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踏み出す一歩

「わ、私、一人でギルド行くの心細くって•••」



オラカイト王国に来て数分も経たずにできたフレンドのアキナは俺に目線を合わせずもじもじと指を遊ばせながら俺に言った


俺たちのようにゲームを始めたてのプレイヤーはギルドで簡単な契約を結んで加護というものを貰い、初心者用の依頼を成功させないとギルド員として活動できないのだ


彼女には悪いが確かにこんなオドオドとした子が一人で依頼なんかこなせるわけがない

そうだよな、見ず知らずの十七歳の女の子が二十半ばの冴えない青年に『フレンドになってくれ』なんて

こういうことでもなければありえないわな


とはいえ、ただの同伴相手と内心は分かっていても

俺も俺で勉強漬けの日々を送り仕事についた後も仕事以外のことは何もしなかった人間だ。

女の子と肩を並べて歩いているだけで心臓がバクバク言っている。ああ、変なこと言ってデリカシーのないやつとか思われるのやだしなぁ



「じゃ、じゃあ。君も始めたばかりなんだ、ギルドバウトオンライン」


スタート地点から三つ目の通りを歩いてやっと出てきた言葉がこれである

赤毛の子はこくん、と頷く。もっと彼女に答えやすい会話をすべきなのだろうな、ごめんよ



「こ、このゲーム、知り合い以外だと友達に入れてもらえないって、聞いたから・・・その、本当の初心者っぽい人がくるまで待ってたんです」


と、か細い声で話す。だいたいは外部とのつながりから作ったフレンドを誘うのが普通なのか


え?MMOってそんなに友達探すのに苦労するものなのか?

てっきり百人くらい友達ができるもんじゃないのか?そういうふうにオオニタは言ってたんだけど。あぁ、突然不安になったきた


それから俺たちは俯いたまま一言も喋らずギルドへと向かった




『いらっしゃいませ。ようこそギルド《アークライト》へ』


《アークライト》のアジトは建物の大きさの割に中はかなり広く感じた。

ゲームの主軸となっている場所だけあってここはかなり人で賑わっている。


今回俺たちの担当をしてくれるギルドの受付嬢イレイナさんをはじめとした従業員たちはみなNPCだ。人間らしい会話からその容姿までAI制御のデジタルな人形とは思えない


眼鏡をかけた優しそうな女性に安心したのか俺の後ろに隠れてたアキナは警戒をやめてくれたようだ


俺たちは言われるままに簡単に書類に名前と項目にチェックを入れて登録を済ませる。まぁ書類の文字はサッパリだったけど


(この世界独自の文字って世界設定凝っているんだな。いつかこの世界の言語覚えてみるかな)


それから俺たちは神の加護をもらう儀式を行う。


冒険者としてギルドに登録したものは神に契約を行い、神への忠誠の代わりに加護をもらうことができる

『生命力が尽きたときに生命力一割くらいの状態で復活する』とか『強敵に対して特大のダメージを与えられる』など依頼の中で様々な恩恵を得られるのだ

しかしデメリットとして使いすぎたり運が悪いと自身が魔物になるというデメリットも併せ持っている。言わば切り札的なヤツだ


幼少期に神社でやったようなお祓いみたいなものを行い、一通り済ませた俺たちはまたイレイナさんのところへ向かった





『ペットの捜索?』


初依頼が意外と普通なもので俺とアキナは同じ返しをしてしまった


「はい、貴族街の方で飼われているペットが 屋敷から逃げ込んでしまったようで大事になる前にそれを保護してもらいます」


なるほど、ペット捜索か、俺たちにちょうどいい依頼だな。


「ペットの名前はポチ、詳しい情報や依頼の内容はウィンドウに書かれてありますので各自ご覧ください」


ポチとは随分可愛い名前だな、貴族が飼っているってことはかなり高価な犬なんだろうな


「それと依頼には一人先輩プレイヤーが同伴してくれます。貴族街の方に派遣していますので現地で合流してください」


先輩『プレイヤー』?


