょっくら宿で聞いてみるか」


 一画にある小さな宿に戻ると早速宿の主に聞いてみた。

 

「あそこにゃね、女の子がひとり住んでんだよ。アンネリーゼって言ったかなぁ。確かかなりランクの高いギルドパーティーのメンバーだったはずさ」


「ほーほー! そうかギルドパーティーのメンバーか。なるほどねぇ。で、強ぇのか?」


「そこまでは知らないよ。会いに行きたいんなら勝手にすりゃあいい」


「あんがとよ! ……ふぅん、高ランクのギルドパーティー所属ってぇことは相当な女だぜ。もしかしたらメッチャ美人かも。いよっし! ちょっくら会いに行ってみるか! これもご縁ってな」


 スキップ交じりに自分の宿泊室へと足を進める。

 持って来たチーズやパンを頬張りながら明日に希望を寄せた。


 月の光がいやに明るい時刻になると、ヴァレリィはそのまま深い眠りへとつく。

 朝になればすぐに飛び起き、チェックアウトをさっさと済ませて小さな屋敷のほうへと行ってみた。

 

 まだ霧がかかる中で、しんとした林の中にそれは佇んでいる。

 世間から隔離されたような雰囲気の中で、色あせて今にも倒れそうなアーチ状の門がヴァレリィを出迎えた。


 広々とした敷地の中心にポツンと構えられる小さな屋敷は、とてもではないが少女がひとりで住む場所には思えない。

 

「早く着すぎたかな……。ん、裏の方で声が……」


 ヴァレリィが裏に回ってみると、今まさにアンネリーゼがクライメシアから指導を受けている最中だった。

 黒いタンクトップを身にまとい、大量の汗に濡れながらも腕を磨き上げている。


「うむ、中々の踏み込みだ。その重い武器を背負って戦っているだけはある。が、問題も多くあるな」


「ほ、ホント? ぜぇ、ぜぇ、でも結構きついね」


「卿は接近戦が得意というわけではない。力のすべてをその回転機構に頼りきりな面もある。それではいざというときに……────誰か?」


「え?」


「い゛!?」


 クライメシアの穏やかに狙いを定めたような口調に思わず声が出たヴァレリィ。

 陰でコソコソ見ていたのがバレてバツが悪そうにしているを、アンネリーゼがポカンと見ている。


「あ、あ、あの……どちらさまですか? ここ、私の家なんですけど?」


「あ~、いや別に俺は怪しいもんじゃあねぇ! 俺は昨日ここへやって来たばかりでよぉ。ちょっと用があってきたんだ」


 ヴァレリィがとりつくろうように笑いながら出てくるも、こんな場所に尋ねてくる人間などそうそういるわけでもない。

 ましてやそれが昨日ここへ来たばかりの人間であれば……。


「ヘイ! なぁんだよその目はよぉ!」


「いや、だって見るからに怪しいし……」


「ハァ!? くぅ、人を見下しやがって都会の連中は……で、お前がアンネリーゼってのか?」


「……まぁ、はい」


「なるほど、俺はヴァレリィってんだ。そっちのオネーサンは?」


「失礼、気を悪くしないで欲しいのだが、今は名乗りたくない」


「ほ~ん、変な奴だな。で、単刀直入に言えばよ。俺をお前らの所属に入れてくれって話だ。高ランクのギルドパーティーの一員なんだろ?」


 ニカッと笑いながら、親指を立てる。

 しかし当然ながら、その問いに首を縦に振ることなどできはしない。


「すみません。私もうどこの所属でもないんです」


「は? な、なに?」


「前は勤めてまあしたけど、色々あって……」


「な、な、なぁにぃぃぃいいい~~~!?」


 ────ついてねぇ……。

 そう言いたげに顔を手で覆いながらしゃがみ込むヴァレリィ。


 しかも彼の不運はこれで終わらない。

 昨日のうちに回った以外のギルドパーティーでも、今のところ人材を受け付けているところはかなり限られており、そのほとんどが前線への人員ではなく、雑用を望んでいる。


 前線への人員もあるにはあるが、かなりハードルが高い。

 ベテランの即戦力を求めているのが大半だ。


「マジかよおいぃぃい……。都会へ出りゃ活躍できるって聞いたのによぉお」


「えっと、ヴァレリィ、さんの経歴は?」


「でっかい猪みてぇな魔物を一回ブッ飛ばしたくらいか? それ以外だとチマチマした魔物の討伐、っていうか駆除作業だな」


(なるほど、皆の田舎の人を入れる気はないってスタンスはそれか……でもこの人)


 ────()()()()()

 アンネリーゼには、妙な確信があった。


 対峙しただけでわかる。

 クライメシアとはまた別の威圧感が、筋骨隆々の肉体の裏から感じ取れた。


(でも、どうしよう……帰れっていうのもなんだかなぁ)


「ふむ……」


 アンネリーゼが悩んでいると、クライメシアは思いついたように口元を緩ませながら提案した。


「ヴァレリィ。卿の所属する場所はまだあるぞ」


「なんだって?」


「"ここ"だ」


「へぁ!?」


「あん? どういうことだ」


「わからないか? 居場所がないのなら、作ってしまえばいい。即ち、────新しいギルドパーティーという奴だ」 

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