イレイナのように人間のような受け答えができるようにできるのならモブや非戦闘員、進行役はNPCの仕事になったと聞くがなぜプレイヤーなのだろうか


「イレイナさん?」

「詳しい情報や依頼の内容はウィンドウに書かれてありますので各自ご覧ください」


俺の質問は軽く流されてしまった。



「では最後に飼い主からの忠告をひとつ。ポチはかなり噛み癖があるそうなので気をつけてくださいね」


依頼を受けた俺たちは門を通り貴族街の方に向かった




「君たちが新入りか、オレはダイン。よろしく頼むよ」


俺たちに挨拶をしてきたのは先輩冒険者のダインだ。冒険者らしい体つきはしていたが貴族の格好をしている彼はさっそく俺たちにダメ出しをしてきた


「あぁ、ダメダメ!ここでは【変装】を使わなきゃ。ちゃんと所得してあるんだよね?」


武器は収納してはいたが正装した街の住民と比べると俺たちは浮いているように見えた。


「は、はい。いちおう所得してあるので。ウィンドウから使うんですよね?」

「心の中で唱えても可能だぞ」


するとどうだアキナの服装が貴族のようなものに変わった

控えめな感じもあって本当のお嬢様みたいだ

ダイン先輩もニヤニヤしていたが、本題を思い出したかのように俺に変身するよう命じた



「いや自分、【変装】所得していないんですが」


ダインさんは俺を見て不甲斐なさそうに顔に手を当てる


「かぁー!そこからかぁー!・・・まぁいい、俺らから離れて歩いていれば大丈夫だろう」


人見知りしてるアキナが【変装】が使えて良かったと思う。そのスキルを持っていない俺がこんなにも奇異の目で見られているのだから


「しかし、こんなバカでかい街の中でどうやって探すんですか?」

「自分で考えろ」


即答、ちょっと冷たすぎやしないっすかね

やはりここは街の人に地道に聴き込むのがいいかもしれないな


俺は行き行く人に聞き込みをしたのだが

不審者と思われ憲兵に追っかけられてしまった


そのあとダイン先輩が憲兵に五千ゴールド手渡してくれたことで事なきをえた。ってか、それでいいのか憲兵


そんなこんなしているといつの間にか別行動を取っていたアキナが手がかりを見つけたようだ


「【痕跡調査】してどこいったのかわかりました!皆さんこっちです!」

「こんな所に入ってったのかよ!」


イレイナさんからいつのまにかもらってたポチについていたスカーフとアキナのスキルで見つけた痕跡をたどり

俺たちは【変装】を解いて下水道に通ずる穴に入った。頼む、ポチ、死んでるなよ!


下水道の中俺は【ファイアアロー】で燭台に火を灯そうとしたがつける前に火の玉が天井に飛んでいってうまくつかない。アキナが炎をエンチャントしてくれたので助かったが、次レベル上がった時には非戦闘用のスキルも厳選して取得しよう


ここまでいい所なし、ここは俺がポチを捕まえて汚名を晴らしたいところだ


下水道の奥の奥の方まで進んでいく

しかし、鼻の利く動物だろうになんでこんなところを通るんだ?

そもそもポチってどんな犬種なんだ?


歩きスマホみたいでかなり気が引けるが俺はウィンドウを出して依頼を確認しようとした時


「おい、ポチがいたぞ!!」


ダイン先輩だ

向こうの部屋にいると俺たちを誘導する


ーそういえば、ポチの名前の由来を学校の歴史の授業の時聞いたことがある

諸説あるようだが、

日本に来たフランスの宣教師がたまたま小さな犬を見た時に小さいプチ(petit)と言ったのを名前と勘違いした日本人がそのまま名前にしたなんて話だ


小さい犬がポチの由来というなら

ならば向こうの奥まった部屋にいるアレはなんだ?



「これのどこが『ポチ』だ!嵌めやがったな、イレイナぁー!」


目の前にいたのは鋼のような鱗に覆われたクロコダイルのような動物であった


せぱたくろーです。わりと今回はサクサクと書けました。ようやく次回初戦闘となります。果たして無事に勝てるのか?乞うご期待


更新は4月10日(土)になります!お楽しみに

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[良い点] 企画:良いところを三点述べるより 【良いところ三点】 1*あらすじを読んだだけでも、かなり面白そう。 特に惹かれるのは、記憶喪失の謎のNPC、謎の部分。ハラハラドキドキの展開が想像できる…
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